民医連新聞

2002年4月21日

医師確保の“壁”をどう突破するか

35回民医連総会方針を討議しよう 学習教育月間

医師確保の“壁”をどう突破するか

青森・医師委員会事務局(上)医師確保と養成めぐって

 全日本民医連理事会は、4~5月を中心に第35回総会で決定された運動方針を 学ぶ「学習教育月間」を呼びかけています。総会方針を地域・院所・職場と照らし、全職員が「自分の言葉」で語ろう、また1・3章で提起した方針を県連の方 針、院所職場の方針づくりに生かそう、との呼びかけです。
 各県・院所で運動方針がどのように受け止められ、実践されようとしているのか。各地の討議の模様をシリーズで掲載します。まずは四月九日、青森県連の医師委員会事務局会議での「医師養成と確保」の部分の方針討議を取材。
 出席者は、澤岡孝幸県連医師委員長をはじめ、伊藤真弘、相馬裕、砂川典満、佐藤久、三浦良成医師ら各委員。長谷良志男医師(全日本民医連理事・県連副会長)が司会を務めました。

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 青森県連では90年代に医師問題でセンター病院の危機を経験。不可分の関係にある医 師の確保と医師養成、医師問題の解決に立ち向かいました。研修医を2000年に4人、2001年に8人迎えることに焦点を当てて指導体制をつくり、医師の 過重労働改善にも目を向けました。また「二〇〇四年の臨床研修指定病院の取得を」めざし論議を開始しています。

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長谷 運動方針は「共同組織とともにとりくむ医学対への転換」を打ち出 し、「地域に根ざした医療活動」「職員が生き生き活動している」ことを医学生に向けて発信し、「医学生運動と協力協同しながら」、指導部が責任を持つこと が「医学対活動と医師養成を前進させていく基本」としています。まさに青森にもあてはまります。低学年の奨学生が獲得できていない「壁」をどう突破する か、この間の苦労も含めてご発言ください。
三浦 青森では医師不足、医療過疎を背景に、民医連の医学対は医学生運動に依拠し、発展させることに心 血を注いできました。医学生ゼミナールを三回も開催したり、医学連再建を担った医師たちが、自らの生き方に「津川先生の伝統を受け継ぐ」との決意で入職 し、今の青森民医連を担っています。
伊藤 特に90年代なかばに、経済的な理由で奨学生になった学生が、民医連とかかわり民主的学生運動に 参加して育ち、01年に八人入職した時が峰でした。その後が厳しい。最近は医学生運動そのものが後継者の確保に苦労する状況で、医学生運動に依拠するだけ では難しくなっています。もっと広い医学生に働きかける方針ですが、なかなか成果に結びつかない。
砂川 青森の医学対活動が医学生運動と結びついてきた必然性もあり、いままでの医学対活動は基本方向で正しい。今は民医連の実習に多くの学生が参加するよう、もっと工夫や努力が必要です。多くの職員が関わることが重要です。
相馬 医学対の問題は全ての問題に直結するもの。たとえば医学生委員会の企画にも、全職員が関わるように、管理部が認識させる指導が重要です。
伊藤 僕らのころと違って、最近の学生の気質や状況が変わり、学生を集団化することや大きな学習会の企 画が難しくなっている。学生のスケジュールがいわば個別的・不連続的・不確実です。だから学生がその気になった時にポンと来ても、来たり来なかったりでも 結びつきを保てるようなスタイルを検討できないか。たとえば学習会や研究会は職員主体で運営し、学生はいつ来てもいいように。そんな機能も必要か考えてい ます。
長谷 「共同組織ととりくむ医学対」という点でどうでしょうか。
伊藤 まだ十分なイメージがありません。お互いに情報を得たり、発信したり、例えば入学した子弟の情報や紹介が必要。
澤岡 今の学生は医師としての仕事や地域の中でのやりがいに目が向いている。我われが共同組織に目線を合わせることが、医学生との結びつきにも鍵。共同組織とともに何をするかもっと考えよう。
伊藤 最近、地協で「奨学生の合同合宿」をしました。北海道・江差をフィールドにして「地域とじん肺」 がテーマでした。ここで道南勤医協の共同組織の人たちが語った「患者の気持ち・要求」が奨学生たちに新鮮に響いていました。ディスカッションが盛り上がっ て、学生が「道南に就職します」なんて。学生にとっては直接患者さんの要求にふれる機会が少ないのですね。僕らと接点のある学生の多くは地域医療やプライ マリケアなどを志向しているわけで、その具体的なイメージをつくる上でも、「ここで働きたいな」という気持ちを引き出す上でも、共同組織の視点や接点が 入ってくることは大事だと思いました。
長谷 「共同組織」との接点を、イベント的でなく、継続的にするのが大事でしょうね。
砂川 「共同組織」と協力して学生に「津軽の人たちが求める医師像」を見せることが課題ですね。
伊藤 「突破口はこれ一発」ではないですね。医学対としてすべきことは揃っている。その中で、低学年で は関心に合わせて医療活動を示し、高学年では「研修」で民医連を打ち出していく。先輩医師の姿を「このようになりたいな」と思えるよう伝える場面をたくさ んつくることが課題ですね。
長谷 先輩が生き生き働いていることも含めて、日常医療で「民医連らしさ」を学生に示していくことが決定的。医療の質をつくる時代ですね。共同組織とともに、患者さんの人権を中心におく医療を深く実践することが、医学対の前進を左右すると思います。

(つづく)

(民医連新聞2002年04月21日/1274号)

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