民医連新聞

2006年5月22日

原爆症集団訴訟9人全員が勝訴!(大阪地裁) 民医連医師団意見書が後押し

5月12日、大阪地方裁判所で画期的な判決が出ました。関西在住の被爆者9人が原爆症の認定を求める集団訴訟で、同地裁は、これまでの厚生労働省 の認定基準を批判し、「全員を原爆症と認定するべき」という判決を出しました。今回の判決は、残る12地裁の原告および被爆者を大きくはげますもの。弁護 団らは、国に控訴しないよう求めています。

医連医師たちの努力が届いた

 午後2時すぎ、大阪地裁の前は、喜びとバンザイの声に包まれました。

 原爆症の認定申請を却下された被爆者170人が申請却下の取り消しと賠償を求めた集団訴訟が、全国12地裁で行われています。5月12日、全国に先駆け て、関西在住の原告9人の判決が大阪地裁でありました。

 判決は、1.5㎞以上の遠距離で被爆した7人、入市被爆(救助や肉親を探して被爆地に入り被爆)した2人の9人全員について「認定基準が機械的すぎ、過 小評価。放射線に起因した発症とみるのが合理的」として、厚生労働省の不認定処分を取り消し、「認定すべき」としました。

 これまで、原爆症認定は、放射線の被ばく線量計算式(DS86)と「原因確率」をもとに、遠距離被爆者や入市被爆者を認めませんでした。しかし今回、原 爆投下直後から被爆者を診てきた肥田舜太郎医師の主張や聞間元医師を委員長とする全日本民医連原爆症認定訴訟支援医師団・被ばく問題委員会の「原爆症認定 に関する医師団意見書」が認められました。

 医師たちは、全国の民医連院所の被爆患者さん約2万人を調査しました。また、あらゆる資料を集めて討議を重ねました。そして、「被爆の影響を過小評価し ている。計算式や原因確率も疫学の誤用」という意見書を出しました。今回、医師や患者さんをささえた職員の努力がようやく届きました。


 

原爆症認定集団訴訟
大阪地裁判決についての声明

2006年5月15日
全日本民医連原爆症認定訴訟支援医師団
全日本民医連被ばく問題委員会

 5月12日、大阪地裁は、遠距離・入市被爆者4人を含む9人の原告全員の原爆症認定申請棄却処分の取り消しを国に命じた画期的な判決を言い渡しました。
 この判決は、現行の認定基準の機械的な適用を完全に否定し、数々の医学文献や科学者の証言、医師意見書のエッセンスを余すことなく取り入れたものであ り、被爆者医療に関わる医師・医療従事者として心から歓迎するものです。
 またこの判決は、これまでの原爆訴訟の勝訴判決と比べて、以下のような際立った特徴があります。

  1. 現行の審査の方針は遠距離被ばく・入市被ばくの過小評価であるとし、残留放射線による低線量被ばく・内部被ばくの影響を明確に認めた判決であること、
  2. 審査の方針の根幹となっている初期放射線に依拠した原因確率(寄与リスク)は、疫学的な一つ の考慮要素に過ぎず、これを個人の起因性判断に機械的に適用することは誤りであるとし、原因確率が小さいからといって直ちに放射線起因性を否定されるべき ではないことを明確に示したこと、
  3. 被爆者の急性症状の評価では、当時の衛生状態やストレスに起因するという長崎松谷訴訟以来の国の主張を完全に否定したこと、
  4. 申請疾病の放射線起因性判断においては、被爆前の生活状況、健康状態、被爆状況、被爆後の行 動経過、活動内容、生活環境、被爆直後に発生した急性症状、さらには被爆後の生活状況、健康状態、疾病の発症経過、病態、申請疾病以外に発生した疾病の内 容等々に注目して総合的に勘案して判断すべきとしていること、などです。

 今回の判決のもう一つの特徴は、申請疾病を理解するにあたって、申請書に記載された疾病の名称に限定され るのではなく、申請書や医師の意見書その他の添付書類の記載内容に示された疾病をも詳細に解析し、被爆者に対する原爆放射線の影響を全体として理解しよう としていることです。
 さらに今回の判決は、被爆後長く被爆者を苦しめた体調不良を重視し、脳血管障害、遅発性白内障、甲状腺機能低下症等の非がん疾患の認定にも大きく道を開くものとなった判決です。
 しかし今回の判決で原爆症認定基準の見直しが確定したわけではありません。
私たちは、被爆者のみなさんとともにこの勝訴の喜びを力にして、全国各地で国が控訴しないように要請する運動を直ちに強めることが重要です。
 全日本民医連原爆症認定訴訟支援医師団および被ばく問題委員会は、引き続き全国各地裁での裁判を支援し、認定行政の改善による被爆者の全面的救済を求め奮闘していく決意です。

(民医連新聞 第1380号 2006年5月22日)

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