民医連新聞

2008年3月24日

2日目 分散会発言824本で方針豊かに

 総会の二日目は、一三会場で分散会を行い、のべ八二四人が発言しました。第三、第七、第一二分散会の概要が全体会で報告されました。

民医連の出番 第3分散会報告

 代議員四七人、理事・来賓・顧問合わせ六二人が参加、六一人が発言。国民生活の困難とたたかいがリアルに報告されました。
 静岡の保険薬局から中断患者の孤独死が生なましく報告されました。薬剤師らは診療所と連携し、中断患者アンケートや生活保護申請の援助、ジェネリック活 用などにとりくんでいます。国保の集団減免で成果をあげた大阪の経験が出されました。
 平和問題で発言が出ました。神奈川の三浦診療所から横須賀の原子力空母母港化の是非を問う住民投票条例を求める署名運動が紹介されました。福岡では、住 民と「九条の会」をつくり、宣伝や戦跡巡り、コンサートなど多彩な企画を続けています。
 ドクターウエーブ・ナースウエーブでは、埼玉・秩父市で自治体の後援を受け二六〇人でシンポジウムを成功させた経験が出されたほか、長野、千葉、京都な ど各地から報告されました。地協・全県・地域レベルできめ細かくとりくまれています。
 看護分野では、奈良から看護協会と協力し「看護労働実態調査アンケート」の配布・収集をすすめ、署名を推進、看護師の職場復帰支援事業などに自治体の予算化を求めて動き出したとの報告がありました。
 室料差額問題について八人が発言しました。「民医連の理念に関わり、当該法人・県連だけの問題ではなく全国の問題であり、対外的、社会的影響も極めて大 きい」などの発言がありました。当該県連から「医学対にも影響がある」との発言もありました。
 人材育成 後継者養成では、医師退職の教訓からコミュニケーション改善に向け毎日全医師参加のカンファレンスを行っている(大分)、青年育成委員会を設けJB運動などを強めた(東京)などが報告されました。
 経営問題について、北海道、川崎の再建や、各地の実態が報告されました。東京では中小病院が軒並み大きな赤字を抱え、キャッシュフロー実績からも深刻と の報告がありました。一方、岡山・水島歯科では、患者の要望の強い診療時間帯を延長し、技工士との連携を密にして患者増を実現したとの報告でした。
 北海道から「資金結集では、友の会員が苦しい生活の中で応じてくれ、民医連が果たしてきた役割に確信を持った」と再建の決意が語られました。
 ほか、各地の豊かで人権感覚にあふれた実践が報告されました。難病患者の結婚式(香川)、患者を生活と労働の場から総合的包括的に見る事例検討会(京都)などです。
 綱領草案については七人の代議員が発言し、共同組織からも強い期待がのべられました。
(東京・星野陽子代議員)

