民医連新聞

2008年7月21日

駆け歩きレポート(23) 認知症 地域の中でささえ合いたい 福岡・ありあけ健康友の会 三池支部

 福岡県の最南端、大牟田(おおむた)市。熊本県に隣接し、かつて日本の産業をささえた三井三池炭坑があった町で、いまでは高齢化 率が全国でトップクラスです。ありあけ健康友の会・三池支部では、医療法人親仁会(しんじんかい)の職員と協力し、認知症についてのとりくみを積極的に 行っています。(佐久 功記者)

 六月四日の昼下がり。会場に続ぞくと参加者が集まり、とうとうイスも足りなくなりました。今日は認知症をテーマにした、支部の合同班会です。講師は、田中清貴(きよたか)医師(親仁会・みさき病院副院長、神経内科)です。
 「認知症は、みんながなる病気です。八五歳以上では四人に一人が認知症です」。田中医師が話し始めました。認知症は治りませんが、進行を遅らせ、楽しく 生きる「良い認知症患者」になることはできます。大事なのは人間関係。周りが認知症のことを知らないと、認知症の人を単なる「困った人」と排除してしまい ます。そこから人とのつき合い、やることがなくなって、一日中家に閉じこもるようになります。それが認知症を悪化させます。だから認知症かなと思ったら、 食事会や班会など居場所をつくること、これが大切ですと語りました。
 ほかにも、介護は一人で抱えない、認知症の人に多い不眠症の対処法、良い施設の選び方など、介護で大切なことを話しました。母親の介護で悩む女性の質問にも、ていねいに答えました。
 そのあと作業療法士の河野幹男さん(親仁会・米の山病院)が登場。手指を動かすストレッチをみんなで行いました。「手を使うと脳が刺激され、認知症になりにくくなります。気軽に班会などでやってみて」と話しました。
 終了後も、参加者から田中医師への相談が続きました。また参加者の一人が友の会に入会、『いつでも元気』も一部増えました。

物忘れ外来 みんなで行けば怖くない

 三池支部が認知症のとりくみを始めたのは、ある班長さんの行動がきっかけでした。その班長さん は、同じ内容の電話を何度もかけてきたり、会議の時間や場所を何度も間違えるのです。しかしその班長さんは、「私は大丈夫だ」 。どう接したらいいのか。支部長の下川博子さんや、ほかの班長さんたちは悩みました。そこで、「一度みんなで物忘れ外来に行こう」と班長全員で、みさき病 院を受診しました。すると、その班長さん以外にも認知症の疑いが。
 それから、「認知症のことを知らなければ」と。病院の職員と協力し、物忘れ健診や認知症の学習会にとりくみ始めました。ここ二年あまりで二〇回近く開い ています。また河野さんたち病院の職員も必ず手伝い、班会をささえています。「いっしょにやるから安心。病院にも顔見知りができ、親近感が増します」と下 川さん。
 親仁会が以前、認知症のアンケートを実施したところ、よく知らない人が多いとわかりました。そこで「物忘れ健診委員会」をつくり、各院所や班会で健診を 実施。しかし認知症の人を見つけて、そこで終わってしまいました。それではよくない、と「認知症予防推進委員会」に変え、現在新たなとりくみを考えていま す。

田中医師のひそかな野望

 長年、認知症医療にとりくんできた田中医師は「診察室でできることは、意外と限られています」 と語ります。できるのは、診察して薬を処方するくらい。地域や家族のほうが、できることははるかに大きい。昔のように、いまは気軽に他人の家にあがれなく なっています。でも何でもいい、地域の中で、元気な人がちょっと元気のない人に声をかけて、集まればいい。そうして、家族で介護を抱えるのではなく、地域 みんなで面倒を見るようになっていく。
 「地味に、地域をじわじわと変えていきたい」と、ひそかな野望を語りました。

*  *

 支部長の下川さんは、「認知症班会を通じて、認知症に対する不安がなくなりました。三池支部では、認知症の人をみんなで見守りつつ、いっしょに活動して います。ボランティアを始めてから、しっかりしてきた人もいます。本人や家族の理解がすすまず大変なときもありますが、排除せず、これからも楽しく活動し ていきたいです」と笑顔で言いました。

(民医連新聞 第1432号 2008年7月21日)

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