憲法を守ろう

2009年7月20日

改憲派を押し返す 平和・反貧困の運動を 総選挙で政治変えよう 一橋大学教授 渡辺治さん

 憲法九条を守って、平和な日本と世界の実現をめざすのか、九条を改悪して海外での武器使用に道を開くのか―。総選挙を前に、大き な争点となっています。六月六日に開かれた憲法改悪反対共同センター全国交流集会での渡辺治さん(一橋大学教授)の講演を紹介します。(丸山聡子記者)

 「海賊対策には自衛隊を出したほうがいい」「北朝鮮が核実験するのだから、自衛隊が必要」という声を盛り上げて、改憲派が攻勢を強めています。いま、重大な局面です。麻生政権がとる新たな戦略を見極めて、改憲反対の運動を前進させることが必要です。

解釈改憲の策動

 一つ目は、海賊、北朝鮮を口実に、9条をいじらずに立法で自衛隊の海外派兵を強行し、9条に穴 をあけようという戦略です。自衛隊を国家の承認なしに派兵できるようにたくらんだ海外派兵恒久法には、国民は納得しませんでした。が、海賊新法なら受け入 れやすい。北朝鮮の核実験を利用して貨物検査や集団的自衛権を認めさせようという策動も強くなっています。
 大事なのは、海賊問題や北朝鮮の核実験・ミサイル問題を利用した解釈改憲の策動について機敏に対処すること。同時に、「海賊をなくすには九条に基づいたどんな活動が必要か」を学習し、宣伝することです。

明文改憲の動き

 二つ目に、来年五月に施行の「日本国憲法の改正手続に関する法律」(改憲手続法)をテコに安倍政権で挫折した明文改憲の動きを巻き返そうという戦略です。第一歩が衆院で強行した憲法審査会の始動です。
手続法には、改憲案を提案したら絶対に通すための仕組みが盛り込まれました。教師や公務員の運動を抑圧する。そのうえで有料広告を解禁し企業などをスポン サーに改憲賛成の広告を流します。最低投票率も設定せず、少数の賛成で可決できるようにするなど、改憲派に有利な仕組みです。
 一方で、反対運動を反映し、手続法にはしばりもあります。附則、付帯決議に決められた以下の点は大いに使う必要があります。国民投票の年齢を一八歳にし たことで法令の整備が義務づけられています。公務員の国民投票運動を自由にする方向での法制整備も必要です。公務員の地位利用禁止規定や、最低投票率制度 を検討することが附帯決議で確認されています。
 形式的に改憲手続法が施行されても、私たちの運動によって実質的には始動させないことが可能です。

揺れ動く民主党

 三つ目の戦略は、民主党をふたたび改憲の仲間に引きこむことです。自公だけでは改憲に必要な三分の二はとれません。改憲派の作る新憲法制定議員同盟の顧問に鳩山由紀夫氏を就任させましたが、鳩山氏が民主党代表に就任し明文改憲に「やる気満々」です。
 しかし、民主党は総選挙を前に改憲を隠したい。総選挙が終わるまで改憲問題を出せない。問題は総選挙のあとです。単独政権ができた場合、民主党から改憲 案を出す危険もあります。でも、私たちの運動しだいで民主党の手をしばることができます。

憲法闘争大きく

 二〇〇四年の自衛隊のイラク派兵直後に、改憲の策動は強まりました。派兵しても、九条を改悪し なければ自衛隊の武力行使はできないからです。同じ年、九条の会と憲法改悪反対共同センターが作られました。九条の会は毎年二〇〇〇、三〇〇〇、一〇〇 〇、一〇〇〇と増えました。読売新聞の調査では、九条の会ができる直前は、改憲賛成六五%、反対は二二・七%でしたが、二〇〇八年には賛成派と反対派が逆 転しました。ところがそれから一年。今年一月には、改憲賛成五一・六%、反対三六・二%になりました。
 九条の会は現在七四〇〇。しかしこの一年、伸びが落ちています。私たちに一服気分があるのではないでしょうか。海賊などを利用した改憲派の攻勢も効いています。それが改憲派の巻き返しを許しています。
 九条の会は、「九条の改憲反対」という一致点で活動しています。他方、共同センターは、改憲の動きに機敏に対処し行動する役割を担っています。九条の会 は政党政派を超えた広がりを追求する、共同センターは機を失せず機敏な運動を広げる、車の両輪として、たたかいを有機的に大きくすることが必要です。

反貧困の運動と

 反貧困と反構造改革のたたかいも広がっています。二五条を具体化し、「健康で文化的な生活」を保障するためには、「派遣法改正」「後期高齢者医療制度廃止」など立法の力が必要です。そのために不可欠なのが政治を変えることです。
 第一歩が「派遣村」でした。労働運動のナショナルセンターが一致してとりくみ、市民運動と連携した新しい試みが政治にも影響を与えました。九条改悪反対 のたたかいと同時に、二五条を具体化する運動を大きくすることが重要です。

総選挙がカギ

 総選挙が間近です。改憲、構造改革にストップをかけるためには、自公政権を倒すことが不可欠です。問題はどういう力で自公を倒すか、です。
 マスコミは「政権交代」でよくなるような宣伝をしていますが、民主党だけが伸びて単独政権をとった場合、改憲、構造改革を止めることはできません。おま けに八〇議席の比例定数削減をやるでしょう。改憲反対の中心である共産党や社民党をつぶして保守二大政党を作るためです。
 しかし、国民の反構造改革、反改憲の声が選挙に結集し、共産党など反構造改革、反改憲の党が民主党とともに議席を伸ばせば、事態は変わります。民主党は 単独過半数をとれず、社民党、国民新党と連立協議に入るでしょうが、共産党の主張も無視できません。共産党が一五議席以上をとれば、改憲、消費税増税、議 員定数削減で歯止めになるだけでなく立法にも影響を与えます。
 民主、自民どちらも単独過半数をとれない場合、財界の要望に応じて、改憲、消費税、定数削減をねらう大連立を組む危険もあります。しかし、国民の大きな批判を受けるでしょう。
 政治を変える大きなチャンスです。自公政権を倒し、改憲を阻み、反貧困、反構造改革の運動で有利な地歩を築くことは可能です。ともにがんばりましょう。

(民医連新聞 第1456号 2009年7月20日)

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