民医連新聞

2008年10月6日

「明日からも笑顔で」 第9回 全日本民医連 看護介護活動交流集会

 九 月二二~二三日、北海道で看護介護活動研究交流集会を開き、約一二〇〇人が参加しました。「看護師増やせ」「介護ウエーブ広げよう」の運動の高まりの中で 開かれた集会。スローガン「語ろう、つなごう、ひろげよう、いのちの平等と平和を守る民医連の看護・介護~しなやかに、したたかに、そしてあきらめない で」にふさわしい輝く看護・介護の実践報告を持ち寄りました。発表演題数は全体会発表七題と、分科会二七〇題、ポスター一三七題で、過去最高でした。介護 職の参加も増え、一一九人でした。記念講演は川嶋みどりさん(日赤看護大学学部長)。ナイトセッションは、坂東元(げん)さん(旭山動物園副園長)の講演 とYOSAKOI(ヨサコイ)ソーランチーム「新琴似天舞(しんことにてんぶ)龍神」の迫力ある踊りでした。

全体会発表

新卒離職者3年連続ゼロ
(東京・立川相互病院)
重野扶美子

 「辞めさせない」を合言葉に新人を受け入れ、三年連続で新卒離職者ゼロを達成しました。
 中堅以上の看護師を対象にした学習会を開き、新人をあたたかく迎える意識づくり、新人指導のあり方について学び合うなどの努力を病院全体として実践。
 新人が抱えている問題を素早くキャッチし、ていねいに面談をしながら、問題と教訓を看護部全体で共有しています。

被爆者聞き取り調査
(兵庫・東神戸病院)
牧野里香

 〇六年に認定患者の聞き取り調査をはじめて、一年間で四三人の申請手続きをしました。
 今回、被爆者が聞き取り調査に対してどのような感情を抱いたのかアンケートを行い、これからの支援のありかたを考察しました。
 聞き取り調査では、心の傷の深さを理解し、申請支援を行わなければなりません。
 被爆者にとっては、自分の過去を語ることで、「共感への安堵」「孤独からの開放」が得られる場ともなることもわかりました。

集団の力で看護師採用対策
(鹿児島・国分生協病院)
平瀬尚子

 増床をささえる看護体制確保のために、全職員で「看護師紹介運動」にとりくみ、〇六年から〇七年度の間に二〇三人の看護師を採用。そのうち四割が地域の組合員と職員の紹介でした。
 なぜ看護師不足が起きているのか、職員が組合員に診療報酬の問題と情勢を班会などで説明するなど、地域の組合員と職員がいっしょになって看護師不足の対策にとりくみ、集団の力で解決してきました。

患者参加型看護計画
(北海道・札幌西区病院)
畑山友里香

 〇七年から外来にプライマリーナーシングを導入、対象は悪性腫瘍などで継続した看護を要する患者と、教育・指導の必要な患者です。化学療法や頭痛緩和などの情報を集め、整理し、モデルケースを学習、グループで計画をつくり、発表会を三回。全員の参加で評価しました。
 その結果、スタッフの意識が高まり、その後の看護計画が具体的になる成果も生まれました。

無保険で乳がん末期38歳
(福井・光陽生協病院)
村松直美

 この女性は勤めていた会社が倒産、無保険でした。父母は高齢で父親は身障者です。訪問したとき尿臭の中で寝ており、すでに乳がんが全身転移していました。問題は資格書を発行する行政です。スタッフは母親を励まし、生活の支援策をとりました。
 家族だけではどうにもならなくなって助けを求めたところが当院でした。相談をすることも勇気のいることだったのです。
 家族に手が差し伸べられたことを知って、患者さんは安らかな死を迎えられたと思います。

