民医連新聞

2006年10月16日

分科会の演題報告から

山頂の老夫婦宅へ獣道を登山で訪問

 徳島の西部健生訪問看護ステーションからは、山頂に二人で住む老夫婦宅に行った訪問看護の経験が報告されました。
 患者である妻は、薬が効かないほどの関節痛に悩まされるようになりました。自宅から車道に出るまでの急傾斜の登り降りは農機具を使って危険な移動をして いました。月二回の受診や炊事さえ難しくなり、訪問看護を始めました。
 看護師は車道から獣道に入り、クマやマムシの出没を恐れつつ、急勾配を一五分かけて登り、患者のもとへ通いました(写真)。ストレッチなど必要なケアを 続けるなど、約四カ月の訪問看護でADLは回復。患者は食事の支度や、受診の帰りの買い物までできるようになりました。
 発表者の大島恵さんは、「自ら開墾し、農業や植林をおこなってきた愛着ある土地で住み続けたい、という人の願いをささえる役割が果たせたと思う」と語りました。

姿勢と動作に着目 摂食カンファレンス

 福岡・大手町病院の介護福祉士、島田竜二さんは、「摂食カンファレンス」の報告をしました。食事時の姿勢と動作に注目し、改善することで食事量をあげ、栄養摂取向上をねらっています。
 栄養面で患者をサポートするNSTに加えて、「摂食サポートチーム」を二〇〇四年に結成し、摂食カンファレンスを開いています。このとりくみを通じ、効果のあった事例が三例紹介されました。
 その中の一つ、重度の円背と腰痛のある患者さん。
 標準型の車イスに座るとかかとが床に着かず、不安定で、長時間の座位は困難でした。そこで、小さいサイズの車イスに座クッションをつけ、足台を使いました。
 まず座クッションを使って安定した座位を確保し、足台を使うことで下肢を安定させ、上肢をスムーズに動かせるようにしたのです。この改善で長時間の座位が可能になり、食事の摂取量も増えました。

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 摂食サポートチームに、リハビリスタッフの専門的な視点が加わることで、患者さんにあった的確な自助具の選択や、個別的なセッティングができるようになりました。食事摂取には、身体機能障害を正確に把握し、動作や姿勢、道具選びをすることが大事だとわかりました。
 「はじめたばかりの摂食カンファレンスには、スタッフの知識の向上や、福祉用具の充実、テーブルの種類の検討など、課題はある。患者さんの残存機能を活 かし、自立に向けたよりよいアプローチができるよう、他職種との連携を深めたい」と島田さんは語りました。

患者参加型の看護計画を導入して

 札幌病院からは、「患者参加型看護計画」の第一歩として、〇五年一〇月から看護計画を患者に開示しています。看 護師が看護計画を立案する前に、入院に対する患者の要望をきき、計画に反映。つくった計画を患者に説明し、同意や補足をもらいます。導入から半年間、看護 計画づくりに参加した患者(有効回答二七人)から感想をとり、評価と課題をまとめました。
*入院生活でどんな看護援助がされるか分かった…18人
*看護計画に患者の要望が尊重された…18人
*計画通り看護が提供…21人
*声には「耳が遠いので紙に書いたものが欲しいと思っていた」「自分にされる看護がわかって良かった」「看護師にいろいろききやすくなった」など。
 発表者は福島睦子さん。病状や認知症、パスを使用している、などで看護計画づくりに加われない入院患者もいますが、「患者参加型看護計画」の導入が、患 者の意思を尊重した看護提供とともに、患者自身が主体的に療養することにもつながる。看護師と患者の信頼関係の構築にも有効だった、と考察しています。

「生き生き働こう」 全員参加の会議運営

 埼玉・老人保健施設みぬまの認知病棟からは、職場会議を「決める」運営から「感じる・考える・納得できる」参加型に変えた経験が寄せられました。
 部門づくりを「職員ひとりひとりが認め合い、助け合いながら持っている力を最大限発揮できる職場環境」「利用者の人権を大切にできる職場風土」という視 点で検討。職員アンケートで「納得できる話しあい」が求められているとわかりました。
 同事業所では、院所目標・部門目標を決め、さらに全職員が個人目標を持っています。これを活かしつつ、月一度の部門会議を「納得できる」ものに変えました。
 実行したのは「会議目標を持つ」、「事前アンケート(業務改善や目標の提案など)」、「結果がぶれないよう、部門目標のメインテーマの協議を必ず行 う」、「会議後の振り返り」、「決定事項の実施の確認」など。机をとって半円に座り、ホワイトボードで全員が協議内容をその場で確認。話し合いの経過も模 造紙に書きながら進行することにしました。
 改善前は、討議不十分で決め、不満が出たり、決めても実践されないことがありました。改善後、職員は会議で意見を言い、部門をつくっていると実感するよ うになりました。また、会議が仕事に役立つ、成長できたとの声も。
 介護福祉士の佐藤史子さんは「一人ひとりが部門の中で役割や責任を理解し、自発的に行動し、会議に参加すると、職場が活性化し質が高まる。これは利用者に還元される」とまとめました。

(民医連新聞 第1390号 2006年10月16日)

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