民医連新聞

2006年10月2日

相談室日誌 連載226 障害程度区分認定でキズついて 福田 寛

Aさん(四〇代・男性・生活保護受給中)はアパートで一人暮らし。週一回ヘルパーさんの生活支援を受け、当院の神経科外来とデイケア、糖尿病外来に通っ ていました。デイケアでは、寡黙ながら愛嬌もあり人気者なのですが、生活上のストレスに直面すると、診察やデイケアをすっぽかし雲隠れすることがたびた び。そうなると一週間は音信不通です。スタッフの電話や訪問で、ようやく気を取り直します。このままでは糖尿病が悪化するため、本人同意の上、グループ ホームに入居することになりました。
 ところが入居一カ月ほどして突然の失踪!止むを得ず警察署に捜索願を出しました。失踪理由をたずねられ、「Aさんは大の注射嫌いなので、最近始まったイ ンスリンの注射が原因では?」と伝えました。警察官は「私らは注射が好きな連中はよぉ捜しとりますけどなぁ」と。そんな一幕もありました。捜索願を出した 翌日、「薬も切れて頭がフラフラしてしんどい」と、Aさんがひょっこり外来に現れました。ここまではAさんには「よくある話」なのですが、失踪の理由を聞 いて愕然としました。
 失踪前日、福祉サービス利用のため障害程度区分の調査を二時間近く受けました。面接官の対応もさることながら、ひどいのは内容です。「叩いたり蹴ったり 器物を壊したり等の行為があるか」「暴言や暴力があるか」「他人に突然抱きついたり、断りもなく物を持っていくことがあるか」。福祉サービスを受けるた め、何で事情聴取みたいな対応を受けなくてはいけないのか。感情をめったに表さないAさんが憤慨して飛び出すのも当然です。
 今年四月から施行された自立支援法で、一〇月から始まる福祉サービスへの移行に伴う認定調査や調査項目、その判定結果にも問題が山積しています。今回の 事態を踏まえ、自立支援法の根本的改善を求め、運動を強める必要性をいっそう感じました。
 後日、Aさんといっしょに警察署に行くと、「また嫌なことがあったらいつでも来てや」と警察官が温かい声を掛けました。失踪中は公園や橋の下で野宿して いたようですが、警察署に行ってもらった方が安心です。Aさん、これからはそうして下さいね!

(民医連新聞 第1389号 2006年10月2日)

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