民医連新聞

2008年9月1日

9条は宝 私の発言 〈38〉 「平和省」をつくろう

きくちゆみさん(著作・翻訳家)
 1962年、東京生まれ。マスコミ、金融界を経て、1990年から環境問題の解決をライフワークに。9・11同時多発テロ事件をきっかけにグローバル ピースキャンペーンを立ち上げ、米紙への全面広告やハリウッドへのビルボードを実現。翻訳書に『戦争中毒(合同出版)』。映画『テロリストは誰?』などの 日本語版を制作。

 環境、健康、平和の分野で活躍しているきくちゆみさん。いま「平和省」をつくろうと呼びかけています。(聞き手 渋谷真樹記者)

最悪の環境破壊は戦争

 九一年の湾岸戦争で油まみれになった海を見て「環境を守ろうと思ったら、戦争をなくさないといけない」と気がついたんです。
 政府は「温暖化を防ごう」とか、「クーラーの温度を二八度にしよう」などと言っています。そういう小さな努力をやるのも意味があるとは思うけど、いくら 国民が気をつけたって、一機の戦闘機がバーンと飛んだら大量の油を消費します。植林して一〇年、二〇年かかってやっと復元した小さな森が一発のミサイルで 一瞬にして燃えてしまう。だから環境保護の第一歩は、戦争とその準備をやめることなんです。日米の軍事演習で出る二酸化炭素や汚染物質はとんでもない量で すよ。

カッコイイ国際貢献

 アメリカの友人たちから「私の国にも九条がほしかった」と言われます。劣化ウランの放射能汚染や、命の危険を感じて、戦争をしている国の人ほど切実に平和を願っているんです。
 日本政府は、九条を旗印に外交すればいいのです。「わが国は平和でいく。武力は使わないんだ!」と世界に向かって堂どうと宣言して。
 例えば、太陽光発電パネルなど、日本の高い環境技術を生かして国際貢献するんです。医療分野でも、広島・長崎の経験を生かして白血病のイラクの子どもたちを助けることができます。
 国際貢献に武力はいりません。災害が起きた日にサンダーバードみたいに、いの一番に飛んでいき、太陽光パネルですぐ電気をつくって助けたらカッコイイじゃないですか。NGOと協力したらすごいことができると思う。

想像して創造する

 「軍隊を廃止するのは夢物語、きれいごとだ」と言う人がいますが、周辺で戦争が絶えないコスタリカでもできたんです。日本でできないことはないです。仮想敵国をつくって軍備を拡大するより、「敵をなくす」ことが大事です。
 「平和省」は、まもなくコスタリカでできるかもしれません。日本でもつくろうという運動をしています。私たちは「平和省プロジェクト」で議論を始めています。
 「平和省」では、平和的な解決ができる交渉力を持つ人を育てます。非暴力コミュニケーションという技術に注目しています。「平和省で、何をするかわから ない」と言わずに、まずは想像することから始めましょう。例えば、いまボランティアでやっている平和活動に国家予算がつくんです。まず思い描いてみる。そ して「平和省」という言葉を知らせるところから始めましょう。
 テレビに向かって文句を言うより、自分から変えていこうとする積極性をみんなで発揮しましょう。日本はもっと良くなると思います。

すべてつながっている

 いま、子どもを育てる環境は決して安心ではありません。食べ物の添加物や環境ホルモン、化学物質、放射能も、じわじわ、いのちを蝕(むしば)んでいます。
 気がついた大人が変えていくことが求められています。戦争も環境汚染も、いのちを中心に見ていくとすべてがつながっています。
 企業の儲けだけを優先するやり方を改めないと。とくに日本の軍需産業が武器を輸出できるようにしたいようですが、武器は結局、人を殺すものです。
 水も空気もこれだけ汚れて、地球環境がボロボロになって、人類に残された時はあと何年なの? というキリギリの今を生きる大人として、戦争を止め環境を 守り、貧困をなくすためにできることは何でもやっていきたいです。

(民医連新聞 第1435号 2008年9月1日)

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