民医連新聞

2009年1月5日

輝く民医連の看護・介護 「いっしょに産声を聞きたい」帝王切開に立ち会えるように 埼玉協同病院 斉藤京子(看護師)

これまで当院では、手術室での帝王切開に夫の立ち会いは禁止でした。しかし「誕生の瞬間を分かち合いたい」「不安だから夫にいてほしい」、夫からも「妻を励ましたい」という要望が増えていました。
 私たちが帝王切開の立ち会いを可能にしたいと考え始めたきっかけは「一〇年以上の不妊治療を経て妊娠した夫妻」との出会いでした。術前訪問で帝王切開が確定し、夫は理解しつつも立ち会いを強く希望していました。
 「手術室で立ち会うこと」には、衛生管理をはじめ、ほかの患者さんへの配慮、医師の承諾、夫の気分が悪くなった時の対応など、多くの問題がありました。 手術室スタッフは「手術室だから立ち会えないと考えるのではなく、立ち会うためにどうすればいいかを検討しよう」と、検討部会を立ち上げました。
 まずはパンフレットなどをつくり、夫に立ち会いの流れを説明、手術室での手洗いや服装を写真付きで示しました。また、夫の気分不快時などに対応する看護師を一人増やすことにしました。
 一方、医師から「家族がいるとやりにくい」「危険では」という声も上がり、一時は断念かとも思いました。そこで帝王切開立ち会い率が八五%になってい る、某産婦人科の方から意見を聞きました。「手術室でも立ち会い出産は可能。私たちは立ち会いを迷っている家族に『いっしょに産声を聞きましょう』と誘っ ているほど」というアドバイスをもらい、努力を続ける決心をしました。
 〇七年九月から一二月の四カ月間で、帝王切開は五二件でした。事前アンケートで立ち会いを希望した人は八〇%、実際に夫が立ち会ったのは三〇件でした。
 立ち会い後のアンケートでは「親になる自覚が持てた。子どもが大きくなったら話したい」「気がすすまなかったが、妻のために立ち会った。だけど、とても 感動した」など、すべての夫が「立ち会ってよかった」と答えました。妻も「夫が手を握り、励ましてくれて安心できた」「一生の思い出になるすばらしい体 験」と感想を残しました。
 このとりくみは、当院の助産師集団の協力があって、はじめて可能になりました。私たちは「一歩立ち止まって、その人のために何ができるのかを考え、一歩 踏み込む看護」を実践できました。また手術室スタッフは、患者さんと関わる時間は短いですが、「看護は関わる時間の長さではなく、質である」ことも再認識 しました。
 これからは「帝王切開術中、夫が妻の手を握り、励ますことができます」と、胸を張ってアピールしたいと思います。
 今後は「夫以外の家族入室も可能にする」「緊急時でも立ち会える」を目標にとりくんでいきたいと思います。

(民医連新聞 第1443号 2009年1月5日)

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