民医連新聞

2008年4月7日

相談室日誌 連載258 生活保護申請にSWが同席する理由

Aさん(五〇代・男性)は、兄の会社で働いていました。しかし、その会社が倒産し、兄は自殺。Aさんは実家に戻りましたが、引きこもるようになりました。
 借金は多額で、実家が所有する土地や家屋を手放すことになりました。その当日、業者が来て物置を見たら、Aさんが倒れていました。父親は救急車を呼び、 Aさんは近くの大病院に救急搬送されました。衰弱し、歩行もできない状態のAさんを心配した父親は入院を懇願しましたが、二時間で帰され、途方に暮れたそ うです。
 その後、在宅介護支援センターの職員から相談があり、Aさんは当院に入院しました。入院と同時に、父親は生活保護の申請をしました。数日後、生活保護担 当者が来院し、Aさんと面接しました。申請の意思を確認すると、Aさんは「生活に困っていないから申請しない」と言いました。担当者は「申請の意志がない から受け付けられない」と言い、帰ろうとしました。
 面接時、Aさんは「昨日、家から車に乗ってきて、病院の駐車場に止めた。その車の中に何千万円も置いてある」と言いました。私はAさんを車イスに乗せ て、生活保護担当者と確認に行きました。しかし、車はありませんでした。私は担当者に「病気による妄想ですから、職権で生活保護の申請を検討してほしい」 と要請しました。
 私は二日間、妄想の世界にいるAさんの話を聞きました。三日目に父親に会って事実の有無を確認し、医師と相談して保護課に意見書を送付しました。
 その後、Aさんは当院から抜け出して保護されました。それを契機に精神病院を受診し、医療保護入院となりました。病名は低栄養によるウエルニッケ脳症と診断され、生活保護は当院入院日から開始になりました。
 生活保護法第二五条は、職権による生活保護開始を規定しています。今回のように生活保護担当者もソーシャルワーカーもAさんとは初対面でしたが、Aさん の状態を病気からくる錯乱した状態と捉えたかどうかが、大きなポイントでした。ソーシャルワーカーが申請時に同席したことが、生活保護決定に役立ったと思 います。

(民医連新聞 第1425号 2008年4月7日)

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