民医連新聞

2002年4月21日

不況・規制緩和ですすむタクシー運転手の長時間・過密労働

いのちと人権まもれ たたかう列島 労働者の健康は

不況・規制緩和ですすむタクシー運転手の長時間・過密労働

安全と健康破壊は表裏一体

 「タクシー会社の健診を実施。受診者124人のうち、7割以上に要治療などの所見がありましたが、二次検診に来たのは2人だけでした」。京都・城南診療所からの報告です。

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 「これが皆同じ会社の運転手さんたちの健診結果なんです」。小畠千鶴子婦長が結果表をテーブルに広げました。放 置できない検査値につけられる赤いチェックがほとんどの票についていました。何かの検査値に、「要再検」の「D」から「要精査」の「E」、「要治療」の 「F」までの判定がついている人が七割超。
 「すでに一つでも治療中の疾患のある人をのぞいても、この数です。一昨年厚生労働省のデータでは有所見率の全国平均が42・7%ですから、信じられないくらい、良くない結果です」と婦長。
 そして二次検診を受診した人はたった2人。小畠婦長は会社を訪問し、事情を聞きました。
 会社では不況の影響で営業収入が激減、運転手1人あたりの水揚げが15~20年前のレベルにまで下がっていました。賃金は多くて手取り15万円程度。地 方から職を求めて就職した人が多く、その薄給から家族への仕送りを捻出し、自分はカップ麺やパンで過ごし、その100円、200円の食事代さえ会社に借り る生活をしている人もいることがわかりました。
 「体が悪いことは本人が一番知っているはずですわ。そやけど、病院行ったら金がかかる。病気がわかって、働けなくなると困るから、病院には行けないんです」という担当の管理者に、返す言葉がなかったといいます。

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 「いつ倒れてもおかしくない」というタクシー労働者の健康実態は特定の会社で起こっていることではありませんで した。京都市内では、ある会社の運転手3人が3カ月連続して倒れるというケースが。2人が亡くなり、残る1人も命を取りとめたものの、病後に無理をおして 働いたため、寝たきりになった、という報告がされています。いずれも脳心疾患です。
 市内Kタクシー社の専務から事情を聞きました。不況に加え、今年2月1日からの道路運送法の規制緩和でタクシー業界には激しい競争がおこっています。経営がふるわず、すでに存続が難しい会社も。
 「1台に2人」の基準で配置していた体制が、いまでは「3人で2台」へと変化。1日20時間の運転を2日続ける人。空港まで朝晩バスの運転手をし、昼間にタクシーを流す人、自営業と兼業する人。
 「世間に失業者が増えても、平均年収327万円という低賃金のタクシー業界には、人が集まってこない。会社も労働者が危険な働き方をしていることを承知で目をつぶっている」といいます。
 また、運転手の収入の減少にあわせるように、タクシー事故(グラフ)も急増。運転手の健康破壊は、タクシーの「安全破壊」と表裏一体です。

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 「いまでも、患者になれない人が多い、これ以上の負担増が強行されれば、どうなるかは目に見えている」。小畠婦長は今回の医療改悪がさらに深刻な事態を招くことを指摘します。「医療改悪を通してはいけません」。(木下直子記者)
 「有事法制をぜったいに通したくないんですけれど、なにか良い方法はありませんか?」…『民医連新聞』四月一一日号を読んだ青年職員から、編集部にこん な電話がかかりました。滋賀・膳所診療所の看護師、上田美津子さん(30)。「日本が戦争する国になるのを、なんとかしてくいとめたい」。この声にまわり の青年職員も立ちあがりました。ジャンボリーや労組の青年を中心に相談し、地域に宣伝に出ることなどを決め、同県連の総会で、緊急に協力を訴えました。

(民医連新聞2002年04月21日/1274号)

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