民医連新聞

2008年9月15日

まっすぐな人権意識で学び合い、育ち合おう 第38期第1回評議員会ひらく

 全日本民医連は八月二三~二四日、東京で第三八期第一回評議員会を開き、評議員(予備含む)七三人と理事ら約七〇人が参加しまし た。総会以降、半年の情勢変化と各分野の運動の進展を踏まえ、方針と中間決算報告を全員一致で承認しました。また七月に誕生した栃木民医連の加盟を大きな 拍手で承認し、第三九期役員選挙管理委員七人を選出しました。

学習が運動の力に

 長瀬文雄事務局長は「総会方針学習は、四〇三六回も実施され、四万五六九人が参加した。学習が新たな決意とエネルギーを生み出した」とのべました。
 学習運動では「テストで推進(群馬・岡山)」「全職員のレポート(岩手)」などの報告がありました。
 学習は、原水禁世界大会や「九条の会」、基地反対などの運動と結合しています。滋賀の今村浩評議員は「二〇一〇年、NPT行動に若手職員を多数参加させたい」と発言しました。

困難に寄り添い

 石川の山下明美評議員は「畳から身体が剥がせない状態で搬送された患者は、生活保護申請が閉ざされ、金も保険証もなかった」と報告。城北病院がNHKの番組で「笑って死ねる病院」と紹介され、地域住民の信頼感を強めています。
 兵庫では高齢者の「不服審査請求」運動から国保の便乗値上げを止める運動に発展しています。千葉では「出前講座」や電話相談、訪問にとりくみ、「お金が ない人には民医連でさえ敷居が高い実態」と報告しました。大阪の熱中症調査は五年連続です。山形では「無料低額診療を開始。対象者を広げたい」と報告。京 都も生存権裁判の支援を強め、鴨川のホームレス調査などにとりくんでいます。埼玉・秩父では自治体健診に助成を求める運動をすすめています。

連携強める

 各地で地域の医療人(機関)と連携を強め、民医連『医療・介護再生プラン』に共感を広げています。山梨で県医師会が「医師署名」への協力を表明。群馬は高齢者アンケートをもとに自治体と懇談しました。
 介護ウエーブに多くの介護士が奮闘しています。「初のスーパー前署名行動(北海道)」「同窓生に呼びかけた(大阪)」などで署名目標を達成しています。
 地域医療の危機と医師の困難について報告が続きました。「小児科の集約化が崩壊寸前(鹿児島)」「救急の搬送先探しに長時間かかる(東京)」などです。
 福岡の川元伸一郎評議員は「県連内で医師退職。困難が生じた病院をささえるため現地懇談会を開催。こういう時こそDrウエーブで視野を広げることが大切」と発言しました。

後継者づくりに努力

 医師確保では「中途研修医受け入れ(岐阜)」「共同組織の参加(埼玉・北海道)」が報告されました。
 看護師確保では「区や医師会の協力を得て共同でとりくんだ(東京・練馬)」「看護師アンケートからみえた定着対策(神奈川・奈良)」などの報告がありました。
 経営改善では「県連に中小病院プロジェクトをつくり、連帯(東京)」「仲間増やし、学習、目標にこだわることがカギ(徳島)」の発言がありました。
 二日間で発言はのべ五三人(うち文書発言は三通)。最後に藤末衛副会長が「方針は明確になった。医療ルネサンスを起こす意気込みで地域医療を守ろう」と呼びかけました。

●地域に根ざした活動を●

 評議員会の発言から要旨を紹介します。

介護財政は黒字 引き下げ求め

高津 司評議員

東京

 東京では、介護保険財政に多額の余剰金が出ています。保険料引き上げと給付抑制で、二一区だけで三七八億円。にもかかわらず、給付削減は続いています。
 とくに北区は、介護認定を不当に厳しくしました。認定調査ではケアマネジャーの立ち会いを拒否、主治医意見書も無視し、区独自基準で認定。状態が変わらないのに介護認定が四段階も下がった高齢者も。
 一方で、運動で改善を勝ち取っています。港区では署名を集め、区議会に「介護職の待遇改善を求める要望書」を提出。千代田区でも介護職員の労働条件改善の補助が決まりました。
 これらの経験は、余剰金で保険料引き下げや事業所の助成ができることを示しました。今後も運動をつよめていきたいと思います。

ステッカーを手に地域に出よう

門 祐輔評議員

京都

 京都では、北海道・勤医協中央病院の「命を守るステッカー」を参考に、共同組織ごとにステッカーをつくり、事業所周辺に貼り出しています。
 貼りだした直後「血尿が出る」と男性から電話がありました。精査の結果、進行した膀胱がんでした。
 現在「ステッカーを広めよう。後期高齢者医療制度の中止撤廃を訴えよう」と地域訪問にとりくんでいます。地域の人たちと話す中で、職員は自分たちが住ん でいる地域を再確認。「この地域には何が必要なのか」など、考える力をつけてきています。

