民医連新聞

2006年11月6日

記者の駆け歩きレポート(7) 聴くことが支援になる 医療生協さいたま 傾聴ボランティアの苦労と喜び

 話を聴いてもらったら「心が軽くなった」経験、誰にでもありますね。相手の言葉に徹底して耳を傾けるという「傾聴ボランティア」。医療生協さいたまでは約一〇人が活動中。うらしんデイサービスで会いました。(小林裕子記者)

 利用者さんは二〇人、楽しそうにリハビリ体操しています。続いておやつ、歌…。朝から職員に混 じり、男女のボランティア数人が、マットを敷いたり、お茶を配ったり、忙しく動き回っています。その中に、静かに利用者さんに寄りそっている北村慧(さ と)子(こ)さんがいました。
 「本当は、デイサービスで傾聴するのは難しいのですが」という北村さん。何か訴えたい様子を見せた利用者さんに、さりげなく近づいて話を聴きます。約一〇分ずつ、利用者さん数人の相手をしました。

●寂しい高齢者の心を癒す

 デイの責任者・看護師の島田喜久子さんは、傾聴ボランティアを「医療では治せない部分にふれ、 心を癒す存在」と言います。ケアマネでもある島田さん。暗い部屋でテレビばかり見ていた高齢者、話す相手がない人、がん末期で落ち込んだ人がデイに来て、 生活の張りを取り戻す姿を見ながら、満足や回復を追求しています。その中で「傾聴」の効果も確認。険しい顔が穏やかになり、何種類もあった薬が減らせた人 もいます。傾聴活動には守秘義務があり、内容は口外しません。最近、落ちついて傾聴できるよう、傾聴室を設けました。

*    *

 傾聴ボランティアの養成には、診療所の近くにある民間の医療機関に講師をお願いしています。二 〇〇三年から組合員向けに講習会を開き、月一度フォローアップ研修も。卒業生が「ケア’03」というグループをつくっています。一期生で代表を務める北村 さんは、他に老人ホームでも傾聴活動をしています。大杉泰子さんは二期生で、老人ホームで月三回活動しています。

●厳しい中の喜び

 傾聴は、質問しない・自分の興味で聴かない・相手の思いをすべて受け止める、などが原則で、ひ たすら聴きます。拒否されたり、受け止めきれず、辛くなることもあります。そんなとき講師は「休みなさい。自分が健全でないと相手を癒せない」と。北村さ んは「勉強しながら…、だから続けてこれた」と厳しい表情も見せます。
 北村さんと大杉さんが傾聴ボランティアになった訳は? 「聴いてもらうことにより、気持ちが落ちつき、考えが整い、苦しみが和らぎます」という募集の言 葉に打たれて。二人とも、聴くことが生きる希望を湧かせ、援助になることを、初めて知りました。活動を始めて「高齢者は話を聴いてもらえないことに気づい た」と大杉さん。「みな自分が輝いていたときのことを話します。認知症の人もきちんと話せます。混乱はあるけれど」と優しい表情に。
 「聴いてもらって良かった」と涙で喜ばれることがあります。「やっていてよかった」と心から思うとき。その感触をささえに、みながんばっています。
 「傾聴」は、高齢者だけではなく子どもや青年にも、ホスピスなど様ざまな場で役立つ、専門性のある奧の深いものでした。

(民医連新聞 第1391号 2006年11月6日)

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