民医連新聞

2006年8月21日

“改定”介護保険 現場に何が(4) 低所得対策足りない~居住費・食費負担で施設退所

 居住費・食費負担の保険外し(昨年一〇月実施)で、施設を退所した人はどのくらいか? 全国集計がありません。保団連や社保協の調査では、軽減制度を受けられない層に集中し、すでに一一〇〇人以上に。軽減策の強化が求められています。

家族介護に逆戻り

 「影響調査を実施した八府県*で、負担増による退所者が五四五人」と保団連は発表しました(七月末)。退所者のうち、五三・八%が「利用料負担が第四段階」であり、「家族と同居」の世帯が多数でした。
 この調査は八府県が自ら実施したもの。収集した保団連の金指栄一さんは、次のように分析します。「利用料負担の第四段階とは市町村民税が世帯で課税の 人。その中に、高齢者本人は非課税の世帯も含まれるが、負担額の軽減措置がないため、その世帯から退所が出ていると推定できる。これは保団連の別の調査で も裏付けられる」。
 行き先は自宅がほぼ半数。家族介護に逆戻りしているのです。
 保団連は、厚労省が「低所得者には十分配慮する」との言明を守り、三点を緊急に実施するよう求めています。(1)住民税本人非課税者に軽減措置をとるこ と。(2)低所得者対策を十分にとること。(3)居住費・食費を保険給付に戻すこと。

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「利用料第4段階」から多数

 同様の結果は社保協でも。
 群馬県社保協が調査した老健一二、特養二三施設からの回答によれば、経済的理由で退所した人は六施設・一六人。全員が「利用料第四段階」で、行き先は一 一人(六九%)が自宅。また「この改定で大変になった」と答えた人のうち「家族と同居」が六四%。一〇月以降の利用料滞納者は一三施設・三〇人でした。
 茨城県社保協は六六カ所から回答を得ました(全施設数は三一一)。退所者は一二施設・三四人で、老健施設で目立ちました。記載のあった二二人中、一八人 が「利用料第四段階」で、九人が自宅へ。また「この改定で大変になった」と答えた人のうち「家族と同居」が四〇%。利用料の滞納者がいると答えた施設は二 一カ所、三〇人でした。
 茨城県社保協は、県にこの結果を示し、県としても調査し対策をとるよう要請しました。
 新田幸次さん(茨城民医連事務局長)は「その後、県は調査したようだ。結果をもとに対策に生かすべきだ」と言います。
 福井民医連は、五~六月加盟事業所の利用者を対象に調査・記者会見しました(写真)。「利用料が高くなった」「保険料が高い」と答えた人が半数近くでし た。老健退所は一人で、「利用料第四段階」。老健あじさいの佐野誠さんは「家族も負担しきれなくなったのが実情だ。この人は帰宅直後に転倒して入院した」 と、支援策の必要性を訴えます。
 中央社保協が集計した三五県三市の調査では退所者は一一〇〇人を超えました。今年、税控除制度の改悪で課税世帯が増えたこと、一〇月から長期入院の居住 費・食費が保険から外れることも、問題を深刻にします。
*宮城、山形、長野、埼玉、三重、京都、島根、岡山

(民医連新聞 第1386号 2006年8月21日)

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