民医連新聞

2008年2月18日

第8回学術・運動交流集会の発表から 苦情を傾聴と対話で解決 医療コンフリクト・マネジメント試行 総合病院岡山協立病院・和田博知

 医療上の事故やトラブルを前向きに解決する手法として、医療コンフリクト・マネジメントが注目されています。総合病院岡山協立病院では、二年間試行した結果、役立つことを検証しました。

 私たちは、患者様と病院の間で問題が発生した際、「病院側に非があるか、ないか」という判断をします。でも、その判断結果だけで、患者様と対応していないでしょうか?
 当たり前のことですが、私たちが治療を行っているのは患者様です。それは失意や苦悩、怒りや悲しみという複雑な感情を持った生身の人間です。ですから、 病院側に非があるにせよ、ないにせよ、患者様に真摯に向き合い、信頼関係を確立し、問題と個人を切り離し、いっしょに問題を解決していく過程が大切です。 本院ではこのように考え、二〇〇六年から、医療コンフリクト・マネジメントを試行してきました。
 医療コンフリクト・マネジメントを行う上で、患者様と病院の中立的立場で対話を促進させるのがメディエーターです。
 本院では専任リスクマネージャーと事務次長が担当しています。この二人を、日本医療機能評価機構などが行っている研修やトレーニングに派遣して養成しました。
 本院の最終的な苦情対応を整理したものです。ただし、苦情は複雑に絡み合っている場合が多く、患者様の話を傾聴してはじめて、訴えの背後にあるニーズが 分かる場合も少なくありません。そのため、傾聴する技術など、最初に対応する職員のスキルアップも重要です。

「決別」事例がゼロに

 医療コンフリクト・マネジメント試行以前と、以後の二〇〇五・二〇〇六年の対応状況について、三回以上の面談を要した事例をまとめたのがです。従来から、患者様の権利を守る立場で苦情対応をしてきたので、顕著な差はみられません。
 ただ、二〇〇五年の「不明」の項目は、話し合いが決別した事例です。これが二〇〇六年にはゼロになりました。これはコンフリクト・マネジメントを導入し、最後まで意を尽くして話し合った結果だと思います。

誠意もって聞く

 事例を紹介します。骨折の患者様の例です。症状があって何回か当院を受診されましたが、骨折が 発見できませんでした。その後、他院を受診したところ、骨折が分かり、他院へ入院予約しました。このため、当院での治療に激しく苦情を表明され、治療費の 返金や治療が遅れたことへの補償などを要求されました。
 当院では、患者様の訴えを十分傾聴し、素早く上席の医師との面談をセットし対話することで、結果的には他院への入院をキャンセルされ、当院で入院治療す ることになりました。退院時には「入院中の看護」に感謝されました。

是正処置が早く

 この間のとりくみでは、(1)紛争が発展する事例はなかった、(2)病院全体の苦情対応のルールを明確にし、スムーズな対応ができるようになった、(3)率直に患者様と再発防止策などを話し合うことで、是正処置が早く取れるようになった、という成果がありました。
 今後は、メディエーターのスキルアップとともに、職責者にコンフリクト・マネジメントの教育を行い、病院全体の紛争処理の基本的スタイルにしていきたいと考えています。

(民医連新聞 第1422号 2008年2月18日)

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