民医連新聞

2006年7月17日

“改定” 介護保険 現場に何が(2) “レンタル用具とりあげ許さない” 医療者 業者交流

 四月から実施された改定介護保険では、要介護1と要支援で電動ベッドや車イスなどの福祉用具レンタルが大幅に制限されました。このままで は、約三八万台のベッド・車イスがとりあげられる、という推測も―「ベッドでないと起き上がれない」、「車イスがないと病院に行けない」など、利用者さん の悲鳴がケアマネジャーやケースワーカーに寄せられています。大阪・同仁会では、「利用者さんの権利を守るため、医療従事者と福祉用具業者が手を取りあお う」と呼びかけ、意見交換会を開催しました。(横山健記者)

大阪でミニシンポ

 五月二七日、同仁会の介護保険事業部の呼びかけで、福祉用具業者、地域のケアマネジャーやヘルパーなど、約五〇人が集まり、ミニシンポ「これからの『福祉用具貸与』について一緒に考えませんか?」を開催しました。

 「九月までは経過措置があるため、堺市ではまだ大きな動きはありません。しかし、当社だけでも全国で約二〇〇〇人前後が福祉用具の引き上げ対象になるのでは、と推測しています」、そう語るのは、(株)トーカイの福祉用具専門相談員、松本誠さんです。

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 堺市内で介護認定を受けているのは○六年四月で、約三万二三〇○人。そのうち福祉用具をレンタルしているのは八二〇〇人。

 松本さんは、「要介護1や要支援で福祉用具が必要ならば、レンタルを継続することはできます」と事例を紹介しながら説明しました。同社では困難事例をモニタリングしています。

ひき続きレンタルができる基準がある

 要介護1・要支援でも特殊寝台(電動ベッドなど)や車イスをレンタルできる基準があります。(介護保険制度平成一八年四月改正)

 車イスでは、(1)日常的に歩行が困難な者、(2)日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者。

 特殊寝台では、(1)日常的に起きあがりが困難な者、(2)日常的に寝返りが困難な者

にあてはまります。日常生活範囲とは、「病院や買い物など、毎日の生活に必要な移動範囲」を指します。

 しかし、「歩けますか?」という質問に、「歩けます」と答えると、「問題なし」という判定になります。松本さん は、「具体的にどのくらいなら歩けるのか、杖などが必要か、歩くと血圧が高くなるなど、調査員に話してもらうよう、私たちが利用者さんに伝えることが大切 です」と、強調しました。

 最後に松本さんは、「政府は、要介護2まで給付をはずす方向で検討しています。今後も聞き取り調査を行い、困難事例を集め、継続利用できるよう厚生労働省と交渉していきたい」と、語りました。

制度の矛盾正していこう とりくみ今後も

 同仁会・介護保険事業部の越智哲太郎事務長は、「直接、利用者さんに説明しなければならないケアマネジャーが一 番、頭を抱えている。経過措置が過ぎたからと言って、『もうレンタル用具は使えません』と、利用者さんに言えない。『どうせ使えなくなるから』と、あきら めるのではなく、九月まで自信を持って使ってほしい。

 その間に私たちが、利用者さんのQOLを守るため、制度の矛盾を正していこう」と、参加者に訴えました。

 今後もこのようなとりくみを続けていく予定です。

(民医連新聞 第1384号 2006年7月17日)

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