民医連新聞

2008年4月21日

後期高齢者医療制度 “差別・天引き、みんな怒ってる” 学習を力に署名がんばる 奈良・土庫(どんご)病院

 高齢者を七五歳で線引きし、医療に格差をつける「後期高齢者医療制度」が四月一日、実施されました。開始時点で保険証が届かない 人もおり、問題だらけの制度です。奈良・土庫病院で高齢者の怒りを聞きました。同院の職員は『明日をひらく社会保障』の全員学習を力に「中止させるまであ きらめない」と、友の会といっしょに駅頭宣伝や相談活動を続けています。(板東由起記者)

長生きを罰する制度

 「早よ死ねっちゅうことやな。自公政権をぶっ飛ばしたい気分や」。男性(79)は、声を震わせながら怒りをぶつけました。
 「もっと制度を知らせないと」と同院は、一月から待合室に相談コーナーを設置。相談室の浅井香奈子さんと山本泰也さんは午前中、署名を訴え続けていま す。「SWの力を発揮したい」と浅井さん。四月三日も一時間あまりで八〇筆の署名が集まりました。
 松下光人事務長は診察を待つ患者さん一人ひとりに声をかけます。ビラを受けとった女性 (75) は「保険料はいくらになるん? 払えなければ、食費を削って貯金を下ろすしかない」。隣の女性(74) も「年金は減る一方。この歳で働くこともできない…」と声を詰まらせました。
 「年金問題が解決していないのに、勝手に天引きとは何ごとか。政治のやることやない」 「年金は月三万五〇〇〇円。介護保険料だけでも大変なのに、長生 きを罰するような制度」「厚労省の役人にとっては一〇〇〇円くらい何ともないんやろうけど、高齢者にとってはどんなに苦しいか。延命治療はするな、と家族 に言う」「長寿医療制度って名称変えたって中身はいっしょ。バカにするな」。
 患者さんは、口ぐちに怒りを爆発させました。

「高齢者いじめだ」

 大和高田市の説明会でよくわからず、混乱している患者さんや、制度や徴収など、さまざまな誤解をしている患者さんがあい次いで窓口や相談コーナーに来ます。医事課主任の上處(うえじょ)隆子さんは「こんなわかりづらい制度は老人いじめ」と憤ります。
 友の会は、会員に廃止を求める署名用紙も送りました。役員の浅野間良子さんは「後期高齢者世代は戦争で命捨てろと言われ、今は医療費を減らすために早く 死ねと言われる。ガマンの限界。みんな怒ってる」と、集まった署名を手に話しました。

学びが行動する力に

 土庫病院は一~六月を『明日をひらく社会保障』学習運動月間と設定。これまで全職員学習会を一三回開きました。また毎日、昼休みに一五分間、読み合わせをしている病棟もあります。
 読了した職員から「社会保障制度が格差と貧困を促進している」「国民の運動で制度改善はできる。たたかわなければ勝ちとれない!」と、元気な声がでています。
 午後の駅頭宣伝には友の会役員と職員二三人が駆けつけました。参加した五年目看護師の林口有希子さん。署名活動は初参加です。マスクと聴診器をつけたまま、病棟から飛び出してきました。

きっぱり廃止させる

 この制度のねらいは、現在の高齢者だけではありません。団塊の世代が七五歳を迎える二〇二五年に医療費を八兆円削減し、そのうち五兆円を後期高齢者医療で削る、そのための改悪です。
 制度が始まり、国民の怒りと廃止を求める運動はいっそう広がっています。中止や見直しを求める意見書を可決した地方議会が五六〇になり、全自治体の三割にまで広がっています。
 松下事務長は「こんな制度は許せない。四月二五日に怒りの決起集会を開き、デモ行進も行う。学びながら地域に出て、きっぱり廃止させたい」と、力強く語りました。

(民医連新聞 第1426号 2008年4月21日)

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