民医連新聞

2008年2月4日

記者の駆け歩きレポート(19) 群馬保健企画・あおば薬局前橋店 福祉用具 安価で販売し   「貸しはがしゼロ」に

 介護保険法が改悪され、二〇〇六年一〇月から要介護1以下の高齢者が福祉用具を使えなくされました。自費で購入・レンタルするか 「貸しはがし」を迫られました。そんな中、職員が知恵を絞り、福祉用具を安価で提供し、「貸しはがしゼロ」にした事業所、群馬・前橋協立病院に隣接するあ おば薬局前橋店を訪ねました。(横山 健記者)

 同店が、改悪で影響を受ける利用者さんを調査したところ、約四〇%にあたる九〇人以上もいることが分かりました。

「古物商」で活路を開く

 施行が迫った〇六年三月、ケアマネジャーの町田茂さんはじめ、職員たちは「貸しはがし」はしたくない、と検討を始めました。
 町田さんは言います。「職員は月三~四回、地域に出て利用者さんの厳しい生活を見ています。生活保護に陥る世帯も増えています。『貸しはがし』できないことは共通認識でした」 。
 あれこれ議論した結果、「古物商」免許を取得することに。いつでも解約ができ、必要な期間だけ支払いをする形式の中古品の割賦販売を始めました。レンタ ルとは違い、月づきの負担を安く設定できました。また交渉を重ね、介護ベッドなども安く入手しました。
 共同組織にもお願いしたところ、不要になった介護ベッドなどが何台も集まりました。支払いは「国民年金で一人暮らしの人が支払える低額」に設定しました。

当たり前の権利

 〇六年一〇月、福祉用具の利用制限が始まりました。女性二人が半日で三台のベッドを解体、組み立てたことも。職員が総出で利用者さんのお宅に行き、法令にしたがいレンタル品から割賦販売の中古品に入れ替えました。
 これが地域や利用者さんから喜ばれたかというと?
 福祉用具専門相談員の岩丸益子さんは「そうでもありません。利用者さんからすれば、体の状態も介護保険料も変わらないのに何で入れ替えるの? という感 じでした」。町田さんは「当たり前の権利が守られた。それだけのことだったのでしょう」と言います。

地域の信頼に応えたい

 また同店では、職員が地域訪問に積極的に出ています。寒さをしのぐため、布団の下にダンボール を敷いている人、介護ベッドがなく、ビールケースで高さをつけている人もいました。岩丸さんは、「高齢者はガマン強い人も多く、訪問しなければ分からない ことが多い」と実感しました。
 訪問に出る前に独自につくっている調査表に目を通し、利用者さんの状態や情報を確認します。町田さんは「ただ訪ねると、『ベッドは壊れていませんか?』 ぐらいですが、利用者さんの状態や生活との関係をつかんでいれば、会話につながります。そこで悩みなども聞き、外来やデイサービスと情報を共有し、よりよ いサービスを考えています」と語りました。
 地域からの信頼が収益増につながり、経営も安定してきています。
 町田さんは「私たちが一生懸命生きていなければ、人の痛みや苦しみは伝わってきません。でもそれは、自分のためでもあるのです。だって、一度しかない人 生。何かを一生懸命やっているほうが『生きている』実感があるじゃないですか」と、思いを寄せました。
 岩丸さんは「利用者さんと話すことが好き。職員みんなの視点が患者さんに向いている。そんな民医連に入ってよかったです」と笑顔でした。

(民医連新聞 第1421号 2008年2月4日)

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