憲法を守ろう

2008年5月5日

9条は宝 私の発言〈35〉 歴史の中継ランナーとして 文化と憲法で幸せな世界を

ジェームス三木さん(脚本家・作家)
 1935年、旧・満州の奉天(現・中国の瀋陽)生まれ。脚本家、作家。港区九条の会会長。
 代表作は、テレビドラマ「けものみち」「澪つくし」「独眼竜政宗」など。憲法に焦点を当てた小説『憲法はまだか』や演劇「真珠の首飾り」なども手がけ る。現在、公開している精神障害者の問題を描いた映画「ふるさとをください」の脚本も担当。

 脚本家として多忙な日々の中、いま積極的に全国各地の九条の会などで発言している、ジェームス三木さんに話を聞きました。

だまされてたんだ

 僕は中国の満州で生まれ育ちました。その当時「天皇は神様」と習ったので、戦後「人間宣言」したときは変な気がしましたね。「だまされてたんだ」と。
 政府というのは、権力の維持やいろんな都合で、国民にウソをつくんですよね。例えば当時、満州事変とか支那事変とか言いましたけど、あれは戦争なんですよ、全部。言い換えた、隠したんですね。
 だから、だまされちゃいかんですね。言葉を変にあやつるときは、危険な、何か具合の悪いことが裏にあると思わなきゃいけない。

欲望にブレーキを

 人間は本来、戦争が好きなんですよ。戦って勝つというのは大きな喜びで、優劣や順位をつけたがる。
 僕はドラマ作者ですが、ドラマの終わり方は二つしかない。一つは敵に勝つか負けるかで、刑事ものとかスポーツものなど。もう一つは愛情が通じるかどうか で、メロドラマとか友情ものです。人間の喜びは、突き詰めると、この二つ。さらに突き詰めると、二大本能。一つは種族保存本能。これは性欲で、あと自己保 存本能。これは食欲系ですが、そこに行き着きます。
 そうすると、敵に勝ちたい、人の上に立ちたいというのは、重要な食欲系の欲望であり、喜びなんですね。昔の英雄、指導者などはみんな闘争系で、強い人です。
 しかし、いま核戦争で地球が破滅するところまで来てしまった。だからもう、敵に勝つという喜びをゲームとか、スポーツなどに振り向けないといけない。武 力で勝ち負けという時代はもうなくなるべきですね。国の指導者も、世界と仲良くしたいという人をどこの国でも選ぶべきです。戦争好きや、名誉欲、出世欲の 強い人をトップにしてはいけない。
 人間は、欲望にブレーキをかける装置として、宗教とか、あるいは規律とかつくった。これは人間が偉いと思うんだけど、その装置に憲法も入っている。
 日本国憲法に関しては本も書きましたが、あれはアメリカ人が、アメリカの憲法よりもいいものをつくろうと思った。それで世界中の憲法を研究して、いいと こ取りしてできたんです。世界の英知が詰まった、本当にいい憲法なんですよね。

じゃあ降伏したらいい

 だから、いま憲法九条をどう変えようとするのかが問題です。さらにステキに変えるのか、それとも戦争できるようにするのか。
 「もし、軍隊を持たないで、攻められたらどうするんだ」と言う人がいます。僕は、降伏すればいいと思うんです。あの戦争でも降伏して早く終わっていれ ば、あんなに被害は受けなかったはず。しかし名誉とかメンツ、とくに権力者が許さない。でも名誉もクソもないんですよ。戦争というのは両方が負けるんだと 言います。両方が被害を受ける。やらないほうがいいに決まっています。

*   *

  国家は軍事、宗教や民族などで対立するけれど、唯一対立しないのは文化です。外国の小説を読んだり映画を見て、相手の国をよく理解していると、敵意を持つ とか、戦争にはならない気がします。文化は力を持っているんですよ。
 僕は、人間はみんな「歴史の中継ランナー」だと言っています。先祖からの恩恵を受けて、文化遺産をバトンタッチされて、今ここにいる。でも私たちが子孫 に、悲惨なバトンを渡そうとしているのは申し訳ない。何とかしなきゃ。そして憲法九条は誇りを持って伝えたいですね。

(民医連新聞 第1427号 2008年5月5日)

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