民医連新聞

2006年10月2日

「大学派遣引きあげ」「2次輪番の崩壊」 小児救急体制をどうする 小児医療研究発表会で緊急シンポ

 医師不足や不採算のため、小児科を閉じる病院が増え、一部の病院に患者が集中。小児科勤務医の疲弊が深刻になっています。こうした中、第一 〇回全日本民医連小児医療研究発表会(九月一七~一八日・埼玉)で、小児救急のあり方を問う緊急シンポジウムを行いました。(川村淳二記者)

シンポジスト
小堀 勝充(埼玉・埼玉協同病院)
武内 一 (大阪・耳原総合病院)
北條 徹 (福島・医療生協わたり病院)
佐々木 秀樹 (神奈川・川崎協同病院)
西原 信 (奈良・土庫こども診療所)
坂本 真保(東京・東葛病院)

 座長の大久保節士郎医師(東京・立川相互病院)が、民医連の四二事業所・四六小児科医から回答があった小児救急に関するアンケート結果を報告。医師六人のシンポジストが、各地の実情を報告しました。 
 厚労省は一九九九年「小児救急医療支援事業」を打ち出しました。開業医や自治体の休日夜間診療所、公立病院などで時間外の小児診療を当番制などで担当し (一次救急)、重傷者は小児病床のある病院へ搬送する(二次救急)など、地域連携で小児救急を担う体制整備です。この事業が最近行き詰まっています。

困難な小児救急体制

 川崎協同病院では、地域の小児救急の体制づくりに積極的に参加してきました。小児の時間外については、一次救急当番の公立病院を受診するよう誘導できるようになり、事態は改善の方向に。体制の整備は一定の役割を果たします。
 しかし、二〇〇四年の新医師臨床研修開始にともない、大学派遣医の引きあげで困難になっている地域が多くあります。
 大阪・堺市や埼玉・川口市では、二次救急の当番が担えなくなる病院が相次ぎました。地域の小児救急体制を見直さざるを得なくなっています。
 福島県の北部(人口五〇万人)では、たった三病院の常勤医六人で、二次救急を担当しているという報告もありました。
 また、地域の小児救急体制が未整備の千葉・流山市では、東葛病院に一次救急の四〇%、二次救急の五〇%が集中しています。

民医連の小児科体制

 アンケートでは、民医連の小児科は、常勤医一人以下が四二%、三人以下が七八%で、中小規模がほとんどです(図1)。その中でも、地域の小児救急体制に六八%が参加し(図2)、うち八八%が二次救急まで担当しています(図3)。
 一人常勤医体制で二次救急を担当している病院、二次救急を担った上で、自治体の休日夜間診療所に出向している病院もあります。
 これは、他科の当直医が小児も診療し、問題がある場合に小児科医をオンコールする体制でささえています(図4)。民医連の医師の多くが、小児診療を研修 し継続して携わってきたことで、一次救急に対応できることが背景にあります。
 しかし、小児科医の月当たりの休日出勤は一・五回以上が七〇%(図5)、当直は四回以上が五四%(図6)で、「五年先は現在の小児救急は続けられない」と二九%が回答しています。

 地域の小児救急体制がうまく機能している自治体が少ないことは明らかです。
 日本小児科学会は、それぞれの地域に時間外小児救急を専門に行うセンターを設置し、そこに小児科医を集約化することを提言しています。しかし、絶対的医 師不足の中で集約化することは、多くの問題をはらんでいます。
 全日本民医連では、今期、小児医療委員会を立ち上げ、集約化で生じる問題や、中小病院の小児科のあり方など、引き続き検討していく方針です。

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(民医連新聞 第1389号 2006年10月2日)

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