民医連新聞

2009年3月16日

4月改定で軽く判定される!! 介護認定変更は凍結せよ 全日本民医連が厚生労働省に要請

  この4月から要介護認定制度が変えられようとしています。主として、(1)認定調査項目の削減、(2)調査基準の変更、(3)一次判定のロジックを改変、 (4)介護認定審査会の資料を減らす、などです。結果として介護認定が軽くなります。全日本民医連は「要介護認定制度に対する緊急アンケート」を実施し、 認定調査員63人と認定審査員18人の意見をまとめました。それを持って3月2日に厚生労働省と交渉。そこで要望書を提出し「新認定制度の凍結」を強く要 請しました。

判断基準見直しの問題

 今回の介護認定の見直しのポイントは、現在「要介護1」相当の人を「要支援」と「要介護1」に 振り分ける作業をコンピュータで行うことです。現在は、二次判定時に審査員が、いろいろな資料をもとに判断しています。厚労省は「バラツキを抑える、事務 負担の軽減、地域格差の是正」などを理由に実施しようとしていますが、新しい矛盾と混乱をまねくものです。
 今回の制度の見直しで、いっそう「軽度」に判定されるケースが増えることに、現場では危惧を強めています。
 認定調査項目から削られるのは「火の不始末」「暴言・暴行」「飲水」など七項目。これでは認知症が正しく判定できません。
 さらに重大なのは、評価や判断基準が変わる点です。「食事摂取」できず「中心静脈栄養のみ」の場合、現行では「全介助」ですが、「自立(介助なし)」と 判断します。また「座位の保持」は、現行は「端座位で一〇分間の目安」が「座り方は問わず一分間程度」に変わります。状態が変わらなくても「軽度」に判定 されます。
 このように一次判定(コンピュータ)で処理する情報が少なくなるうえ、判定方法(ロジック)はコンピュータが行うというブラックボックスです。
 二次判定(介護認定審査会)では、いままで資料として出されていた「状態像の例」が全面的に廃止されます。重度・軽度変更の指標など、全国的に蓄積され たデータにもとづく「統計指標」も削除されます。一次判定を変更する根拠は「特記事項」「主治医意見書」のみ。全体として、いっそうの「軽度化」がすすみ ます。

「軽度化」がすすむ

 厚労省の一六二六市町村・約三万件の調査では、現行より新方式では、約二割で「軽度」と判定されました。二次判定で変更される率も二八・九%から一八・三%に低下。とくに重度に変更される率が低くなりました。
 民医連が行った緊急アンケートでは、認定調査員は「介護度を低くするための改定としか思えない」「たとえば、経口摂取できない状態の人を『食事介助がい らないから介助なし(自立)』と判断するのには抵抗がある」。ある介護認定審査員も「判断材料がきわめて少ない。この資料では、正確に介護度を判定でき ず、不安を感じる」といいます。

低所得 独居が危険

 状態が変わらないのに、要介護度が下がることは、サービス利用の制限に直結します。「要介護1」の人の場合、下がれば「予防給付への移行」「施設入所対象外」になります。「要支援1」の人がさらに下がれば、介護保険サービスすら受けられなくなります。
 重大なのは、利用料が払えない、家族がいないため、現時点で介助の事実がない場合。できる限り自分自身でやってきたことで、「介助なし(自立)」と判定 される恐れがあるのです。利用前から低所得者と独居者が差別されかねません。
 一方、事業者も要介護度が下がれば基本報酬が下がります。介護報酬は三%引き上げられても「軽度化」で相殺されます。利用者との信頼関係を損なうことも心配です。
 全日本民医連は、厚生労働省に対して、認定制度改悪の「凍結」を強く要請しました。

新認定調査(判断基準)あてはめの1例
80代女性・独居「要介護3」のケース

 軽度の認知症があり、糖尿病などの服薬など、全般に介助が必要。しかし新基準では「薬の服用」「食事摂取」「口腔清掃・洗顔」「整髪」などが勘案されず、「要支援1」まで下がる。

 

(民医連新聞 第1448号 2009年3月16日)

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