民医連新聞

2008年5月5日

フォーカス 私たちの実践 医・歯・介連携で口腔乾燥症のケア 愛知・あじま診療所歯科 季 福仙(リフクセン 歯科衛生士) 口臭が減り、保湿が改善 介護者の負担も軽減

「口腔乾燥症」とは

 唾液の分泌量(安静時・刺激時)が低下したり、口腔粘膜の水分が過剰に蒸発して引き起こされる、口の中が乾いた状態です。食べる、話す、飲み込む、などの口腔機能が阻害されます。

口腔乾燥症のケアの基本

(1)慢性の口腔乾燥症の場合は、水分が粘膜に吸収されにくくなるため、二~四時間おきの定期的保湿が効果的です。
(2)口呼吸などがある場合は、保湿効果が持続しにくいので、保湿ケア開始当初は頻度を多くし、約一~二時間に一回が有効です。
(3)食前口腔ケアを行うと、口腔粘膜が保湿され、なめらかに食事摂取ができ、嚥下機能がよく発揮できるようになります。
(4)口腔乾燥がひどい場合は、乾燥した口腔粘膜上皮が唾液や細菌と混じり合い堆積してカサブタ様の上皮になり、一度に剥がすと出血します。口腔ケアスポ ンジブラシで口腔粘膜、カサブタ様の上皮を湿らせ、軟らかくしてスポンジブラシで少しずつ剥がします。
(5)吸引器を使用すると、痰の絡みや、むせや誤嚥を防ぐことができます。

開口による乾燥症のAさん

 Aさん(女性・七〇代)。在宅要介護高齢者で、経管栄養剤を胃ろうから摂取し、常に開口状態です。開口筋群に弛緩があり、頚部は硬直しています。
 家族は夫と息子の三人暮らし。主たる介護者は夫で、一生懸命に介護していますが「歯ミガキのとき、口を開けてくれない」「出血や汚れが乾いてなかなか取れない」と困っていました。
 相談を受け、口腔ケアの仕方を指導したところ、訪問看護師が、他職種と連携して毎日口腔ケアができるよう一週間の流れをつくってくれました。
 口腔乾燥症の症状を緩和するため、口腔ケアプランを、(1)口腔内保湿と清掃、(2)唾液腺マッサージ、(3)口腔周囲筋マッサージ、の三本柱にして、実施しました。

高度から軽度へ改善

 口腔ケアプラン表は、わかりやすいようにベッドサイドに貼りました。週一回の歯科訪問診療の際には、口腔ケアの前に口腔水分計で、舌の中央、頬、舌先の粘膜上皮の水分量を計測しました。
 ケアを実施した結果、高度の乾燥から軽度へ、と改善がみられました。原因は開口による水分蒸発と考えられます。
 また一時、極端な乾燥感があり、訪問支援診療所の看護師に相談したところ、便秘したため経口栄養剤をエンシュアからハーモニックに変更したことがわかり ました。ハーモニックには「口渇」の副作用があり、エンシュアに戻すことで改善しました。

まとめ

 患者様の使用薬剤に関して定期的に情報交換するなど、医科歯科連携が重要と感じました。
 「一週間の口腔ケアの流れ」をつくったことで、介護者の負担は軽減しました。また口腔ケアの回数が増え、口腔内は保湿され「口腔乾燥症」の改善がみられるようになりました。
 何よりも口臭が減り、歯ミガキのときに口を開けてくれるなどAさんが協力的になり、ヘルパーさんは助かっています。
 保湿ジェルは、使って一週間で強い乾燥感が取れるなど、短期間で効果があがりました。いま、誤嚥性肺炎も起こさず、病状は安定しています。
 歯科単独では限界がありますが、口腔ケアのノウハウを他職種に伝え、日常的に連携してとりくんだことが改善につながり、重要と感じました。

(民医連新聞 第1427号 2008年5月5日)

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