民医連新聞

2006年4月17日

看護もっと働きたいの (13)こんな工夫 “事例を大切にする看護活動を”と師長会が症例検討会を主催―長野

今回は、長野・塩尻協立病院(九九床)の看護師・宗田まゆ美さんからの投稿を紹介します。さまざまな困難を抱えながらも、「事例を大切にする看護活動」にこだわり、自分たちの仕事を振り返ることで、働きがいをとり戻そう、というとりくみです。

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 当院は九九床の病院ですが、そのうち五七床が療養型病床です。一二〇人ほどの職員のうち、看護、介護職員が七割 を占めています。二〇〇〇年にオープンして以来、医療依存度の高い高齢者の在宅支援をささえ、急性期の治療を終えた患者様の在宅調整の受け皿として、重要 な役割を果たしています。

 しかし、現場の疲弊感は高まっていました。看護と介護の連携の難しさ、認知症の患者様が増え、マンパワー不足も 手伝って対応がたいへんなこと。さらに、オーダリング、電子カルテが導入されました。やりがい・達成感が見いだせないまま、退職する人が発生し、補充して も長続きしないという、悪循環になっていました。

外部講師がほめてくれて…

 そんな中、少し元気になれることがありました。開設三年目のころ、学習会の講師に呼んだWOC(創傷・オストミー・失禁)認定ナースからのひとことです。「病棟の患者さんのスキンケアがよくできていますね」との評価でした。

 そう言われて振り返ると、日々の医療活動は、確かに根気よく行っていたのです。今も新しいじょく瘡は、ほとんど発生させていません。介護職の大奮闘によるものも、大きいと思われました。

 そこで、〇四年からすすめてきたのは、看護師長会が主催する全職種参加の症例検討会です。キャッチフレーズは、「困難な時だからこそ、自分たちのとりくみをまとめて振り返ろう。できていることに自信をもとう」です。

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 今年度の検討会でとりあげたのは、訪問看護STが中心にまとめた筋ジストロフィーの患者様の事例でした。病院 オープン時から関わり、在宅で亡くなるまで見守った患者様でした。全セクション(医師、病棟、訪問看護ST、リハ)が、それぞれの立場から発言。また、最 近届いた、患者の母親からの感謝の手紙も紹介されました。この場で次のように振り返りました。

 (1)障害をもった人の家族のたいへんさを学んだこと、(2)積極的治療を受け入れなかったことが、医療者としては残念だったが、月一回の入院で、家族の介護負担を確実に軽減できた、(3)ありのままの彼と、家族の思いを受けとめることができたこと。

 また、県連の学術交流集会でも、胃ろうの患者が自力摂取ができるようになった事例を報告。高齢者を元気にできる 療養病床のチーム医療について、まとめました。やっと自分たちのがんばりが実を結びつつある中、政府が療養病床の削減を盛り込んだ医療改悪案を打ち出した ことは、許せない思いです。

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 たいへんなことを嘆いてばかりでは、前にすすめません。看護の視点だけでなく、多職種がかかわることで、複眼になります。事例にこだわる、事例から学ぶ、今だからこそ、この民医連看護の原点を大切にしたいと考えています。

(民医連新聞 第1378号 2006年4月17日)

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