「人体の不思議展」中止を

板井八重子評議員

熊本

 ある医師から「人体の不思議展」について情報提供がありました。遺体を商業的な見せ物にしており、遺体提供の同意に疑問があるなど、問題点が多いことがわかりました。
 その企画が青森、岩手に続き、熊本でも開催される予定と知り、県連理事会で議論。人権を守る立場から「中止を求める」県連会長声明を出しました。
 後援の可能性のある地元新聞やテレビ局、医師会に面会し、情報も提供。そして「後援団体にならないように」と申し入れました。その結果、すでに後援依頼 が来ていた新聞社では「後援拒否」を決め、テレビ局では「依頼が来たら検討する」と話しました。
 民医連の活動が広まったおかげで、面会や呼びかけにも真摯に対応してもらったと思います。

社保テキスト1年かけ学習

滝野教明評議員

岡山

 当県では、昨年一〇月の「全職員が社保テキスト読了」の提起を受け、一年かけて身につけ、地域に出ることを目標に学習にとりくんでいます。
 とりくみをすすめるため、社保委員会と学習委員会の担当理事と事務局で推進委員会をつくり、ニュースの発行、章ごとのテスト、推進グッズづくりなどをし ました。グッズは、薬局がつくった「学習到達表」を全職員で活用し、自分自身の到達状況が目に見えるようにしました。
 二月、事業所の社保委員と教育委員など一〇〇人が参加し、社保テキスト講師養成講座を開きました。
 また七月には学習運動交流集会を開き、九四人が参加しました。学んだことを生かそうと、九~一〇月に訪問調査を行うことを提起しています。
 一一月に綱領改定を深める学習会も行う予定です。

医師集団・後継者づくりを

熊谷嘉隆評議員

長野

 当県連では、退職希望の医師に面接し、希望などに応じて、病院・診療所への異動で「退職者を出さない医師集団づくり」にとりくんでいます。異動先の病院でも事前に移動院所診療部と協議、対応しています。
 後継者の対策では、二年間で一〇人の奨学生が誕生。約半数は中・高校生からのつながりでした。
 また四年前から高校の進路説明会に院長と研修医、看護師など一〇人が出向いて、医療技術職を希望する約一〇〇人に医療の話、生きがいを語っています。
 学生が医学部などに合格すれば、三月中に訪問し、奨学金の話までします。入学前に奨学生が誕生する経験も生まれています。
 地方都市では、中学校から系統的に活動を積み重ねることが後継者対策には大切だと感じています。

臨研「管理型」取得抑制のりこえ

平野友久評議員

長崎

 中小病院での研修の優位性を力説してきましたが、上戸町病院(一〇四床)は当初、体制不足のため臨床研修指定病院の申請を見送りました。
 当県連には、〇九卒の奨学生が三人います。「この奨学生を必ず研修医として迎えよう」と決意を持って機関決定し、〇七年に再度、申請準備に入りました。 九州厚生局とひんぱんに連絡を取る中、「〇八年から新規を認めない」という厚労省の方針が出ました。そこで、小池晃参院議員の協力を得て厚労省と交渉しま した。
 熱意が通じたのか、九州厚生局の意向もあり、「離島・過疎地域の医療担う」旨の追加書類を事務局が寝ずの作業で作成、八月中旬に提出、認可を得ました。 職員や学生みんなで喜びました。〇九年四月には、三人の研修医を迎え、元気に研修体制を確立していきたいと思います。

経営改善のカギは学習運動

吉田 博評議員

岩手

 〇六年度診療報酬改定の影響で、川久保病院の療養型病床は大打撃を受けました。そのため地協のタス クチームが組織され、援助を受けました。助言の内容は、(1)回復期リハ病棟への転換、(2)院長自ら地域の病院を訪問する、というものでした。院長は近 隣の病院数十カ所を訪問、また、連携先の病院に迎えの車を出し、患者の受け入れをスムーズにしました。職員は回復期リハの学習も積極的に行い、〇七年度は 入院収益を伸ばしました。
 社保テキストの学習では、〇七年度中に全員が読了、レポートを提出しました。その後、総会方針や再生プラン、海外派兵恒久法パンフの読了をすすめまし た。新入職員の社保テキスト読了とレポート提出も実施中です。その力で後期高齢者医療制度のたたかい、介護ウエーブで県内共闘団体と運動の拠点となるよう 奮闘しています。

(民医連新聞 第1436号 2008年9月15日)

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