医療・福祉関係者のみなさま

2009年12月21日

財務省発「診療報酬引き下げ」とんでもない!! 10%アップへ緊急行動を 藤末衛副会長に聞く

 医療崩壊を止めるには、二〇一〇年診療報酬改定での「大幅な引き上げ」が絶対必要です。ところが一一月一九日、財務省は「実質マイナス改定」とい う方針を提示。全日本民医連はこれに抗議し、あらためて総枠で一〇%の引き上げを求め、政府に緊急要望書を提出しました(二一日付け)。また、「診療報酬 の引き上げ」の緊急行動を提起しました。藤末衛副会長に聞きました。

Q 財務省の「医療予算」の問題点は?

shinbun_1466_01  「国民負担を軽減しながら医療崩壊を食い止める」という名目ですが、「薬価引き下げ」分を含めると総額でマイナス改定になってしまいます。さらに財務副大 臣が「医師の偏在や不足の問題には(報酬の)配分の見直しで対応する」とのべ、医療の報酬部分を引き下げる考えも出しています。「配分の見直し」では「高 収入の診療科の引き下げ」や「開業医と病院勤務医の格差を均(なら)す」などを挙げています。
 このままでは、「政権交代しても医療に光が当たらないのか」という決定的な失望を勤務医に与え、取り返しのつかない事態が予想されます。容認できる「医 療予算」ではありません。「勤務医と開業医」「病院と診療所」「異なる診療科」を対立させ、全体で報酬を引き下げるやり方には反対です。二〇〇二年から四 回連続マイナス改定で、その合計は▲七・五三%、〇二~〇九年の累計で医療費の削減額は一三兆円にのぼります(図1)。これが医療崩壊の主因であることは 明白です。まず診療報酬を引き上げるべきです。
 「国民負担の軽減」を言うなら、窓口負担を一~二割に引き下げ、その分国庫負担を増やすべきです。この間、患者の窓口負担は増え続け(図2)、いまや世 界ワースト一位です。「薬価」の問題では、新薬の不合理な高薬価を正すなど、国民の利益に立って行うべきで、漢方薬を保険給付から外すなどの手法は取って はなりません。しかし、財務省の考えにその視点は見られません。

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Q 厚生労働省も反発していますね?

 厚労省は従来と態度を変え、「わが国の医療費は、国際的に見ても低水準(対GDP比はOECD 三〇カ国中二一位)で医療現場の努力により効率的かつ質の高い医療を提供してきた」が、「医療現場は疲弊している」と言っています。さらに、「診療報酬= 医師の報酬」ではないこと、「配分の見直しで生み出される財源は大きくない」ので「医療再生には一段の検討や努力が必要」とも言っています(「平成二二年 度予算編成上の主な個別論点〈医療分野〉に対する見解について」)。
 三党連立政権合意(〇九年九月)は、「社会保障費二二〇〇億円抑制の方針(骨太方針)は廃止し、医療費の先進国並の確保をめざす」としています。医療関 係者などの粘り強い運動が反映したものであり、この公約を果たさせましょう。

Q 医療再生が経済を好転させる?

 「構造改革」が続き、日本経済はゆがんでいます。政府は賃金抑制、リストラ、社会保障改悪を推 進し、国民生活を痛めつける一方、自動車など輸出関連の大企業を支援してきました。労働コストや税・社会保障費負担を免れた大企業は、貯め込んだ資金を米 国の危険な投資につぎ込んで金融危機を招きました。
 経済を立て直すには、これまでの輸出大企業の応援一辺倒をやめ、個人消費を活性化させる方向に転換するしかありません。大企業の内部留保は二三〇兆円もあり、雇用を守る体力は十分あります。
 加えて、壊してきた社会保障を再建する方向に踏み出すべきです。その第一歩が、公費を投入して、診療報酬を大幅に引き上げることです。同時に医療費の窓口負担を引き下げることです。
 正当な賃金と雇用が保障され、社会保障への安心感が生まれれば、国民の購買力は向上し、内需が増え、経済は好循環します。社会保障分野の経済波及効果 は、全産業の平均を上回って高いことが知られています。医療保険の財政も、賃金・雇用が増加すれば好転します。
 社会保障の財源については、大企業に応分の負担を求めることが必要です。大企業の「法人税率+社会保障負担」を先進国並みに是正することで、多額の財源 が生まれます(図3)。また「所得に応じた負担」が原則です。消費税を充てることには絶対反対です。

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Q 緊急行動の柱は?

 (1)医療界あげての共同行動を起こす、(2)与党議員への働きかけを強める、(3)全県連・事業所から総理大臣宛てに緊急の要請ファックスを集中する、を提起しています。
 全日本民医連から三師会など医療・職能団体に働きかけます。各県連でも「医療シンポ」などのつながりを生かして、多くの団体・個人に働きかけてくださ い。怒りの「声」を書面にして、首相・財務大臣など関係職・国会議員に送りましょう。県連・事業所で大いにとりくみましょう。とくに与党議員には、「公約 を守れ」と要請しましょう。

肝炎基本法など成立、母子加算復活

 新しい政権の下での初めての国会で、民医連がとりくんできた暮らしと命を守る課題で、以下の成果がありました。ますます運動を広げていくことが大事です。

【成立した法律】
●肝炎対策基本法
●原爆症認定集団訴訟の原告を救済するための基金法

【採択された請願】
●地域医療の再生を求める大幅な医学部定員増、医学部の教育体制拡充
●地域医療の再生を求める
●細菌性骨髄炎ワクチンの公費による定期接種化の早期実現(同項目でほか一つ)

【予算復活】
●削減されていた生活保護母子加算が、厚生労働大臣告示で12月から復活

(民医連新聞 第1466号 2009年12月21日)

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