差別ない医療 第7分散会報告

 三八人の参加者から、六四の発言がありました。代表的な発言を紹介します。
 各地の医療崩壊の状況が怒りをこめて報告されました。救急医療は、都市部かどうかを問わず深刻です。
 福岡・北九州では、救急病院の医師不足で救急搬送対応が困難になり、市長のもとにつくられた協議会で「救急患者を抑えるために夜間救急患者から特別料金 を徴収しては」と、一回五〇〇〇~八〇〇〇円が検討されています。救急搬送を拒否される事例には、高齢者、透析患者、独居、アルコール、精神疾患が多いと いう報告でした。まさに最も困難な人びとです。
 自治体病院の経営困難と、県による強引な統廃合も深刻な問題です。北海道の自治体病院縮小計画反対のとりくみが報告されました。とくに上川町、阿寒町で は病院が診療所になると、主要産業の温泉業が団体客を受け入れできなくなる、など深刻な問題です。
 後期高齢者医療制度について、徳島から、広域連合が住民の声を聞かず、皮膚科や眼科も含め二〇〇七年度に医療機関を受診した人を住民健診の対象から除外 し、対象を住民のわずか三%に抑えようとしている、との報告がありました。
 方針の討論では、無料・低額診療をすすめようとの意見が出ました。制度減免が前年の住民税が非課税の人に限られるのに対し、無料・低額診療では法人の判 断でいま困っている人に適用できる点で優れているという指摘でした。
 宮崎の発言は中小病院のポジショニングについてでした。病床稼働率を高めようと二五軒の開業医を訪問し、病院に対する印象や希望を聞くと「いつも満床」 「組合員しか受診できない」という誤解や、「土日の搬送先に困っている」ことがわかりました。空床状態をメールで送るようにし、入院患者の紹介を受け、紹 介率が二五%から三〇%に。院内で「地域からの紹介を断らない」と確認したという報告でした。
 差額室料問題で当該法人から「総代会で決まったことなので尊重してほしい」との意見があり、代議員五人が意見をのべました。
 徳島では、地域の有力な医師が「健康生協の病院は、建物はぼろだが二つの輝きがある。一つは、看護師や医師の考え方がしっかりしている。金のあるなしや 看護者の有無で救急受け入れを差別しない点。もう一つは、室料差額をとらないこと」と言い、見習って差額室料を止めたという発言でした。東京の代議員は、 東大病院が二〇万円の個室料を取ることが「公的な病院なのに」と問題になっていると発言しました。
 看護師新人確保と定着について各地から報告がありました。長野では、産休・育休者の離職防止のため「ママナースの会」を立ち上げ、昼食をとりながら医療情報を交換し、子育ての悩みを話し合っています。
 医師研修では、愛媛から、組合員が「研修医を育てよう」と担当支部を決めて研修医にかかわり、「愛媛の母」と慕われていると発言がありました。
 薬局、歯科、老健の経営改善が報告されました。長野の老健はびろの里では、全職員で予算を論議し、業務改善を自ら考え、自分の弁当ガラを持ち帰るなど支出削減に努力しています。
 運動方針案に対する補強では、地域包括センターやボランティアの記述を、介護職ウエーブなどの提起を、無差別平等の医療のイメージが湧く行動提起を、などの要望が出ました。
(石川・柳沢深志代議員)

カギは地域に 第12分散会報告

 参加代議員は四七人、のべ発言数は五六でした。特徴的な意見を報告します。
 福井の奥出春行代議員は「『灯油高騰による寒冷地在宅患者の生活影響調査』で、低所得者の室温・体温が低く、経済格差の実態が浮き彫りになった。マスコミも大きく取り上げた。いまこそ民医連の出番」と発言しました。
 神奈川の小田明美代議員(汐田総合病院)は、カムバックナース(看護師確保の課題)に地域の四病院(民医連外)ととりくんだ経験を報告しました。
 その後、市の病院協会などの協力を得て、看護師不足と病院経営アンケートを実施しました。その結果、看護師不足が経営を圧迫している実態がわかり、記者 会見しました。また行政も動き、〇八年度予算に子育て支援予算が盛り込まれました。「地域の財産として看護師を確保するという視点で、病院が競合するので はなく、補完し合う立場で連携をすすめる」と発言しました。
 神奈川の和田雅裕代議員が医療生協かながわの経営改善を報告しました。
 〇七年度は一六〇〇万円の黒字見込みです。コンサルタントを入れて支出削減を図り、医療機能評価を受診、給食・検査の外注化、10対1看護や人件費率の改善にとりくんでいます。
 そのほか京都、福島から「国保の改善」に向けたとりくみ、香川から介護認定調査の見直しを求める活動、沖縄から「新たな段階に入った基地問題」が報告されました。
 ドクターウエーブでは、各地から住民や医師会との連携を広げ、講演会やシンポジウムなどを開催した報告が出されました。「地域医療の崩壊を食い止める」立場で、新たなつながりが生まれています。
 診療所活動では「特性を活かし、地域訪問を精力的に行っている」との報告がありました。医師問題では、退職や過重労働の苦悩が出ました。「診療所でも医師労働の過重が問題に」との発言もありました。
 室料差額徴収については「山梨倒産の教訓は、目先のことだけを考え、大切なものが見えなくなったこと」「民医連医療でなくなる危険性がある」などの意見が出されました。
 発言の全体から「地域のために動けば、必ず共感の輪が広がる。職員育成のカギも地域にある」ことが示されたと思います。
(群馬・柴田聡代議員)

