民医連新聞

2009年3月16日

国保証取り上げ 31人死亡 全日本民医連が2つの調査結果を発表

 三月三日、全日本民医連は「国保死亡事例調査」と「寒冷地在宅患者への生活影響調査」の結果を記者会見で発表し、NHKなどの取材を受けました。

救える命が救えない

国保死亡事例調査 死因別件数

死因

件数

悪性腫瘍

19

脳血管疾患

 5

静脈瘤破裂

 2

腎不全

 1

肝不全

 1

肺炎

 2

衰弱(低栄養)

 1

31

 湯浅健夫事務局次長が、二つの調査について報告しました。
 国保死亡事例調査は今年で三回目。二〇〇八年一月一日~一二月三一日の対象期間に死亡者が三一人でした。「資格証明書の発行が最悪の事態を招いた。あらためて世に問いたい」と語りました。
 報告したのは一六県。三一事例の職業別では、無職が一一件、非正規雇用が八件、年金生活者が七件、自営業が五件です。勤労世代では、病気になったため失業し、無保険状態となったケースが多く見られました。
 死因は悪性腫瘍が半数以上。多くは救急搬入され、数カ月後には死亡しています。早い段階から受診できていれば助かったと思われるケースがほとんどです。
 国保は、他の健康保険と比べると、収入が低い階層が加入しているにもかかわらず、保険料は高く設定されています。そのため、「払いたくても払えない」人が多数います。
 会見では、国に対する緊急提言も発表しました。短期証や資格書の発行をただちにやめる、窓口負担を二割に下げる、国庫負担をもとの四五%に戻す、失職後 再就職までの期間、誰もが健康保険加入資格を持てる制度を国と企業の責任でつくる、などを求めました。

外より寒い部屋で

 続いて、寒冷地調査の報告。昨年に続き二回目です。北海道、東北六県、北陸四県、長野、山梨の各県連で二〇〇九年一月五~三〇日に、高齢、独居の在宅患者四七九世帯を訪問調査しました。
 生活保護世帯の室温は、住民税課税世帯と比べ平均一・六度低いことが明らかになりました。また室温一五度以下の割合は、住民税課税世帯では二二・四%、 生活保護世帯では三七%と大きく違い、室温にも経済格差が現れました。
 青森の七〇代の女性(住民税非課税世帯)の部屋は、冷蔵庫より寒い〇度。屋外(四度)よりも低く、ストーブはつけずコタツのみ。上着五枚、下も五枚着て 何とかしのいでいます。厚着のため動きにくく、よく転倒。血圧も上が一七〇台と高く、特に寒い日は血圧が上がる状態です。
 ほかにも、「日中でも布団の中で過ごす」「来客時だけ暖房をつける」など、暖房費を削る厳しい生活が明らかになりました。
 逆に、暖房費だけは確保しているケースも。「水道管の凍結を防ぐため消せない」「カゼを引くとよけい支出が増えるのでつける」などです。
 前回は灯油代の高騰による悪影響が主眼でしたが、今回の結果から、暖房費だけでなく、生活全般が厳しくなっている実態が明らかになりました。

*  *

 報告後、記者との質疑の中で、長瀬文雄事務局長は死亡事例について「民医連の患者数は全国の二%。単純計算で推定すると、全国で一五〇〇人が死亡してい るかもしれない」、また湯浅次長は「死亡事例は、受診せず孤独死した人は含まない。困難に陥っている人はもっと多いはずだ」と語り、問題の大きさを訴えま した。

(民医連新聞 第1448号 2009年3月16日)

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