いのちと人権を守る

2009年1月5日

無料・低額診療ひろげよう いま困難な人を救うために 「安心して入院できます」 山形・本間病院(健友会)

 お金がなく病院に行けず「手遅れで死亡」が後を絶ちません。そこでいま「無料・低額診療」が注目されています。全日本民医連は三 八回総会方針で、全加盟事業所に「活用へ挑戦を」と呼びかけました。〇八年四月には健友会(山形・酒田市)が事業を開始。また、政府の「必要性が薄らいで いる」という見解を打ち破り、兵庫・尼崎医療生協も事業申請をすすめています。生活困難が広がっている時だからこその決断です。(村田洋一記者)

「本当に助かります」

 この制度を利用して健友会の本間病院に入院している石井やゑ子さん(92)。入退院をくり返し ており、今回は膝の治療で入院です。夫は近くの特養に入所中で、その費用が毎月十数万円かかります。夫の年金がほとんどそれで消え、石井さんの年金は三万 円ほど。子がなく、家計は大変です。
 「私の入院費は減免していただいて本当に助かっています」と石井さんは声をうるませました。

患者負担が重すぎる

 「この地域は低所得、一人暮らし、老老介護の人が多いのです」というのは同院の医療福祉相談員 の太田久美さん(三年目)。酒田地域には療養型病棟は同院しかありません。どうしても入院が必要で、経済的に困窮している患者さんにとって、同院が「無 料・低額診療事業」を開始したのは、たいへん喜ばれました。しかし、病院給食の負担は残ります。太田さんは「いまの医療制度は限界。矛盾が多く、自己負担 が重すぎるのです」と憤りました。

無料・低額の役割は大

 本間病院は〇四年に、酒田市の再開発事業に位置づけられて、リニューアルオープン。同年、病院と同ビル内に老健施設「ひだまり」(一〇〇床)を開設したとき、健友会は「無料・低額事業」を届け出て、受理されていました。
 病院でも〇八年から同事業を開始。常務理事の阿部正義さんは「経済的に困難な患者が増えています。国からは抑制する通知が出ていましたが、総会方針を読 んで決意し、理事会に提案しました」。調査をすすめ、県に事業開始を相談、合意を得ました。
 こうして四月から開始しましたが、問題も残っています。本来なら、この事業を行う場合、該当する施設の固定資産税について減免が受けられるはずです。現 に老健施設は減免されています。しかし、酒田市は病院については認めません。「国が決めているから」という理由です。
 阿部さんは言います。「貧困・格差がこんなに広がって、全国で医療を受けられない人が急増しています。無料・低額診療の役割は大きい。それを拡大するの は国の責任でもあります。事業にとりくむ医療機関を支援するのは当然。自腹を切ってやるのでは広がらない」。運動を広げて、解決したいという決意です。

「申請は受理」

 無料・低額診療の「抑制通知」について、小池晃参院議員(日本共産党)が問いただした結果、〇八年一〇月に国は「申請は受理されるべき」と回答しました。
 また、〇八年七月、厚生労働省は「医療機関の未収金問題検討会報告書」の中で「三二七〇病院で一年間に二一九億円もの未収金が発生」しており、その最大 の理由が「患者が医療費を支払うだけの資力がないほど生活が困窮している」と指摘し、さらに対策の一つとして「無料・低額診療も考えられる」としていま す。
 国はこれを真剣に受けとめ、この制度を拡充すべきです。また、世界一高い、日本の患者の窓口負担を見直すべきです。

【無料・低額診療事業】社 会福祉法第二条第三項による「生計困難者のために無料または低額料金で診療などを行う」事業。行うには、定款に定め届け出ることが必要。また、診療費の減 免方法を定めて明示し、SWを配置し、無料の健康相談や生活相談を実施するなど、いくつかの要件がある。また、条件を満たせば、税制上(固定資産税など) の優遇措置を受けられる。

(民医連新聞 第1443号 2009年1月5日)

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