民医連新聞

2006年7月17日

連載 安全・安心の医療をもとめて(50) 高知生協病院 外来の化学療法(点滴)患者様の参加で安全に

 高知生協病院の外来ではケモ(化学療法)チームを立ち上げ、化学療法(抗がん剤の点滴)を受ける患者様に、自宅での体調を記入してもらう シートを導入。患者様の面接もていねいにし、安全性やQOLに気を配っています。そのとりくみからクリニカルパスも導入しました。梶原和看護師長に聞きま した。

 当院では三年ほど前から、外来で化学療法を実施する患者様が増えてきました。主には、がんの切除手術を終えた患者様で、多いときには週に八人、平均では三人です。

 そこで二年前にケモチームを立ち上げました。まずはフローシートをはじめ、個人ファイルの作成にとりくみまし た。メンバーは、外科と内科の看護師各一人に外来の主任看護師を加えた三人です。課題は、化学療法を安全に行うこと、患者様のQOLを保つこと、看護師な ら誰でも担当できるよう情報を整理し、統一した方法にすること、でした。一年前からクリニカルパスにもとりくみ、今のシステムができあがりました。

患者様の自宅での状態も把握

 化学療法は、患者様ごと・疾患ごとに使用薬品も用量も異なります。安全で確実な実施に必要なチェック項目を検討し、シートを更新しました。

 また、患者様のQOLを損なう事態を早めに発見して対処することが必要です。それには患者様の状態を点滴中・その前後はもちろん、自宅にいるときも含めて把握することが大切です。そこで、患者様に自宅での様子を「個人状態記入表」に書き込んで来てもらうようにしました。

 さらに、約一時間以上かかる点滴中に患者様との面談を行います。専用のスペース(部屋)で、担当看護師が様子を 観察しながら、落ちついて話を聴き、「面談記録用紙」に記入します。問題に気づいたときは、カンファレンスにつなぎます。その提起も「ケモチーム」が行い ます。患者様はだんだんに悩みなども話し、素直な表情も出すようになっています。

 これら「面談記録用紙」や各シートは「個人ファイル」にまとめ、カルテと併用しています。

 パスはこれまで二〇人の患者様について実施しました。患者様用のシートを「口で言うから」と書かなかった方は一人でした。

 パス導入により、安全性と患者様の安心感を高めることができたと考えています。患者様の細かい情報もスタッフ間で共有できるようになりました。

 面接は、患者様の精神的な面、病気の受け止めなどが把握できます。問題点をカンファレンスにつなげ、具体的な援助ができるようになりました。

個人状態記入表

日付      
食欲      
吐き気      
食べた量      
吐いた量      
下痢      
体重      
     
しんどさ      
咳や息苦しさ      
腹痛      
めまいやしびれ      
胸痛等 胸の症状      
口内炎      
脱毛      
色素沈着      
視力低下      
嗅覚障害      
その他      

 点滴抜針後の皮膚の赤みや腫れ・痛み等、
異常があればすぐに病院にご連絡ください。

患者様自身が自宅で様子を記入、受診時に持参する

 

【化学療法の手順】

(1)カルテとともに、化学療法用の「個人ファイル」を出す。カルテの内容と「外来化学療法クリニカルパス」、「外来科学療法フローシート」を複数の看護師で照合し、治療法を確認、点滴の混合を行う。
(2)バイタルチェックを行い、「外来化学療法フローシート」に記入。患者様が記入してきた「個人状態記入表」を見て、副作用の有無など、問題点を転記する。
(3)輸液ポンプの設定・接続などを複数の看護師でチェックし、開始する。
(4)点滴中に様子をチェックし、その間に面談を実施し、「面談記録用紙」に記入する。
(5)点滴終了時に再度バイタルチェックを行い、問診を取り、「外来化学療法フローシート」に記入する。
(6)次回の化学療法時まで、自宅で状態を記入してもらう「個人状態記入表」を渡す。

 (民医連新聞 第1384号 2006年7月17日)

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