民医連新聞

2006年5月22日

連載 安全・安心の医療をもとめて(48) 大阪・耳原鳳病院 患者様の転倒の危険すばやく判断、介助に

耳原鳳病院の回復期リハ病棟では、転倒転落の減少をめざし、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)が三つの転倒防止策の効果を検証中です。PTの大楠和之さんの報告です。

 当院の回復期リハ病棟の患者様を対象に、二〇〇五年四月から転倒転落防止対策を実施しました。その後、四カ月間(四月~七月)の転倒転落数と昨年同時期を比較し、とりくみの効果を検証しました。

 三つの対策とは、(1)入院時評価、(2)マーキング、(3)ADL表の作成、です。入院時評価とは、入院初日にPTとOTで患者様のADL(日常生活 動作)と精神面、ベッド周囲の環境の評価を行い、どの程度の見守りが必要かを判断します。

 マーキングは、歩行できる患者様を対象に、杖や歩行器に自立度を高い順番に緑、黄、赤のカードやシールを貼り、どのスタッフが見ても患者さまの自立度が すぐに判別できるようにしました。緑以外のマークの患者様が一人で歩行している場合、気づいたスタッフは、積極的に見守りにつくよう呼びかけました。

 ADL表は、「移乗、移動、排泄」の三項目を「自立、監視、介助」で表し、ベッドサイドに表示し、すぐに確認できるようにしました。

認識不足が明らかに

 四カ月後の転倒転落数を昨年と比較しました。しかし減少せず、昨年と同じ件数という結果でした。

 そこで、差がなかった原因をリハ科で討議しました。原因は、(1)認知症患者様の増加、(2)それに対して、実施した入院時評価が不充分だった、(3) 看護師への情報提供が不足していたこと、です。また病棟スタッフにもアンケートを実施しました。その結果、「マーキングの色を理解している」と答えたス タッフは六五%、「ADL表を確認している」は、四七%しかありませんでした。アンケートからスタッフが、今回のとりくみを充分に認識していなかったこと が明らかになりました。

転倒転落への意識を高め

 結果を受けて、看護師と共同でとりくむための転倒転落グループをつくり、転倒転落数の減少をめざし、改善策を話し合いました。入院時評価には看護師も参 加し、カルテでは伝わりにくい症状を共有することにしました。また、患者様の病識や精神面の評価方法を見直すことにしました。そして、転倒の危険性のある 患者様をすばやく判断し、見守りや介助につくことを徹底しました。

 今回のとりくみでは、結果として転倒転落の減少まですすめることができませんでした。しかし、とりくみを続ける中でスタッフの転倒転落に対する意識は高まってきています。

 もっとマーキングやADL表を活用することができれば、患者様一人ひとりへの注意力を増し、転倒防止の効果が期待できると確信しています。

(民医連新聞 第1380号 2006年5月22日)

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