歩行可能になるまで支援
(東京・みさと健和病院)
川上貴子

 三三歳の男性が交通事故で脳挫傷となり、遷延性の意識障害のまま転院してきました。全スタッフがあきらめず、一〇カ月後には、歩いて退院することができました。
 その間に、母親にガンが見つかりました。私たちは退院を急ぎました。歩行が安定し失禁もなくなったところで退院。母の最期の一月を家族三人で過ごし、看取ることができました。
 あきらめない看護が大切。今は男性が、母が望んだように仕事に就くことをめざして応援しています。

地域ネットワークで見守る
(北海道・釧路市中部地域包括支援センター)
遠藤みちよ

 七〇代の独居女性。コンビニ店長から「様子が変だ」との通報。ほこりだらけの寒い部屋で、金銭 管理もできず、また生活保護や介護保険の申請を拒否しました。そこで民生委員や大家、従兄弟、コンビニ店長に加わってもらい、地域カンファレンスを開催、 ネットワークをつくりました。
 スタッフの「これまでがんばって来られたんですね」という言葉で、だんだん受け入れる気持ちが本人に出てきました。自尊心を尊重し、買い物に行ける力を 評価、「あなたを大切に思っている」と伝え続けたことが、かたくなな気持ちを解きほぐしたと思います。

分科会から

【患者・利用者の立場に立つ看護・介護の技術向上】では、終末期の支援について、患者の希望を尊重し、家族間の葛藤を理解、家族会議を提案して団結を回復した事例の報告がありました。また「お悔やみ訪問」や「慣習にとらわれないエンゼルケア」など、遺族の気持ちを大切にする活動が報告されました。
  施設では、その人らしさが発揮できるよう配慮し、問題行動を減らし、生き生きと生活できるよう援助。認知症があっても世話好きな「大家族のお母さん」や 「お宝おばあちゃん」として大事にしています。また「添い寝」「入院時せん妄をなくす」「呼吸器疾患の教育入院」などのとりくみ報告がありました。

【安心して住み続けられるまちづくり】では、高齢者や病気に悩む人の支援を地域でどのように行っているか、実践と経験が報告されました。
 はなみずき指定居宅介護支援事業所(福島)では、一人暮らしの高度認知症の高齢者が自宅で生活している事例を紹介しました。デイサービスやヘルパーによ る生活の援助を受けながら、地域の商店街を中心とした住民が集団で患者を見守ることで、自宅での生活が可能になっています。たくさんの人がバランスよく高 齢者を支援することで、負担を軽減しています。
 埼玉協同病院からは、精神疾患、虐待既往のある母親に対して、児童相談所など地域の関係機関と病院が情報を共有ながら連携して支援している経験が報告されました。

【ともに育ち合う職場づくり】では、新職員教育や年代別の職員研修、フィッシュ哲学を学び、職場改善にとりくんだ事例が発表されました。
 千鳥橋病院(福岡)の手術室では、機械操作の習得や継承を目的に挿管介助や手洗いの仕方をビデオで撮影。マニュアルと併用し、業務の統一を図っていま す。ビデオをつくる中で、個人の認識のズレがあることもわかりました。見て覚えるため、介助時のストレスも軽減されました。今後も増やす予定です。

【生活と労働の視点からの看護】では、忙しい中でも患者さんの声を率直にとらえ、支援や業務改善につなげています。
 滋賀の老健・日和(ひより)の里では、入浴介助の時の腰痛の原因は「冷え」と考え、エプロンをつけて介助することにしました。統計は出していませんが、藤原芳和さんは「腰痛の訴えは減っている。今後の課題は徹底すること」と話しました。

ポスターセッション

 見やすく工夫された、一三七のポスターが張り出され、発表者は自分たちのとりくみを説明しました。
 七つのグループにそれぞれ二〇~三〇人がポスターを囲み、自分の職場でもできることはないかと真剣に聞き、発表者に質問していました。

ナイトセッション

 旭山動物園副園長の坂東元さんが講演

 YOSAKOIソーラン「新琴似天舞龍神」が華やかな踊りを披露

(民医連新聞 第1437号 2008年10月6日)

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