民医連新聞

2009年7月20日

フォーカス 私たちの実践 口腔乾燥に効く唾液分泌訓練法 (宮城・長町病院) 唾液腺マッサージ毎日2分 口腔ケアと組み合わせて効果

 高齢者の口腔の乾燥に「唾液分泌訓練法」が効果のあることを、宮城・長町病院の曳地良美さん(看護師)が第九回看護介護活動研究交流集会で紹介しました。

 入院中の寝たきり患者のほとんどに、口腔内の乾燥がみられます。当院では、その対策として、口 腔ケアを行い、ワセリンを使用して口腔内の湿潤を保つ方法をとっています。また、入院時に歯科医から歯科チェックを受け、必要なときに歯科往診が受けられ ます。それでも、口腔内の乾燥状態がなかなか改善しない人がいます。

寝たきり患者の唾液増やす

 そこで調べてみると、「唾液分泌訓練法」という方法があり、口腔内乾燥に効果があると知りまし た。これは人間に備わる唾液の自浄作用を利用する方法で、日本歯科大学附属病院の口腔介護リハビリセンターが発表しています。唾液の分泌を促進するため に、マッサージを行います(下図)。
 これを病棟で三人の患者に実施したところ、口腔乾燥の改善がみられました(研究期間は二〇〇七年八月六~一九日)。
 協力を得た三人の患者は寝たきりで食事が摂れず、IVHでの栄養管理です(表)。咀嚼(そしゃく)運動と活動性の低下が唾液量を減らし、口腔乾燥の原因と考えられました。

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3人ともに効果が

 最初の一週間は、三人に対し毎日、口腔ケアの後に唾液分泌訓練を二分間実施しました。そして、口腔ケアをする前と、唾液分泌訓練を行った五分後に、口腔内を視診し、唾液分泌測定器で唾液量を測定しました。
 次の一週間(二週目)は唾液分泌訓練を行わず、口腔ケアの前と後に、視診と唾液量の測定を行いました。
 その結果、三人ともに、訓練を行った一週目も、訓練を行わなかった二週目も唾液量が増え、増え方は、訓練を行った一週目が多くなりました。訓練しなかった二週目も増えたのは口腔ケアの効果と考えられます。
 また二人の患者は、訓練をした一週目では唾液量が正常値になりました。一人は唾液量は増えましたが、正常値にはなりませんでした。これは訓練前の唾液量がかなり少なかったことも理由です。

発語での顎の動きも大切

 そこで、訓練後に正常値になったAさん、Bさんと、ならなかったCさんの違いを検討しました。
 AさんとBさんは顎の上下運動ができており、発語がしっかりとできます。一方、Cさんは覚醒している時間が少なく、発語も弱く、言葉が聞き取りにくい状 態でした。また、開口呼吸をしており口腔内の乾燥状態が重度でした。こうした差から、発語にともなう顎の上下顎運動も唾液分泌腺を刺激し、唾液の分泌を増 やしていると考えられました。
 以上のことから、唾液分泌訓練法の実施は、寝たきり患者の口腔乾燥の改善に効果があることがわかりました。また、覚醒し言葉を話すことは唾液分泌の刺激になり、口腔ケアと組み合わせると効果が増すこともわかりました。

(民医連新聞 第1456号 2009年7月20日)

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