民医連新聞

2006年8月7日

“改定” 介護保険 現場に何が(3) 何が変わった?介護認定審査 ――認定委員にきく

 四月の介護保険の改定により、それまで「要介護1」だった人が「要支援1」や「要支援2」と軽度に判定されるようになり、これまで通りサー ビスが利用できない高齢者が続出しています。介護認定審査の何が変わったのか、東京都板橋区の介護認定審査会副会長を務める石川徹医師(東京民医連会長) に聞きました。(横山 健記者)

 板橋区では、以前から「介護認定判定マニュアル」を作成し「公正・公平かつ血の通った人間味ある認定」を目標に しています。石川医師はこのマニュアルづくりに加わりました「認定調査員にも介護者の状況や住居構造なども確認し、具体的に記載していただくよう依頼して いますし、主治医意見書についての講習会も開催し、昨年は三〇〇人の医師が参加しています」。

国のねらいは
「要介護1」→予防給付だった

 認定審査会では一次判定として調査員の調査をもとにコンピュータで判定した「要介護認定等基準時間」により介護 度が提示されます。今回の改定により加わった要支援2は要介護1と同一の基準時間に設定され、ともに「要介護1相当」と表示されます。それを認定審査会 で、国の定めている方法に従って要支援2(予防給付)か要介護1(介護給付)に認定していくしくみになりました。

 「国は当初、要介護1はすべて予防給付にするつもりでした」と石川医師は指摘します。「しかし、それには、現場からの強い反発があり、従来の要介護1の七割程度の方について要支援2への認定を誘導するようなシステムになっています」。

◆  ◆  ◆

 板橋区でも新たな認定の開始後、在宅酸素療法の人や関節リウマチ、認知症、悪性腫瘍などの人で予防給付と判定されるケースが続出してきました。そこで三カ月かけて問題点を検討し、七月にマニュアルを作りなおしました。

 「国の決めたルールが不適切だとしか言いようがないのですが。その中でも利用者の立場でていねいに審査し、振り分けていくしかありません」と石川医師は言います。

具体例にもとづいた指摘を

 そこで重要になるのは、主治医意見書です。予防給付と介護給付を分ける基準は「認知の問題」と「心身の状態の安 定」です。この判断は、意見書の記載内容にかなり左右されます。石川医師は「意見書には、病状などについて、軽度の人ほどていねいに記載する必要がありま す。コンピュータでの判定が予防給付と表示されていても意見書の内容から病状が不安定、あるいは認知に問題ありと考えられれば介護給付に変更することがで きます」と、強調しました。

 八月末から予防給付の人たちの更新時期をむかえます。板橋区では更新時にすべての予防給付認定者について独自の調査を実施する予定です。

 「この間の予防給付の認定が適切なものだったのか、一人ひとりの利用者やケアマネ、地域包括センターの声を集め て検証したい。何事も現場でのたたかいが重要、利用者からの声を行政に示していくこと、そして一つ一つ具体的な改善を追求していくことが大切」と石川医師 は最後に強く訴えました。

(民医連新聞 第1385号 2006年8月7日)

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