民医連新聞

2006年10月2日

フォーカス医療・福祉の実践(7) 医科歯科連携のNST口腔ケアで栄養改善 岡山・玉島歯科診療所

 日本静脈経腸栄養学会に登録されたNST稼動施設が七〇〇近くになっています。その中に医科と歯科が連携して、NSTを充実させている事業 所があります。倉敷医療生協の玉島協同病院と隣接する玉島歯科診療所がその一つ。歯科医師と衛生士が口腔ケアに関わることで、栄養改善につなげています。 歯科医師、滝本博さんの報告です。

 玉島歯科診療所は二〇〇四年一二月から始まった玉島協同病院のNSTに当初から参加しています。週一回のNST会議と回診には、歯科医師と歯科衛生士が参加し、口腔機能の観点から論議に加わっています。
 NSTでは毎回一~二人の患者さんについて話し合います。〇六年八月末までに栄養評価と改善策を検討した患者さんは七六人。男性が三五人、女性が四一 人、平均年齢は八四・五歳。栄養摂取経路は、経口四九人、経腸二二人、静脈一一人(併用あり)。歯科から事前に病棟に出向き(施設や在宅の場合もあり)対 象患者さんの簡易口腔アセスメントを行い、NSTに提出しています。
shinbun_1389_01  口腔アセスメントの内容は、残存歯牙の状態と本数、口腔粘膜や舌の健康状態、口臭の有無、簡易口腔水分計(写真1)を使った口腔乾燥度の測定、義歯の安定 度や咀嚼(そしゃく)機能の判定、義歯の作製や修理の必要性と可能性の判断、などです。また、玉島歯科受診歴のある患者さんは、歯科治療歴などを合わせて 報告します。〇五年五月以降は、対象患者さんすべての口腔アセスメントを行っています。
 対象患者さんを咬合(こうごう)(歯牙残存)分類で見ると、自分の歯で充分な咀嚼ができる状態の人は約一割のみ(アイヒナー分類A1~A3)で、残りの 約九割が充分な咀嚼をするには義歯が必要な人です。また約六割が無歯顎(むしがく)・全歯牙喪失(ぜんしがそうしつ)(C3)です。要義歯患者の約半数 は、義歯使用上の問題をかかえ、うまく噛めない人でした。
 病棟でも以前から口腔ケアをしており、口臭や舌苔(ぜったい)は軽微です。しかし、口の廃用がすすむと口腔乾燥が強く出ていました。NSTでは、歯科治 療や口腔ケアの必要性を、患者要求や症例に応じて積極的に発言した結果、改善がすすんでいます。

しっかり噛める治療を

 歯科治療で摂食改善につながった症例を紹介します。
 六〇代の男性。上下無歯顎。上顎義歯が不安定で外れやすく、咀嚼障害がありました。上顎歯肉部には、これまでの不適合義歯により「ビラビラした歯ぐき (繊維腫)(写真2)」ができていました。この浮動性の歯肉が、義歯の安定性と顎堤(がくてい)への吸着力を阻害した原因でした。NSTでそのことを報告 し、歯科受診をすすめました。
 歯科では、不適合義歯を調整し、繊維腫の摘出と歯肉の形態修正手術を行いました(写真3)。その後、新しい義歯を製作しました。その結果、食事介助も円 滑になり、摂取量も増えました。アルブミン値も二・六(〇五年五月)から三・二(〇六年五月)に改善傾向が見えます。
 このように歯科が加わることで、口腔の問題を解決し、栄養改善できた症例がしばしばあります。しかし、後期高齢者の多い施設では、すでに歯科治療が困難 な人も少なくありません。とりわけ義歯作製は、指示に従って口の開閉や噛みしめができないと困難です。高齢者でもADLが高い時に、しっかり噛める治療を する重要性を感じています。

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(民医連新聞 第1389号 2006年10月2日)

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