民医連新聞

2006年9月4日

地域で学んで語りあった 医療系学生・夏の企画

 8月…医系学生たちが学び、交流する企画がめじろ押しでした。医学生、歯学生、看護学生、薬学生、それぞれどんなとりくみがあったでしょうか。
 ご紹介します。

医学生のつどい
“医療は誰のモノ?”

 八月一八~二〇日、「第二七回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい」が、熊本・阿蘇で行われました。学生一五八人を含む四〇八人が集まりました。
 今年のテーマは「『医療観』今求められるもの~あなたにとって医療とは~」。医療が必要な人や医療者にとって、情勢が厳しい中、「自分たちがどんな立場 で医療を行うか、そもそも医療は誰のものか、『医療観を深める』とは?」を、あらためて考えよう、というねらいです。
 一日目は、全日本民医連の藤末衛副会長の講演「格差社会に立ち向かう民医連」。兵庫で医師として働いてきた藤末医師は、阪神・淡路大震災での民医連の救 援活動の経験を語り、地域から学ぶ民医連の姿を浮き彫りにしました。
 また、命に格差が生まれている実態を紹介、社会保障の意味を問いました。
 二日目は、水俣病、ハンセン病、慢性二硫化炭素中毒症の三つのフィールドワーク。患者や回復者と懇談、治療にあたってきた医師や支援者の思いもききまし た。患者のおかれている状況を知り、社会に目を向けることが「患者さん中心の医療」に欠かせないことを学びました。
 最終日は、それぞれの奨学生活動を発表し、活動上の悩みなども含めて交流。
 参加者アピールでは、「今回学んだことを地元に帰って、まわりに語ること、患者の立場に立ったより良い医療実践を仲間たちと目指そう」と、呼びかけました。

看学生ゼミナール

 看護学生の交流と学習、民医連への理解を深めようという目的の「看護学生ゼミナール」は今年八月、全ての地協で行われました。全国DANSの内容を引き継ぎ、地協ごとで開催するようになって四年目の今年は、全国あわせて三九八人の看護学生が参加しています。
 各地協の地域性を活かしたフィールド企画や、「看護の輝き」について先輩看護師から学び討論するなど、工夫を凝らした学習企画が満載。運動会やキャンプファイヤーなど、交流もおおいに楽しみました。

▽近畿…第四回ENS(Egg Nurse Step→B~万歳 看祭・彩・栽…再!~)
を、九~一〇日に兵庫県で。一〇五人が参加。「看護の輝き」をテーマに教育問題や看護師像、コミュニケーションなどあらゆる角度から学んだ各県からの発 表。学習講演は、阪神淡路大震災での救援経験でした。

▽中国・四国…一九~二〇日、第三回中国・四国 DANSを徳島で。八〇人が参加、「Messenger~伝える・つなげる・平和への架け橋☆~」をテーマに平和・人権について学びました。メイン企画は 賀川豊彦記念館、ドイツ館の見学です。生協の設立者・賀川豊彦の生い立ちや反戦思想、また、第一次世界大戦で捕虜になったドイツ兵士を、人間として接した 板東俘慮収容所について学びました。ここは映画「バルトの楽園」の舞台でもあり、ロケ村も見学しました。

▽九州・沖縄…第四回JEWL(Join  Everyone Everything Wrap Learn)を一〇~一一日、鹿児島県で「人権と看護」をテーマに行いました。七〇人が参加。講演は 在日二世のパク キョンナム(朴 慶南)さんの「命さえ 忘れなきゃ」。県連ごとに学習発表も行いました。

▽東海・北陸…今年が初開催、一八~一九日、福井県 に八六人が集合。イメージを膨らませようと、他地協DANSにも職員・学生が参加し準備しました。テーマは「幸せに生きるとは?~命について考えよ う~」。講演は、健和会の宮崎和加子さんの「その人らしく幸せに生きること・民医連看護の歴史から」。

▽関東甲信越…五~六日、第一八回Nurs Egg Festival(NEF)を群馬県で。「群馬うるるん滞在記~看護学生がNEFで出会った~2006無関心からの卒業の旅」をスローガンに二二三人が参加。三上満さんの講演で「憲法9条」を学びました。

東北…T6ENC(東北6県・看護学生と仲間たちの集い)を一〇~一一日、山形県で。六八人が参加。「生命の尊さ『看護と平和』~看護の歴史から考えよう~」の学習講演のほか、ビーチバレー、心肺蘇生、注射、血圧、障害者体験の体験学習を行いました。

歯学生のつどい
患者の気持ち、わかるには?

 第8回歯学生のつどいが8月19~20日、東京で行われました。21人の学生と職員あわせて34人が参加。テーマは「ひとの気持ちがわかるひとになる」。
 講演は、東北大学歯科部の岩倉政城助教授。臨床現場の写真~互いの口に指を入れる患者と歯科医師、歯科医師の歯を磨く患者、白衣もマスクもなしの集団健 診~をいくつかみせました。従来の歯科医師からは想像できない姿です。
 意思疎通の難しい患者にも、歯科医師の気配を消し、信頼を得て治療を可能にしています。
 そして岩倉氏は「人の心の分かる医師」に必要な要素についてふれました。人間がどのように「信頼」や「情動調律」(共感などの基になる)を得てゆくか、 発達学的な視点から解説。心理学や精神分析の技法ではなく、他者の尊厳だと語りました。
 ワークショップでは、講演の感想や今回のテーマについて、話しあいました。「若い歯科医師としてレベルアップを目指して」「真の患者中心の医療に向け て、いま私たちができること」「愛する気持ちが治療の素」など、率直な意見や悩みを交流しました。

薬学生
夏の学校

薬学夏の学校in九州

 八月二六~二七日に第一三回薬学夏の学校in九州会場を行いました。「水俣病を考える」をテーマに熊本県水俣市で開き、九州各県から、奨学生やつながり学生、若い薬剤師、薬学生一八人含む五六人が参加。
 フィールドワークや、水俣病不知火患者会事務局長・瀧本忠氏の講演を聴き、いまも水俣病に苦しむ人びとがいること、埋め立てられたメチル水銀を含むヘド ロが流出する可能性があること、続いている裁判のことを知りました。「水俣病が過去の公害ではないと知った」という感想が多くありました。
 また、薬害C型肝炎について、米の山病院の猿渡圭一郎薬剤科長から、臨床の薬物動態について崇城大学薬学部の山崎啓之助教授が講演。「薬害は防げるとい う言葉が心に残った」「目標が持てた」などの感想が。
 今回は熊本の奨学生も現地実行委員に入りました。当日は水俣病のプレゼンテーションを担当し、「事前学習や多くの人の前で発表するいい機会でした」と話 しました。今までになく学生の参加が多く、盛り上がりました。(坊村香代子、菊陽病院・薬剤師)

(民医連新聞 第1387号 2006年9月4日)

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