特別決議

二〇〇八年三月八日
全日本民医連第三八回定期総会

医療・社会保障を国民本位に変えるチャンスのとき 民医連の出番の情勢です

「まっすぐな人権意識」を持ち、「平和・いのち・人権」を守る運動を大きく広げましょう

 いまから三一年前、この横浜の住宅街に米軍機が墜落し、母親と幼い二人の兄弟が亡くなりました。二年前には横須賀で女性が、路上で米兵に暴行を加えられ亡くなりました。
 そして今、米兵による少女への暴行事件が起こり、イージス艦による漁船衝突事故が発生しました。イラク戦争開始から五年、なんの罪もないイラク市民が一 五万人以上も殺されました。もうこれ以上黙ってはいられません。私たち民医連は、米軍基地を容認し、米軍の再編強化をすすめる日米政府に満身の怒りを込め て抗議し、平和と憲法を守り生かす運動をいっそう強めることを宣言します。
 この二年間、私たちは、ナースウエーブ、ドクターウエーブや高齢者生活実態調査、国保困難事例調査、生活保護老齢加算廃止影響調査などを通じて、医療現 場や患者、利用者、地域住民の厳しい実態を社会に発信してきました。現場では、一つひとつの事例を大切に、「その人らしく」生きる権利を守るために奮闘し てきました。こうした民医連の活動が注目を集めています。
 小泉政権のもとで医療改悪関連法が強行採決された後も、粘り強く療養病床廃止反対、後期高齢者医療制度中止・撤回を求めて全国各地で運動を広げてきまし た。後期高齢者医療制度中止撤回署名は中央社保協で三五〇万、全日本民医連で一〇〇万筆を超え、さらに増え続けています。野党四党による廃止法案が国会に 提出されました。世界に例がない差別医療である後期高齢者医療制度の撤回を、国民的運動で必ず実現させましょう。
 中小病院つぶしや無理な集約化を迫る二〇〇八年度診療報酬改定では、地域医療を守ることはできません。再改定を要求します。介護の改善も待ったなしです。
 この二年間、私たちは、「団結して、たたかえば、政治も制度も変えられる」ということを実感してきました。これ以上、地域医療や介護の崩壊を許さず、世 界第二位の経済力を米軍や財界のために使うのではなく、平和と国民生活を豊かにするために使うことを主張します。日本国憲法の理念を生かして憲法九条と二 五条の真の実現をめざします。医療、社会保障の充実は、国民、医療・福祉関係者の共通の要求です。消費税増税ではなく、税金の取り方・使い方を国民本位に 変えて、医療、社会保障の拡充を強く要求します。
 医療・介護の再生にむけて全日本民医連の「再生プラン案」を持って大きく共同を広げ、国民と医療関係者の大同団結のために力を尽くしましょう。
 地域の住民と深く結びつき、人権を守るために日夜奮闘している民医連が、よりいっそう輝くために、医師、看護師はじめ、医系学生の確保と養成、「民医連 大好き」職員、幹部の育成、共同組織の拡大と強化、『いつでも元気』の普及が必要です。その力が民医連の事業と運動を前進させます。民医連綱領改定草案を 各地で大いに議論し、今後の新たな民医連運動の旗印をつくりあげましょう。
 「困難はたたかいと連帯・団結の力で」 、 「まっすぐな人権意識」を合い言葉に、全国の経験や教訓に学び合い、これから二年間、共同組織の仲間とともに、大いに奮闘しましょう。

参加者の感想

●辻井喬さんの講演で「患者さんが受け取りやすいような言葉で伝えなければならない」と学びました。
(千葉・石塚俊彦、事務)

●参加者の熱い思いが励みになりました。差額問題も冷静に語り合ったのが印象的でした。全国に仲間がいることを再確認でき、よかったです。
(岡山・李美淑、薬剤師)

●情勢が厳しい中、全国の仲間のがんばりに勇気づけられた。差額問題が出たことは残念。もう一度、職員や共同組織で話し合ってほしい。
(愛媛・和泉明宏、医師)

●初参加。医師たちの生きいきとした発言が印象的だった。学んだことを知らせ、事例を大切にして、人権のアンテナを高めたい。
(福岡佐賀・猿渡圭一郎、薬剤師)

●もう一度、方針を読み合わせ、二年間をどうがんばるかを深めたい。いろんな分野の活躍を知り、来てよかった。
(沖縄・西仲ゆかり、看護師)

(民医連新聞 第1424号 2008年3月24日)

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