民医連新聞

2006年7月3日

記者の駆け歩きレポート(4) 山梨・御坂共立歯科診療所 20年続く親子で虫歯予防デー 今では町のお祭りに

 地域の子どもたちを集めた、「親子で虫歯予防デー」が二〇年続いているとのお便りで、六月一〇日、山梨・御坂共立歯科診療所を訪ねました。(川村淳二記者)

 甲府市から東南へ約一〇キロメートル。桃畑と住宅が続く道を行くと、突然、「御坂共立診療所・歯科診療所」の看板が現れました。
 すでに、スタッフがテントを組み立てていました。「親子で虫歯予防デー」は午前診療のあと、一四時からです。「桃畑しかないような所に、子どもが来るの か」と、少し心配に。でも、どこからともなく子どもたちが二〇人ほど集まってきました。なれた様子で、歯科健診カードを受け取り、首にかけます。
 いよいよスタートです。「御坂・八代健康を守る会」の戸沢光夫会長さんと、林武之輔実行委員長の「今日は何の日?」「虫歯ありますか?」とのあいさつ を、子どもたちは並んで聞きます。続いてテントの前に二列に並んで、中に入って虫歯のチェックです。順番に仰向けになって、口を大きく開けました。「おめ でとう!」、虫歯がない子どもには、スタッフから拍手が贈られます。
 健診が終わった子どもは、おみやげをもらい、隣のテントで「ストローコプター」作りと塗り絵です。ストローコプターとは、竹とんぼのようなもの。できあ がったら飛ばして、箱の中に命中すると賞品がもらえます。みんな夢中で飛ばします。職員手作りの「輪投げ」、「ヨーヨーつり」、「スーパーボールすくい」 や、バザーが時間差で開店し、子どもたちを飽きさせません。
 「かき氷」や「流しそうめん」の屋台に、子どもたちが集まります。カップが一杯になるまで、そうめんをすくい続ける子もいます。「竹からつくり、うまく 流れるか何度もテストしました」と、車(くるま)谷(たに)純平事務長は、スタッフの苦労をたたえました。おかげで流しそうめんは大盛況。父母も楽しそう に食べていました。

倒産のあらしの中で建設

 「御坂・八代健康を守る会」は、一九七六年の御坂共立診療所開設当時から、歯科建設運動をしていました。しかし、一九八三年に山梨勤医協が倒産。「歯科 建設はなくなる」と職員が思っているときも、「守る会」は協力資金を集め、「赤字になったら田んぼや畑をいつでも差し出す」覚悟でした。これに励まされた 職員は、「ここに依拠しなければ再建の本当の中身を失う」と、三年におよぶ議論を重ね、一九八六年四月、再建の中、はじめて建設された事業所が御坂共立歯 科診療所です。
 開設当初、子どもの受診が少なく来る子どもは虫歯だらけだったそうです。痛くなってから受診する状態でした。そこで六月四日の「虫歯予防デー」にちなん で、「親子」で来てもらえる催しを始めました。まず、子どもたちの恐怖心を取り除くため、診療室を解放し、機材をさわってもらいました。今では虫歯健診も 町のお祭りの一つです。
 二カ月前から職場会議で企画し、診療の合間に準備を重ねてきました。当日は、みんなでスムーズに運営できるよう協力し合っています。

***

 子どもたちもひと通り遊び終わり、流しそうめんなどを食べ終わったころ、全員で記念写真。最後に、阿部真人所長があいさつしました。
 反省会では、子どもたちの様子が交流され笑いが広がりまず。「虫歯のある子どもが参加しづらいのでは」「9条の会のとりくみにもつなげたい」などの意見も出されました。
 今年は歯科開設二〇年。リニューアルも計画中です。パートを含め一一人という小さな事業所ですが、「地域とともに」の伝統を受け継ぎ、地域に根を下ろしていることを実感した一日でした。

(民医連新聞 第1383号 2006年7月3日)

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