民医連新聞

2008年2月4日

相談室日誌 連載255 生活保護申請を妨害する福祉事務所 柿坂 亜紀

Aさん(六〇代・男性)は、三年前に大腸ガンの手術を受けました。その後は国保に加入できず、受診を控えていたそうです。体調が悪化し、食事もとれなくなって、当院を受診しました。ガンが肝臓に転移していて、即入院が必要でした。
 Aさんは、Bさん(六〇代・女性)と二人暮らしでした。しかし、年金が月六万円しかなく、体調が悪化するまで日雇い仕事で生計を立てていました。入院費 の支払いは困難、このままではBさんも生活できないため、BさんはAさんの入院当日(一月二九日)、福祉事務所に生活保護の申請に行きました。
 Bさんは「保護を受けたい」と必死に訴えましたが申請書がもらえず、翌三〇日に再度申請に行くと、申請書が渡されました。二月二日に申請書一式を提出しました。
 一カ月後、生活保護の受給が決定しましたが、それは二月二日付け開始でした。納得がいかず、一月二九日付け開始を求める審査請求を行いました。すると福 祉事務所は「一月三〇日付け開始に変更する」と言って来ました。それもおかしな話です。私たちは、あくまで二九日付け開始を求めました。
 福祉事務所の弁明書は「二九日は相談があったに過ぎず、三〇日に申請の意思表示があったため」というものでした。私たちは「二九日に申請の意思表示をし ている。それなのに申請意思をはねのけ、あくまで『相談』にとどめ、追い返したという今回の福祉事務所の対応は、意図的に保護申請を一日でも遅らせようと した明らかな申請妨害である」と反論書を提出しました。
 一〇月にやっと下りた県の裁決は、「福祉事務所は実質的に申請行為を遅延させる助言を行っており、その対応は不適切である。適切な対応があれば、その日 に申請の意思表示を行ったものと判断される。不適切な対応のもとに行われた本件処分は不当である」というものでした。
 私たちの主張が認められ(当然のことなのですが)、一月二九日付け開始となりましたが、Aさんは裁決を待たずして六月に亡くなりました。福祉事務所の不 当な対応は、日常茶飯事です。それを許さず、改善を求め、生存権を守るたたかいが重要です。

(民医連新聞 第1421号 2008年2月4日)

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