民医連新聞

2008年12月1日

看護師確保 V字回復を 民医連を語り仲間に

 「看護師獲得のV字回復を」という決意のもと、全国で看護学生に働きかけています。国家試験対策の講習会や看護を語る会なども真っ最中。青森、千葉、埼玉、岐阜、静岡など目標に到達した県連も生まれています。
 青森の健生病院(津軽保健生協・弘前市)は日常的に臨地実習を受け入れる中「看護学生が就職したい病院」という評判を得ています。そこには「育ち合う」 職場づくりと、どんなに苦しい時でも看対専任者を配置してきた歴史があります。(小林裕子記者)

職場全体で育てる臨地実習生

青森・健生病院

 健生病院の病棟。研修医はもちろん、医学生や看護学生、薬学生、セラピスト、ケースワーカーの卵たちの姿が常に見える、教育的で落ち着いた雰囲気です。
 弘前市(一七万人)は学園都市で、看護学校は五校、来年一校が開校予定です。しかし、県や市内の看護師は不足。首都圏に流れてしまうのです。一方、附属 病院のない看護学校は、学生の臨地実習を市内の病院に依存、実習先が不足しています。
 そうした中、健生病院は四年前から、臨地実習を積極的に受け入れています。看護師不足の情勢と予定される定年退職者増に見合う確保を重視したからです。

教育指導者を配置

 たいへんな努力も伴いました。看護協会の指導者養成コース(半年の課程)に毎年参加者を送り、 指導者を育成し、いま各職場に二~三人を配置しています。〇七年には「臨地実習実行委員会」を立ち上げ、職場全体で学生を受け入れる体制づくり。学生の 「気づき」を新鮮に受け止め、職場改善に生かす風土も培われています。
 藤澤智子さん(高齢者総合病棟の指導者)は言います。「たとえばオムツ交換の後、汚れ物を床に無造作に置いていたのです。学生に指摘されてカートを導入 しました。よい緊張感もあり、スタッフは優しく接します。学生は『患者が返事してくれない』なんて悩むのですが、非言語的なコミュニケーションもあるから 悲観しないで、患者の仕草や表情をよく見てね、など具体的にていねいに関わっています」。
 内科総合病棟の看護長・登嶋せつ子さんは「受け入れ前に職場で意思統一します。平均在院日数が短いので、担当してもらう患者を選ぶのがたいへん。患者の転病棟に学生がついて行き、継続して向き合うこともあります」。

仲間を育てる気持ちで

 学生への接し方に現場スタッフの気持ちが現れます。副総看護長の加藤あけみさんは「実習生は看護師の後輩で仲間です。どんな学生でもマイナスに評価しない。大切に教え育て、担当者任せにしない。これは新人教育にも通じます」と話します。
 長谷良志男院長も「これは地域貢献だよ。君たちが学生に伝えたことはどこかで生きる。ここの看護を伝え、日本のどこかでよい仕事をしてくれたらいいじゃない」と励ますそうです。
 看護学校の指導教員として学生に付き添っていた長尾みつ子さん。実はかつて同院の看護師でした。八年ほど勤務し転居のため退職。一〇数年間この仕事に携 わり、市内の実習病院をすべて回っての感想は「学生を労働力にせざるを得ない病院が多い中、健生病院は看護師の姿勢や態度が教育的で、レベルが高く、感動 の連続です。ここに来た学生は幸運。私はすごい病院で働いていたのですね」。

「平等の医療すごい」

 オリエンテーションでは、民医連の医療・看護を語ります。
 総看護長の永井陽子さんは「当院が差額室料を取らず、平等な医療をしていること、患者の権利や平和の課題も前面に出します。これが大事なツボ。それを学 生はまっすぐに受け止めます」と話します。「すごい」という感想が出されます。
 就職説明会の日時や奨学生の催し、学習会などを実習生が閲覧し、参加できるようにしています。また、昼休みなどに看対担当者が学生と個別に話し、つながりを深めます。
 臨地実習で知る学生の状況は、新人を育てるための情報にも。同院はエルダー制をとり「新人を職場全体で育てる」中で、新卒の退職者を五年間出していません。
 「働きやすい雰囲気、理想の先輩がいる」などの魅力から、今年は卒年次で奨学生になる学生が多くいました。「奨学生にならないと採用されない」というウ ワサも流れたようです。同院の受験者二九人の二五%が実習生でした。

看対専任看護長の存在

 「学生が就職したい病院」になるまでには歴史が。法人看護部長の大塚由紀子さんは「どんなに看 護体制がきつくても看対専任者をなくさなかった」と強調します。約三〇年前、看護師として初めて半専任の看護学生担当になりました。「良い医療をやってい るのに来ない」というつらさも味わい、「看護長になったら一度は看対専任になり、人を育てる技量を磨いて現場に戻る」というスタイルを、みんなでつくりあ げました。「育ち合いの看対」と呼びます。
 「いまブレイクしているが、手を抜けばいつ厳しい事態になるかわからない情勢。苦しくても後継者を育てて民医連の医療を守る。その姿を地域の人や組合員 が見て、ささえてくれる」 という言葉に、長年の苦労が見えました。

看護学生への働きかけ、各地でも

 残る四カ月、来春の就職者を迎え入れるため、各地で奮闘が続いています。

国試対策セミナーで新しい人と

大阪民医連

 国試対策セミナーを実施しています。〇九年卒の奨学生と内定者の全員合格が目的。この機会に民医連の活動を多くの看護学生に知らせる企画でもあります。
 第一回目は八月八日に開催。ホームページに掲載し、府内の看護学校にポスターを送り、つながりのある学生にチラシを渡し宣伝を依頼しました。午前中は有 名外部講師の「国家試験対策講座」で八一人が参加。午後からは三六人の参加で、先輩ナースが民医連を語り、質疑と交流を行いました。次回は一二月、最後ま で参加してもらうよう工夫します。
 参加者の感想には、「民医連の地域に根ざしたケアがわかった」「働きやすそうな環境と思った」などがありました。ていねいにつながり続けたいと考えています。(高野千穂・県連事務局)

先輩ナースと語る会

京都民医連

 九月二〇日、来年卒業予定の看護学生五人を対象に「先輩ナースと語る会」を開きました。石川・ 城北病院のDVD「笑って死ねる病院」を上映、二~三年目若手ナースが「卒後研修」「大学卒業後、働いての感想」について語りました。また看護師長が、認 定看護師の資格を取るにあたり、ささえてくれた上司の存在でキャリアアップしたと話しました。
 参加者から「民医連の患者様に対する暖かい気持ちが魅力で、就職を決めました」「キャリアアップの話を聞き、少し先のことも考えたい」などの感想が出されました。(戸崎みどり・県連事務局)

体験会や模擬面接など

宮崎民医連

 看護師一日体験を五~九月まで毎月二回実施し、昨年に引き続き、のべ一〇一人が参加。一〇月には模擬面接を二回行い、参加者は計一一三人でした。
  そのほか臨地実習や就職説明会、国家試験対策講座などを通じて、今年度スタート時にゼロだった〇九年卒の内定者は五人に。うち二人が奨学生になりました。 この間、食事をともにしながら総師長がじっくりと看護を語ったり、話の上手な医師に対策講座の講師をお願いするなど、できることを一つひとつ実施してきま した。
 目標の六人まであと一人の確保と、全員の国家試験合格をめざしてがんばっています。(福永尚子・県連看護委員長)

(民医連新聞 第1441号 2008年12月1日)

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