民医連新聞

2008年5月5日

“同居は対象外”おかしい ヘルパー制限撤回させる 北海道・札幌みなみヘルパーステーション “生きながらえればいいのか” 健康と生活ささえる大事な仕事

 二〇〇六年四月の介護保険法改悪から二年。新予防給付の導入で介護認定を下げられ、サービスを制限される「介護難民」も増えてい ます。また政府の「給付削減策」で、行き過ぎた「行政指導」がなされ、同居家族がいる利用者が機械的にヘルパー利用の打ち切りを受けています。この問題で は全日本民医連が交渉し、厚労省が「同居家族の有無を基準に一律に介護給付の支給の可否を機械的に判断しないよう」通知を出しました。その経過も示し「利 用者の立場で考えて」と行政に訴え、制限を撤回させた札幌みなみヘルパーステーションのとりくみを紹介します。(横山 健記者)

ヘルパーは必要

 昨年八月、Aさん(七〇代・女性)は、地域包括支援センターに「同居家族がいるならヘルパー派 遣は受けられない」と言われました。Aさんは娘と同居、要支援2(以前は要介護1)で、週一回(九〇分)利用していました。自費になれば一万円以上、一〇 倍以上の負担になります。
 ステーションにはAさんを含めた四人の打ち切りが通告されました。理由は「同居家族がいるから対象外」 。所長の鎌田頼子さんは、四人の生活を説明し、「ヘルパーは必要」と訴えましたが、センター側は「市から指導されている」というだけでした。
 鎌田さんは、社保協が実施した市との懇談に参加し、Aさんの状況を説明。民医連と厚労省の交渉経過も示して「娘さんは看護師。勤務は不規則でたいへん。 介護までしたらとも倒れになる。そうならないためにもヘルパーは必要」と訴えました。「家族がいれば介護できるはず」と主張していた市も「行き過ぎだっ た」と認め、指導することを約束しました。
 その後、包括支援センターのケアマネも利用者の実態を把握して是正、四人の制限を見直しました。

高齢者に不安与える制度

 渡辺昌子さん(七〇代)も今年の更新で「八〇代の夫を同居家族とみなし、打ち切りになるのでは?」と、不安を抱いています。
 訪問した時、ちょうどヘルパーさんが来ていました。去年の更新で介護予防に認定され、「時間が短くなっちゃったから」と、いっしょに片付けをしていました。
 渡辺さんは夫と二人暮らし。いまの心配事は「まだ動けるなら、サービスはおしまい」と言われることです。「国の予算を国民のために使わないでどうする の? 本当に腹が立ちます。ヘルパーさんたちがゆったり仕事できるように、しっかり保障してあげてほしい」とも気遣います。
 新予防給付の「身体機能の低下防止のため利用者もいっしょに家事をさせる」やり方も問題です。「何でもいっしょに、と強要され、ストレスで眠れなくなっ た」という人も。一人ひとりの人生や実情も考えず、機械的に対応する姿勢がここでもみられます。

いまこそ介護ウエーブを起こそう

 鎌田さんは現状を語ります。
 「新予防給付の狙いは、サービス利用の抑制。ヘルパーの役割は、利用者さんが健康的な生活を維持できるよう援助すること。部屋をきれいにして生活を整え ると、心も体も健康を維持できると思います。ただ『生きながらえればいい』のではなく、私たちは生きる励みになる仕事がしたい。ヘルパー事業が続けられる よう、私たちは技術やヘルパーのおかれている情勢をしっかり学び続けています。民医連以外の事業所とも連携を広げ、介護ウエーブを起こしていきたいと思い ます」。
 全日本民医連も「介護ウエーブ」を提起しています。

(民医連新聞 第1427号 2008年5月5日)

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