医療・福祉関係者のみなさま

2010年2月1日

「民医連の看護調査」生かし 働き続けられる環境づくりを インタビュー

 全日本民医連が実施した「民医連の看護調査」の結果がまとまりました。「看護師が働き続けるために何が必要か」について示唆に富む内容です。調査が示す事柄とその活用について窪倉みさ江副会長(看護師)に聞きました。

 調査の目的は、民医連で働く看護職員の「労働に対する意識・実態」を把握し、職場環境の改善に役立てることです。「日本の看護師はなぜ辞めるのか」を明らかにし「働き続けられるために必要なこと」を知ることにも通じます。
 看護分野では近年、安全性の追求やIT化、病棟機能の変更などで業務が過密・複雑化しています。看護師は、人手不足の中で患者のために日々奮闘してます が、やりがいの喪失や心身の不調から退職を余儀なくされる場合も多いのが実情です。「働き続けられる職場環境づくり」は看護改善大運動の重要な課題です。
 調査は国民医療研究所に委託し、二〇〇八年七月から始めました。加盟する一三八病院に勤務する常勤の看護職員一万一〇四二人から回答を得ました(看護部長・副部長・総師長・副総師長を除く)。

良好な人間関係と相談できる人の存在

 「ここ一年間、仕事を辞めたいと思うことが、どの程度あったか」という質問に、「いつもあった」「時どきあった」を足すと七七%でした。看護師の「離職意識」は高いといえます。
 また「一年以内に定年以外で辞める予定はあるか」に「ある」と回答した人は一四%いて、うち「辞めた後の勤務先を決めている」人は一六%でした。
 一方「辞めたいと思いながら辞めなかった理由」は、「家庭の事情」三七・八%をはじめ、「就職しようと思う病院が見つからない」が二四・八%、「職場・同僚のささえがあった」二二・三%と続きます(図1)。
 「辞めたい」と思ったとしても、辞めないで働き続けるには「良好な人間関係と相談できる人の存在」が重要といえます。
 半数以上が相談しており、その相手は家族(五三%)、職場の友人・同僚(四九%)が多く、上司は二〇%でした。

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「看護のやりがい」感じられる方策を

 調査では「職務満足度」に関する三八の質問項目から一二の因子を抽出しました。そのうち「離職意 識」「離職予定」と関係が深かった因子は「人間関係・連携」「看護のやりがい」「疲労度」でした。そして、辞める予定がある人は、予定のない人より満足度 が低いことがわかりました。
 ここから、離職の防止には、(1)良好な人間関係を築き、各部門との連携をよくすること、(2)看護のやりがいを感じ、自覚できる方策を実施する、(3)ストレスを軽減する対策をとること、の必要性がわかりました。

健康への配慮や研修の充実を

 そこで、「離職意識」に関する「ストレス」に着目して分析しました。
 その結果、(1)「健康状態が悪い」「疲れが回復しない」「ストレスが多い」という心身状況、(2)「医療の高度化について行けない」「患者のADL援 助ができていない」という不安、(3)「夜勤労働」の辛さ、が離職意識を高めていました。夜勤の辛さは回数とは関係がありませんでした。
 ここから「健康への配慮」や「研修の充実」が重要な課題になってきます。夜勤は単に回数を減らすのではなく、夜勤のあり方をどう感じているか、よく聞き取るなど細かい対応が必要といえます。

自病院の結果 しっかり分析を

 「やりがい」についても調査しました。すべての年齢で圧倒的多数が「看護の仕事一般」に高いやりがいを感じていることがわかりました(図2)。「キラリ看護」など民医連の医療理念と看護実践を結びつけた諸活動がうかがわれます。
 今後は、新人教育だけではなく、キャリア開発や生涯教育も充実させて、一人ひとりが目標をもって働き続けられるしくみをつくることが課題だと思います。
 ただし、「やりがい」も含めて「満足度」は各事業所によってバラツキがありました。調査結果を県連を通じて各事業所に送付しましたので、強み・弱みをしっかり分析し、改善策を立ててほしいと思います。
 上記は「離職」を中心に検討した内容ですが、調査はさまざまな角度から分析しています。膨大な報告なので概要を小冊子にまとめる予定です。ぜひ活用してください。

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(民医連新聞 第1469号 2010年2月1日)

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