民医連新聞

2009年5月18日

介護は素敵な仕事です 『誇りとやりがい事例集』を作成 埼玉民医連

  介護ウエーブの中で、埼玉民医連の介護職員たちが『誇りとやりがい事例集』をまとめました。介護報酬の連続引き下げで、介護職のなり手が減り、事業が成り 立たない。こんな現状を変えたいと署名も集めながら、「介護はとても素敵な仕事」という自分の思いを書きました。(小林裕子記者)

あなたに出会えて…

 老健みぬまの介護福祉士・森田健一さんは、忘れられない体験を書きました。当時、利用者のA子 さんが気がかりでした。うつ病で閉じこもりがち。A子さんが元ピアノ教師と知った森田さんは、その日から毎日ホールでピアノを弾きました。「無意味かな」 と思いはじめた一カ月目、A子さんは「なぜ上手にならないの?」と声をかけ、翌日から毎日指導してくれました。それ以来、外出や催しにも出るように変化。 亡くなってから家族が見せてくれた日記には「あなたに出会えてよかった。ありがとう」の言葉がありました。
 ほかにも、マフラーを編みながら戦争体験を聞き、高齢者の話の深さや平和を意識した経験、重度の認知症の人と目線や動作などを交わし「言葉がなくても心 は通じる」と確信した体験、「夜勤は介助者と介助される人がつくる芸術作品」と夜間業務を描いた人、「腹減った」ばかり訴える利用者から、言葉の表面でな く意味や要望を知ることを学んだ体験など、三三人の手記はみな、介護の喜びと楽しさを語っています。

介護のプラス面を発信

 「事例集」づくりの発案者の一人が下河雅彦さん(介護福祉士)。「医療生協さいたま」で介護福祉士の確保・育成担当者です。昨年、養成校四〇校を訪問すると九校が募集停止でした。志望する生徒を親や高校の教師が止めるというのです。
 下河さんは考えました。「介護ウエーブで署名運動にとりくんで、マスコミも注目してきた。でも、介護のつらさや収入の低さばかり取り上げる。マイナスイ メージを払拭したい。介護は深くやりがいも責任もある仕事で、民医連は『人権を大切にする介護』を追求してきた。自分たちの仕事をアピールするときで は」。介護職部会で「全員が書こう」と提案しました。
 始めてみると「書きながら泣けてきた」という人もいて、自分の介護観を見つめる機会になり、お互いの思いもわかりました。
 伊東伸晃さん(介護福祉士・埼玉協同病院)は「事例から、書いた人が何を大事にしているか理解できた」。スタッフのサポートやモチベーションの向上に役立てたいと考えています。
 市村聡子さん(介護福祉士・老健みぬま) も、仲間の思いや考えがわかり、 「いっしょに働けて良かった」という喜びがこみ上げてきました。「介護の質は心によるところが大きい」と考える市村さんは「コムスン問題をみると、いま介 護職が声をあげないと、介護がおかしくなってしまう」。コムスン問題は介護の営利化で起きました。

反響呼んだ事例集

 他生協の介護部長が読んで泣きました。秩父生協病院が地域の病院や施設に配布すると、思わぬ人 から「(ウエーブを)盛り上げようよ」と激励されました。組合員さんも「こういう介護をしていたのね。初めてわかった」と注目。養成学校の先生からは「テ キストとして授業に使わせて」と申し出がありました。県との交渉で紹介すると「施策の参考に読ませていただく」との返事でした。
 「現場はたいへんだけど、先輩もがんばっているから安心して来てくれと言いたい」と小河原聡さん(介護福祉士・老健さんとめ)。新人や介護職をめざす若者へのメッセージでもあります。
 介護報酬三%アップについて、介護職員たちは「利用者は限度額を超えては使えず自費が増えてしまう。施設は逆に減収になる恐れもある。次の改定では利用 限度額を上げて、利用者の負担は下げて、介護が保障されるようにしてほしい」ときっぱり。運動を続けます。

(民医連新聞 第1452号 2009年5月18日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