民医連新聞

2009年6月15日

輝かそう生存権 憲法25条(1) 離職者に「医療費助成」 400万円を予算化 石川県金沢市

 新連載では「いのちを守る」各地のとりくみや情報を紹介します。普及したい制度、すすめている運動などを新聞編集部へお寄せください。

せめて医療費は負担なく

 金沢市では四月から「離職者の医療費助成」を開始しました。市内在住で、昨年一〇月以降に「事 業主の都合」で離職した本人を含む世帯を対象に、通院・入院の保険診療の自己負担分を助成するもの。同市には、生活保護基準に当てはまらない低所得の世帯 に対する援護制度の一つとして「療養援護」があります。これを離職世帯にも広げ、離職者の収入をゼロと認定し、世帯収入が生活保護基準の一・二倍未満の世 帯に対して適用しています。
 五月までの利用者は二世帯。同市の担当者によると「派遣切りなどで困っている世帯に、せめて医療費の支援を」という支援策です。しかし、実際には利用で きない世帯も。離職票がもらえず「事業主の都合」を確認できない人の場合です。「雇用」をめぐる予想外の厳しさがうかがえます。同市は〇九年度、四〇〇万 円の予算を組んでいます。

県社保協に相談あい次ぐ『相談ハンドブック』普及

 石川県の場合、職や住居を失った人の多くが金沢市に集まってきます。県社会保障推進協議会には、生活困窮の相談が増加。今年一月から、二〇数人の生活保護申請に同行し、支援しました。
 同会はいま『暮らしといのちと笑顔を守る相談活動ハンドブック』を普及し、労働組合や民医連、新日本婦人の会などに「相談員を増やしてほしい」と、活用 を呼びかけています。サラ金被害者の相談に携わる会や司法書士などの「相談会」でも活用されています。
 事務局長の寺越博之さんは「相談者の話を聴くと、泣きたくなるほどの実態だ」と話します。
 相談者の多くは日雇いの土建業の人。仕事がなくなって困窮しています。六畳一間に四人で生活し、病気か障害をもちながら仕事を続け「生きているのが不思 議」と思えるような人たち。ある人は左眼が見えず、生活保護を取って受診したら右眼も網膜剥離でした。心臓バイパス術後に定職を失い、日雇いになった人も います。「弱い人から不況の打撃を受けている構図」と寺越さん。

保護担当者「暴言」の裏…

 金沢市の生活保護申請は三〇%増。派遣村などのたたかいで市の対応が変化し、住居がなくても申請を受理するようになりました。しかし、保護開始までに一カ月はかかります。市のケースワーカーも手いっぱいなのです。
 厚生労働省の基準では、一人当たりの担当件数は八〇件ですが、同市の場合は九五件にも。深夜まで働き疲れ果てたケースワーカーが、申請者を罵倒したり、暴言を吐くなどの事態も起きています。
 「そういう職員だけを責めても解決しない。国が社会保障費削減を止め、自治体を指導しないと」。寺越さんが問題にするのは国の姿勢です。(小林裕子記者)

(民医連新聞 第1454号 2009年6月15日)

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