民医連新聞

2008年12月15日

「歯科再生プラン案」がめざすもの “保険”きく範囲ひろげ、口から健康増進を

 全日本民医連は「医療・介護制度再生プラン(案)」に追加して「歯科再生プラン(案)」を発表しました。いまの情勢や社会保障との関連で一番訴えたいことや、活用の方法について歯科部長の江原雅博理事に聞きました。

 なぜいま、歯科の再生なのでしょうか。病院が倒産し、医師が足りず、地域医療が崩れて社会問題にもなっています。一方、歯科医院はコンビニの数より多く、「歯科医は過剰で五人に一人がワーキングプアだ」という報道さえあります。
 しかし、歯科の患者が減っていたり、経営が大変になっている背景に、見落としてはならない問題があるのです。

収入格差が歯科受診の格差に

 歯科の二大疾患は「虫歯」と「歯周病」で、国民の八~九割が罹患(りかん)しています。ところ が、その人たちが歯科に受診してきちんと治療や予防の処置を受けているでしょうか。決してそうではありません。とくに低所得者の歯科受診は抑えられていま す。「歯科再生プラン(案)」に書いてあるように、歯科は経済的に余裕がないとかかれなくなってきています。
 もし、障害者や有病者を含むすべての国民が、歯科受診・健診の機会を充分に保障されるようになれば、歯科医は余っているどころか足りないという状況になるかもしれません。

狙われる自費部分の拡大

 歯科が受診しにくい理由は何か。日本の歯科医療が「自費」と「保険」の二本立てになっていて、保険でできる部分が縮小されていることが一つの大きな問題です。
 歯科医師会はさらに保険診療部分を減らし、自費診療分を増やす方向を主張しています。それで経営を打開しようと考えているようです。しかし、これでは保 険歯科医療はますます荒廃し、国民から遠いものになってしまいます。政府・与党も保険医療費の削減になるので大賛成です。
 歯科医療の再生には、多くの国民が賛同してくれている「保険で良い歯科医療を」の方向しかありません。奪われている国民の歯科受診の権利を取り戻すこと こそ、国民の健康増進にとっても、歯科経営の改善にも歯科医師のやりがいにもつながる道です。

予防にもっと力を

 口の中の健康と全身の健康は深くつながっています。「八〇二〇」達成者は、非達成者と比べて平均医科診療費が少なく、生活習慣病にもかかりにくいという結果があります。
 また、働き盛りの四〇~五〇代に歯の病気が多いことも問題です。労働安全衛生法で規定する健康診断に、歯科健診を有害業務に限らず、すべての労働者に事業所の責任として実施させることも必要です。
 そして、民医連では、当たり前のようになっている医科・歯科連携も、もっとすすめなければなりません。

スタッフ育成は急務

 もう一つは歯科スタッフの育成です。低診療報酬による歯科経営の困難から歯科衛生士や歯科技工 士の労働条件が悪化し、志す若者が減っているという問題もあります。このまま行けば後継者が育たず、将来、歯科技工技術などは海外に頼らなければならない 状況にもなりかねません。
 歯科分野で働く人たちが希望を持てるような改善を「歯科再生プラン(案)」で提案しています。民医連の歯科医療の良さであるチーム医療、人権を守る治 療、医科・歯科連携をささえる上でも、スタッフの育成は重要です。それは、日本中の歯科の課題でもあります。

ぜひ読んで広めよう

 「歯科再生プラン(案)」は「医療・介護制度再生プラン(案)」とあわせて、ぜひ医科や介護も含めた職員みんなに読んでいただき、地域の歯科医療従事者にも知らせ、日本の歯科医療を抜本的に良くする運動につないでいきましょう。

全事業所の黒字化に向け意思統一!

38期歯科院所長・事務長会議開催

 11月29~30日に開催した会議では、情勢報告と「21世紀論」「3つの転換」などの実践があらためて重要であること、経営改善はまったなしであることが確認されました。
  その上で、民医連歯科の今後の課題は、◆全ての事業所が2011年度までに黒字化を、◆経営困難の要因を徹底分析と点検を行い、具体的な改善に結びつけよ う、◆時代を切り開く経営力量の向上と管理水準を引き上げよう、◆地域における民医連歯科の存在意義を明らかにしよう、◆地協機能の強化をはかり、地協で の学び合いと相互チェックで智恵の共有をはかろう、◆医師養成と歯学対、職員の育成をすすめよう、◆歯科再生プラン案を広げる取り組み、◆社会保障充実を 求める活動講演、の8点があげられました。

(民医連新聞 第1442号 2008年12月15日)

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