民医連新聞

2006年6月5日

連載 安全・安心の医療をもとめて(49) 宮城・泉病院 誤嚥性肺炎パスで重症化を防ぐ

宮城・泉病院では、二〇〇二年八月の電子カルテ全面稼動を機に、クリニカルパス委員会を立ち上げました。院内感染委員会では合同で、誤嚥性肺炎パスを作成し、高齢患者さんの誤嚥性肺炎の重症化を防いでいます。看護師の今泉洋子さんの報告です。

 当院は、脳神経疾患を中心に診療を行っています。入院患者さんには嚥下機能障害も多く、誤嚥性肺炎を起こしがちです。その際は、適切な全身管理と抗菌薬投与が必要です。
 院内感染委員会では、抗菌剤を使用する前の喀痰培養と抗菌薬の選択と使用期間の適正化を奨励してきました。しかし徹底が困難で、誤嚥性肺炎についても医療の標準化はすすみませんでした。
 そこで、クリニカルパス利用率が良いことを利用して、感染委員会で誤嚥性肺炎のパスを作成することにしました。パスの作成には、二つの委員会が協力してあたり、活用を推進しました。

喀痰培養の実施率100%に

 誤嚥性肺炎パスの期間は四日間です。まず喀痰培養し、その後に抗菌薬を選択します。三日目に採血と胸部レントゲン写真を撮影。四日目に、喀痰培養の結果、血液検査、レントゲン写真をもとに、抗菌薬を中止か変更、継続かの判断します。
 喀痰培養した直後の抗菌薬については、日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」を参考にしました。肺炎起こした直後に、ガイドラインにもと づいた抗菌薬を使用することをパスに入れたことで、抗菌薬の適正使用の標準化につながりました。
 パスの作成後、誤嚥性肺炎の症例を調査しました。その結果、パス導入後の二〇〇三年一二月~〇五年五月までに発生した六三例のうち、六〇例が改善か回復 しました。また、パス導入の効果を検証するため、導入前の四〇症例と導入後の六三症例を比較検討しました。
 喀痰培養の実施率は、導入前が三〇%だったのに対し、導入後は一〇〇%実施と改善しました。また、抗菌薬の平均試用期間が八・二日から五・三日、入院期 間三〇日以上が四五%から二九%に短縮しました。

パスで医療の質向上へ

 誤嚥性肺炎パスにより、喀痰培養の実施など医療の標準化もすすみました。抗菌薬の使用量も減少、入院期間の短縮にもつながりました。
 このパスは、電子カルテ上で運用します。どのパソコン端末からもパスを確認できます。これも役立っていると考えています。今回のとりくみで、チーム医療 の理念を積極的に反映させることの重要性を学ぶことができました。委員会などが活性化することも病院全体の医療の質の向上につながると思います。

(民医連新聞 第1382号 2006年6月19日)

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