民医連新聞

2006年9月4日

地域のこと放っておけない 一職場一事例運動で 助けあい広げたい 困難事例の検討から ヘルスコープおおさか

 「地域で住民や患者さんの身に何が起きているのか? 職場から集めた困難事例をみんなで共有しよう」。ヘルスコープおおさかは八月三日、 「第一回困難事例検討会」を開催し、約八〇人が参加しました。独居老人、孤独死、高い国保料、無保険などの問題に関わり、解決に奔走した職員・組合員の生 なましい報告に「もっと地域と結びつかなくては」の思いがあふれていました。(小林裕子記者)

孤独死ふせぎたい

 「最期は、訪問看護師とヘルパーが交替で見守り、泊まり込んだ師長に看取られ、朝の三時に亡くなりました」。認 知症で誤嚥性肺炎を繰り返したAさん(81)の一人暮らしを、七つの事業所が連携してささえ、密葬と家の片付けを終えました。Aさんとは、生き別れの家族 を探し、花見に誘ったり、ヘルパーや学生が実習させてもらい、心を通わせた七年。語りながら、西由美子さん(なかはまヘルパーST)は涙ぐみました。
 一方、市営住宅で孤独死した七〇代の女性について市川健一さん(組合員活動部)が報告。「サマー増資」のお願いで組合員Bさんを訪ねると、事件にショッ クを受けていました。その女性は時どき声をかけるBさんのほか誰とも話さず、引きこもり、死後数日たって異臭で発見されたのです。三六二世帯の団地の四 六%が組合員で、機関誌手配り率は一〇〇%。高齢者が多い中、生協支部は奮闘しています。Bさんは何度も女性に加入をすすめようとしましたが、話が通じず あきらめました。「もし組合員だったら?」との悔いが残ります。
 市川さんがこの団地の状況を調べると、孤独死は何件もあり、女性の部屋では五年前にも。町会も高齢化し運営が難しくなっています。「厳しい状況がすすめ ばまた起きる。地域に助けあい・見守りのネットが絶対に必要。組合員さんと考えていきたい」と報告しました。

保険証がない、家がない

 国保料は大阪市でも大幅に上がり、区役所には苦情が殺到しました。社保協で七月にとりくんだ減免の集団申請と分 納相談について、藤永豊和さん(組合員活動部)と支部運営委員の石田淑(とし)子さんが報告。「国保料の分納」とは、支払いできる額を示して話し合い、保 険証を発行させる方法です。「組合員さんと学習し、交渉することが大切。払えない、と勇気を出して言わなければ生活は守れない」。二人の言葉が印象的でし た。

 建築現場の寮にいた男性(59)が急性心筋梗塞を発症。寮を追い出され、蓄えも収入もなく無保険でした。生活保 護を申請し、アパートに落ちつくまで、あかがわ生協診療所とコープおおさか病院の医師・看護師・SWなどが関わりました。同じ建設会社から同様のケースは 四件目。中学を出て、四〇年間あちこちの土木現場で働き、寮と食事代を引かれると月収は一〇万円ほど。病気はガマン、悪化してからの受診でした。「保険が なくてもまず診療、社会保障の運動をすることが民医連・医療生協の値打ち」と報告者らはまとめました。

介護困難も多く

 これら四つの事例は、「一職場一事例運動」に応え、ほぼ全職場が寄せた五〇の事例集から実行委員会が選びました。高木由美さん(外来看護主任)など五人の実行委員は、一カ月ほどで集会を準備、学習会もして臨みました。
 事例集を開くと「介護サービスに関わる事例」が目立ちます。要介護1から要支援となり「デイケアが制限され落ちこんだ」「電動ベッドが借りられない」 「ヘルパー時間が不足」など…。「区分変更を申請、訪問調査にケアマネが同席」など対応しても最終的に「自費サービス」を選択せざるを得ない事例も…。
 介護事業部の小玉滋さんは、大阪市で起きている問題点を指摘します。「統合失調症、認知症で予防介護に回された人がいる。市に聞くと、ベテランの認定調 査員を外し、障害者担当に回したという。包括支援センターも少ない」。
 ケアマネは、膨大に増えた事務と格闘、利用者の要望に必死に対応しています。介護が困難な人は生活全般の困難を抱えてもいます。小玉さんは「こうした状 況を職員・組合員と共有したい」と考えていました。法人が会を開催したのはタイムリーでした。

地域に出よう

 池田憲専務は「弱い人も含めて社会で協同するのが人間。地域で起きていることを検証し、住民と協力して対策を取っていくのは、生協や民医連の社会的な役目。地域に出よう」と呼びかけました。
 小玉さんも「行政に対して制度改善を求めながら、お互いが助け合う場をつくりたい。地域の連携を点から線へ、そして面へ。情勢は厳しいが、嵐は組織を鍛 える。今に見てろと言いたい」と闘志を燃やします。

(民医連新聞 第1387号 2006年9月4日)

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