いのちと人権を守る

2008年12月15日

高齢者の権利かかげて(7) 75歳から医療費無料 小さな町の大きな挑戦

東京日の出町

 東京・日の出町(人口約一万六〇〇〇人)は九月、来年度から後期高齢者(七五歳以上)の医療費自己 負担を肩代わりすると発表、一二月町議会は条例案を賛成多数で可決しました(人間ドックも無料)。所得制限はなく、三年以上居住者が対象です。後期高齢者 は一八七〇人(人口比一一・七%)、初年度予算は約八五〇〇万円の見込み。昨年オープンしたショッピングモールの固定資産税増収分で充当する予定です。

「友の会」の運動としても

 三多摩健康友の会秋川流域支部の支部長・増田忠治さんは「町長の決断をみんなで応援したい。国から圧力がかかることが心配だが、ぜひ貫徹してほしい」と話します。同支部は、東京西部にある、あきる野市・檜原村・日の出町の会員約七〇〇人で構成しています。
 後期高齢者医療制度に反対する運動では、昨年一二月、東京民医連の事務局次長の講演会を四〇人参加で開いて以来、地域で小さな学習会を積み重ね、署名活 動も続けてきました。五月には、五日市の中心商店街を五~六人の役員で、シルバーカーにハンドマイクを積み、署名を呼びかけて一軒一軒を訪問。地域連絡会 を八月に結成、宣伝カーを繰り出しました。

沢内村の例を力説

 八月中旬に行われた毎年恒例の自治体キャラバンでは、地域社保協の仲間と、西多摩の八自治体を要請に回りました。
 日の出町との懇談の席上、応対した課長四人の前で、増田さんは力説。「後期高齢者医療制度で困っている。福祉を掲げる町なら、窓口無料化を全国に先鞭を 付けて実施してほしい」。岩手県沢内村の例をあげ、深沢晟雄(まさお)村長の「年寄りも子どもも病人も…、価値の根源は人間だ」という言葉を引き、「ぜひ 町長に伝えてください」とのべました。町民課長は「必ず伝えます」と答えました。
 その後、九月の「敬老大会」で町長が「窓口無料、人間ドック、健康教室も無料にする」と発表、「大ニュース」になりました。
 町の課長が折田眞知子町議(日本共産党)に連絡してきた時、「キャラバンで来た増田さんに一番に知らせて」という伝言がありました。それを聞いた増田さ んは「要請が簡単に通るとは考えていなかったが、あるいはヒントになったのかも」と思ったそうです。

国は見習うべき

 折田町議は「医療・福祉の増進は町民にとって喜ばしい。新しい財源の使い方としても当然。しかし町 の財政が厳しいことも事実で、この施策が一自治体で継続できるかどうかも課題。町長は『国にはあらがえない。制度から一自治体が抜けるわけにいかない』と いう見解だが、私は国に、この一自治体のとりくみを見習ってほしいと思う」と語ります。
 同町にはユニークな子育て支援策もあります。中学三年生まで医療費が無料、同じく中学三年生までの子ども一人につき毎月一万円のクーポン券が支給され(子どもが五人いれば五万円)、これは地元の商店でだけ使えます。
 今回の発表は、高齢化がすすみ「介護と医療の費用が二重苦」という声が強くなる中での独自施策です。増田さんは「年齢で差別する制度が許せない。やはり撤廃しかない」と言葉を強めました。(小林裕子記者)

(民医連新聞 第1442号 2008年12月15日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