民医連新聞

2008年12月1日

フォーカス 私たちの実践 新エンゼルケアを導入 石川・城北病院 最期もその人らしい粧(よそお)いで 遺族が参加し癒される

 第九回看護介護活動研究交流集会で、看護師の竹崎香さん、岡崎亜美さんが発表した報告です。

 折れた真っ赤な口紅、肌の色と合わないファンデーション、何人もに使い汚れたスポンジ。不揃い なメイク道具は、なぜかお菓子の空き缶に…。患者様が亡くなり、エンゼルメイクをするとき毎回「こんな化粧品で申し訳ない」と思っていました。日ごろ「暖 かく見送りたい」「よいお別れを」と願っているのに…。
 一九五〇年代、病院で亡くなる人は一割でしたが、現在は九割。エンゼルケアは看護師の役目になりました。当院でも年間約一五〇人が臨終を迎えます。しか し、看護教育でもエンゼルケアは重きが置かれず、看護師個人の考え方や手技もまちまち。文献も少なく、私たちも施したエンゼルケアに死者の家族縁者は満足 なのか、問題はないのか調べていませんでした。
 そこで今回、看護師、遺族、葬儀社にアンケートを実施、エンゼルケア講習会にも参加し、基準を改定することにしました。

遺族「声かかれば…」

 葬儀社の回答から、病院のケアが最後で、崩れや汚れがなければ化粧は直さない、と知りました。看護師には「葬儀社が再度する」と思っている人が多くいました。
 遺族からは「声がかかればケアに参加したかった」という回答が一八人中一二人からあり、実際に「看護師に声をかけられた」という回答は一人でした。看護 師の半数が「遺族に声をかけていない」と回答し、その理由は「看護師の仕事だから、家族が参加するとは考えなかった」が七二%でした。
 当院の死後処置の基準では、「家族から申し出がない場合、控え室で待っていただく」とされ、家族は「忙しいから邪魔してはいけない」と考えがちです。実 際「要望があっても伝えられなかった」という回答もありました(一二人)。家族の思いと、基準や医療者の対応には差がありました。

慣習にとらわれず

 そこで、新エンゼルケアの講習会に参加しました。(講師は小林光恵さん)
 講師は「エンゼルケアを死後処置ではなく、退院準備として考える」と言いました。手を組むなど形式的なことは葬儀社がするので、病院は「その人らしく自宅に帰すケア」をすればよいのです。
 慣習にとらわれる必要もなく、「大切な人を失った悲嘆に対するグリーフケア」の一環として行うもの。遺族の九割が心残りを感じており、エンゼルケアに参 加することで「最期にしてあげた」という満足感を得ることができ、心残りと悲しみが軽減されること。「死者がその人らしさを取り戻すためにも、家族の参加 が大切」などを学びました。

家族参加とていねいなケア

 新エンゼルケア(表)を導入し、半年後、モニター病棟でアンケートしたところ、「家族にエンゼ ルケア参加を呼びかけるようになった」という回答が多くあり、職員の意識の変化を感じました。家族には、積極的に参加する人もいれば、戸惑いの表情で見て いる人もいます。ケアをしながら生前の思い出話をする人、「きれいになって良かった」という人もいました。葬儀社や親族への連絡で忙しい中でも満足してい る様子がうかがえます。
 職員に対しては新エンゼルケア学習会を開催。従来の考え方とケア法との違いを説明し、メイク道具の使い方を実演しました。「こんなにていねいなら家族に も喜ばれ、看護師もうれしい」という声が出る一方、難しいイメージもあり、実際には手慣れた人に任せてしまう傾向がまだあります。研修にも組み込み、繰り 返し学習することが必要と感じています。

(民医連新聞 第1441号 2008年12月1日)

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