副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)
2008年6月2日
副作用モニター情報〈289〉 鉄剤による過敏症
鉄剤の副作用は吐き気などの消化器症状がよく知られていますが、今回は過敏症の副作用報告を取り上げます。
2005年から3年間の間に副作用モニターに寄せられた、すべての鉄剤の副作用報告89例(うち注射剤3例)は、胸焼け、吐き気や嘔吐、胃痛、下痢、便 秘などの消化器症状が約9割を占めており、そのほかは、ふらつき、倦怠感、気分不良、ショック、肝機能障害、過敏症(発疹、かゆみ)の報告があります。
過敏症による副作用はフェロミア(R)によるものが3例、フェルム(R)、フェログラデュメット(R)で各1例、フェジン注(R)によるショック1例が 報告されています。そのうち、発疹を起こした2症例の概略は、(1)フェロミア再投与の結果ほぼ確実に副作用と判断され、インクレミンシロップへの変更で 改善、(2)フェルムで発疹、フェロミアへ変更して再び発疹が出現、インクレミンシロップに変更して症状は消失、という内容です。
以上の2症例からは、クエン酸塩などの有機鉄で過敏症状が起きる可能性が高い印象を受けます。もちろん、添加物が原因で副作用を起こしたという可能性も 考慮に入れる必要はあります。注射剤による発疹の報告はありません。鉄剤では消化器症状以外の副作用発生率は小さいと思いますが、使用量が非常に多い薬剤 なので、過敏症状の副作用に遭遇する機会はいつでもあると考えて日常診療にあたって下さい。
蛇足ですが、鉄剤では先発品の採用が主流のためなのか、ジェネリック製品での報告がまったくありませんでした。銘柄ごとに副作用をチェックする視点も求められているのかもしれません。
(民医連新聞 第1429号 2008年6月2日)
この記事を見た人はこんな記事も見ています。