民医連新聞

2006年11月20日

すすむ高齢者医療・介護・生活実態調査 調査で知った高齢者の不安 「できることは何?」と考えた

 共同組織強化月間では、仲間増やしや「高齢者医療・介護・生活実態調査」訪問などがとりくまれています。相談活動や職員教育に結 びつけている法人・事業所も多く、「高齢者の実情を肌で感じた」「暮らしは不安がいっぱい。できることは何か考えた」など、各地から体験や感想が寄せられ ています。

貧しい暮らしに驚くが実態つかんで成長へ 
 ―北海道・黒松内診療所

 月間中は、仕事が終わってから一軒、二軒と訪ねて仲間増やしをしています。友の会員さん宅を訪 問し、家族の入会をお願いし、近所や知り合いを紹介してもらう中、出るのは「暮らしがたいへん」といった話ばかりです。黒松内には、年金暮らしの人が多 く、国保世帯八〇〇世帯のうち、半数ほどは生活保護基準以下の収入という貧しさ。それでも生活保護を受給しないのは、細ぼそながら畑仕事で自給し、周囲も みな同じような生活だからです。
 先日訪問した会員宅では、「近所の高齢夫婦の相談に乗ってやって」という話になりました。ボヤを起こしかけ、畑のニラを引きむしるなど、心配だというの です。診療所全体で関わることにし、まず看護師が訪問しました。
 札幌から異動してきた看護師は、初めはこうした暮らしに驚きますが、だんだん実態をつかみ、見違えるように成長します。毎年、月間の訪問は実体験の場になっています。(事務長・岩沢史朗)

一人暮らしの会員さん友の会は「心のささえ」 
 ―石川・輪島診療所

 高齢者訪問調査を機に、「友の会がどう受け止められているか」を検証することにしました。それは、〇四年に会費制を止め、「ニュースを読む人は誰でも会員」とし、困ったときの相談相手になる友の会をめざしてきたからです。気になる患者(会員)さんを訪問対象にしました。
 職員に提起する前に、友の会事務局三人と職員五人のチームをつくり三人を訪問しました。
 八〇代の女性は、月三万円の年金で生活していました。東京にいる息子さんから援助はあるものの、「近所や友人の葬式があるとたいへん。生活費は最低八万円はかかる」と。
 足に障害を持つ男性は、家事ができず、散らかった家に万年床でした。支援の手だてを考えながら、「将来がたいへんだね」と言うと、「何もたいへんじゃない。困ったら診療所や友の会に連絡するから」と話しました。
 八〇代の女性は、元気ですが足が悪く外出があまりできません。兄弟や親類から食べ物やお金の差し入れを受けて暮らしていました。家のあちこちに友の会の 事務局長の電話番号を書いた紙がはってあり、「困ったとき最初に連絡するところ」になっていました。訪問した坂下真紀さんは「友の会の存在が心のささえに なっている」と感じてきました。
 この予備調査をもとに、職員みんなで気になる患者さんを出し合い、訪問先や段取りを決め、本調査を開始しました。(事務長・濱茂夫)

制度教育に「調査」組み入れ自分たちの役割考える
 ―東京保健生協

 二年目以上の職員を対象にした制度教育に訪問を組み入れ、九月から実施しています。今年の研修 テーマは「地域から事業所から二五条を考える」。一回に二〇数人が参加し、講義を聴き、二~三人組で高齢者二人を訪問します。青年職員から「窓口や病室で は知ることができない生活者としての姿にふれた」「生協が人びとにささえられていることが分かった」など、新鮮な感想が出されています。
 一〇月、三回目の研修で、森川朝夫さん(介護士)は薬剤師、看護師といっしょに、伊藤タケさん(70)を訪問しました。
 伊藤さんは、年金月額が一二万と少し。老年者控除の廃止で今年から課税になり、介護保険料や国保料が一気に上がりました。「余裕はないです。旅行は行き たいけど…、あまり行かない。服はほとんど買わない。食費は切りつめています。不安といえば健康かしら…。病気になったときお金がなかったらどうしようっ て」。
 自由記載欄で、森川さんが「普段感じておられることは?」と質問したとたん、伊藤さんは堰を切ったように話し出しました。「なぜ低賃金、低年金の人から こんなに税金を取るのかしら? 政治が不安だらけ。消費税が一〇%になって、憲法九条を変えられて、戦争になるのが一番怖い。私たち高齢者はもう先がない からいい、という問題ではないですよね…」。
 森川さんは伊藤さんについて「暮らしは大変というけど、まだお元気なので安心した。生協活動をもり上げる役割を、これからも担ってほしいし、大事にしていきたい」と話しました。

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 訪問から帰り、グループで「職員として、生協活動の視点でどう考えるか」を討論。事前に受けた講義「東京保健生協の課題と中期計画」、「SWからの事例報告」を踏まえた意見交換です。
 SWの河西亜子さんが自院のケースとして提示した、生活保護を拒否された、国保料が払えない、介護の利用制限などの事例は深刻です。議論は「訪問で格差 社会を感じた」との意見から、「困難な人の存在を知らせて、ゆとりがある人には組合員活動に参加してもらおう」、「生きがいづくりが必要」など働きかけの 方向にも。ヘルスとヘルプを合わせた「2H運動」推進にも話が及びました。
 この研修はあと七~八回、約三〇〇人全員の修了をめざし続けられます。(小林裕子記者)

地域に足を運び、くらしと要求を聴く
 ―京都民医連第二中央病院

 一〇月二八日の統一行動には、院長を先頭に法人事務幹部・看護師長・病院事務幹部・技術系職員など二七人が参加し、五六人と対話しました。
 七〇代の男性は「妻を亡くし、一人暮らしの寂しさから酒を飲んでばかり。血圧計を買ったが使い方が分からない」と。測ってみると二〇〇もあり、受診をす すめました。入会もOK。また、入院されている患者さん宅へ行くと、家人が「病院にはお世話になっている」と、患者さんを含め三人が入会。
 ほかには、「リハビリ専門医に相談したい」「認知症の母に入浴できるデイサービスを探していた」などの相談を受けながら、加入につなげました。
 写真は、医療懇談会のあと、高齢者実態調査に協力してくれたMさん。「国保料、介護保険料を引き下げてほしい。医療費を軽減してほしい。少ない年金で生 活を切り詰めている。税金を軍事費に使わず、生活へまわすべきだ」と。近所の方やヘルパーの援助で生活しています。
 参加した職員からは「地道な活動が入会につながる」「病院への意見が具体的に聞ける」「手応えがあったので、再訪問した方がいい」などの感想が寄せられています。
(友の会事務局・那倉伸治)

(民医連新聞 第1392号 2006年11月20日)

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