いのちと人権を守る

2008年10月6日

駆け歩きレポート(25) 札幌・高校生の進路探求学習ゼミナール 研修医、熱く語る 医療人めざす高校生へ 北海道勤医協中央病院

 「医師や看護師、薬剤師をめざす高校生に、地域医療のやりがいを知らせたい」。勤医協中央病院・医学生室の働きかけが実り、八月 二七日、北海道札幌旭丘(あさひがおか)高校の「進路探求学習ゼミナール」に同院の研修医、薬剤師、看護師が講師として招かれ、高校生八〇人に医療で働く ことの魅力を語りました。(渋谷真樹記者)

 今野聡さんたち医学生室の担当者は「高校生一日医療体験」を紹介し、参加者を募るため、毎年春に札幌市内外の学校を回っています。
 旭丘高校を訪れたとき、稚内市で今年三月に小中学生向けに進路探求・医師講座を開き、好評だったことを紹介すると「ぜひわが校でも」という話になりました。

魅力を伝えたい

 「生徒にとって進路選択の羅針盤になるような企画にしよう」。同院の医学生委員会ではプロジェクトチームをつくり、研修医六人、看護師三人、薬剤師一人の講師を集めました。
 「自分も医師になりたい」と思うような、心を揺さぶる内容を研修医が語ろう、看護師も薬剤師も後輩をつくるつもりで話そう。一時間でどれだけ「命を守る 仕事」の魅力をアピールできるか、進路の悩みとはどんなものか、生徒たちの夢をふくらませたい。何回も議論して知恵を出し合いました。
 医療の仕事を紹介するとともに「講師自身がなぜこの道を選んだか」その歩みや経験を率直に話すことにしたのです。職員たちは業務の合間にスライドをつくり、打ち合わせとリハーサルを重ねました。

生徒の目線に立って

 いよいよ当日。高校二年生が二〇人ずつの四クラスをつくり、各二、三人の講師がつきました。
 生徒一人ひとりの顔を見ながら「私はとくに夢もないまま高校で三年間をすごし、進路希望を聞かれるのがプレッシャーでした」と話しはじめた研修医の佐藤 健太さん。「働くならやりがいのある仕事を」と探していたとき、好きな女の子から「ケンちゃんは医者が似合うよ」と言われて医学部にすすんだ、と告白する と、それまで緊張感のあった教室がドッと笑いに包まれました。
 「自分の専門外だからと患者を断るのは医師側の理屈。なんでも診療できる医師になりたい、という強い思いがあり、地域密着型の小さな病院で実習しまし た。そこで大学の専門医とならぶ実力をもった志の高い医師と出会い『総合診療医』をめざしました。多くの人たちとの出会いで自分の道が定まってきたんで す」という率直な話でした。最初は緊張して照れくさそうにうつむいていた生徒も、医師の語る本音に引きつけられ、目が輝きだしました。
 「佐藤先生の高校時代も、いまの自分とあまり変わらなかったようで安心した」「自分たちの立場になって具体的に話してくれたので、わかりやすかった」と、生徒は感想を寄せています。
 看護師の柳川真伊さんは同校出身です。患者さんの体調観察、生活支援のほか、他職種との打ち合わせなど、医療現場をささえる看護師の仕事を紹介しました。
 看護師をめざしている我妻佳奈さんが「看護体験をしたとき半日だけで足がパンパンになった。体力がないとダメですか?」と質問。「夜勤があるから、ある 程度の体力は必要だけど、一番大切なのは優しい気持ちです」。後輩をまっすぐ見つめて明るく答える柳川さんに、我妻さんは笑顔でうなずき返しました。

反応に手ごたえ

 このとりくみは講師になった職員にとっても刺激的でした。佐藤さんは「みんな真剣に話を聞いていた。次の機会があれば、スモールグループディスカッションをとり入れたらいいね。もっと工夫してみたい」。生徒の反応に手ごたえを感じ、もっと語りたいと意気込んでいます。
 「こういう形で公教育に医療機関が関わることは、地域の医師・看護師不足の解消につながります。当院に興味をもってくれた人もいたと思います」。今野さんはこの経験をさらに広げていきたいと考えています。

(民医連新聞 第1437号 2008年10月6日)

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