民医連新聞

2006年10月2日

記者の駆け歩きレポート(6) 山梨・巨摩共立病院 デイサービス いきやり やすらぎと笑顔を運ぶドッグセラピー

 デイケアのプログラムにアニマルセラピーを取り入れていると聞き、巨摩共立病院のデイサービス「いきやり」を訪ねました。ラブラドール・レトリバーからダックスフントまで犬種もさまざまな五頭の犬たちが、仕事着を着て臨みました。
(横山 健記者)

 デイサービス「いきやり」とデイケア「ももその」の利用者さん、療養病棟の患者さんの約五〇人が集まりました。犬たちは廊下で少し緊張した面持ちで出番を待ちます。
 最初は、犬たちの模範演技です。順番に登場し、「脚側行進(横について歩く)」や「停座(「座る」)」、「招呼(「呼んで来る」)」などを披露しました。
 利用者さんたちと犬たちのかたい雰囲気が解けたところで、ふれあいタイム。少し緊張していた利用者さんも、かわいい犬たちに自然と顔がほころびました。 「昔、家で犬を飼っていた。戦争中は部隊で犬を連れていて世話をしていた」、「かわいいけど、おっかなくて触れない」など、会話がはずみました。約四〇分 間、利用者さんたちは犬たちと楽しい時間を過ごしました。

人にはない癒し

 無償で協力してくれているのは、NPO法人・山梨セラピードッグクラブ(YTDC)。理事長の中村幹さんは、訓 練士として四〇年のキャリアを持つベテラントレーナーです。ドッグセラピーについて、「いきなりさわったり、長時間行なうことは、人にも犬にも負担になり ます。適度な人と犬との『間(時間・距離感)』を持つことが大切です」と説明しました。
 最初の模範演技で利用者さんに犬に慣れてもらう「間」をつくり、「かしこい、怖くない」と安心感をもってもらうのだそうです。犬にとっても会場に慣れる ための「間」になるそうです。「芸をするのではなく、癒しと元気を与える仕事をする犬たちです。だから目がキラキラしてるでしょ」と、中村さんはがんばっ た犬たちをほめました。
 ドッグセラピーについて横内泰世看護師長は、「利用者さんに楽しく喜ばれるプログラムを検討していた時、スタッフにYTDCの会員がいて、話をきいたの がきっかけです」と話しました。しかし、盲導犬のような「補助犬」ではないセラピー犬の受け入れには、衛生面や管理面などの心配が出されました。犬たちは 病気などの検査をかかさず、前日から排便や抜け毛に注意して本番に臨みます。そのことを管理部に説明し、実際に見学にも行きました。デイ送迎用の出入り口 を使用し、ほかの患者様に出会わないようにしました。
 ドッグセラピーについて「かわいいだけではありません。昔から人類のパートナーであり、犬とのふれあいは不安の軽減など、やすらぎを与えてくれ、人間に はない癒し効果があります。認知症のある利用者さんには、昔を思い出す『回想療法』の効果もあります」と横内さん。
 当然、犬が苦手な利用者さんもいます。入所前に確認し、無理強いはせず別のプログラムを用意します。「利用者さんも笑顔があふれ、家族からも好評です。 今後も楽しんでもらえる質の高いサービスを提供していきたい」と語りました。

(民医連新聞 第1389号 2006年10月2日)

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