医療・福祉関係者のみなさま

2010年2月1日

いますぐ やめて! 後期高齢者医療制度 その気になればすぐに廃止できる 吉田万三副会長に聞く

 政府は、「後期高齢者医療制度の廃止」を二〇一三年まで先送りし、「新たな制度の検討をすすめる」としています。一方で、保険料 が四月から全国平均で一三・八%上がるとの試算を発表。これに対し全日本民医連は、即時「廃止」して老人保健制度に戻し、第二段階として関連制度の改革を 行うよう求めています。これからの運動について、吉田万三副会長に聞きました。(小林裕子記者)

日々犠牲者を生む 「公約違反」の先送り

 日々、七五歳を迎える人はいるわけです。誕生日が来たとたん、いままで入っていた保険から強制的に移されて、収入がゼロでも保険料を払わされるのです。
 国民健康保険に加入している夫婦の場合、片方が七五歳になると保険が別になり、二人とも保険料が付加されます。子どもの保険の被扶養者になっている人も 同様です。負担が重くなる前に「廃止してほしい」と、多くの人が待ち望んでいます。
 鳩山政権は「国民生活第一を貫く」をスローガンにしましたが、「新自由主義・構造改革」ときっぱり決別したわけでありません。それが、「廃止の先送り」に現れました。
 そもそも後期高齢者医療制度は、「医療構造改革」を推進するために設計されました。「自己負担」「受益者負担」を原則にして、制度が続く限り犠牲者がひろがる仕組みです。

高齢者に冷たい 滞納者を「悪質」扱い

 なぜ、資格証明書(資格書)発行をきっぱり廃止しないのでしょうか? 厚労省は「資格書は原則として交付しないことを基本とし、交付された場合には、その事案の概要を公表するなど、厳格な運用を徹底する」というだけです。
 「特別の事情がなく保険料を一年以上滞納した場合」に制裁する規定は、滞納者を一方的に悪質扱いするものです。ところが実際には、愛媛や和歌山の事例に 見るように(「民医連新聞」、『いつでも元気』で既報)、滞納は「天引き」ができないほど年金が低い(貧困)、身体の具合が悪い、役所の通知が分かりにく い、などが理由です。高齢者の生活や身体に対する配慮をまったく欠いています。
 資格書では窓口で医療費を全額支払わなくてはならず、受診を妨げます。すでに多くの自治体で資格書の前段階である「短期保険証」が発行されています。保 険料の減免制度も不十分で、ほとんど使えない状態ですから、なおさら問題です。

保険料の値上げは制度ある限りつづく

 後期高齢者医療制度の根拠法は、「高齢者の医療の確保に関する法律(高確法)」です。その最大の問題は、目的が「医療費抑制」にあること。そこから、高齢者を年齢で差別する、世界に類のない制度ができました。
 「後期高齢者にも応分の負担を求める」として受診を抑制するしくみも最悪です。医療費が増えると保険料に跳ね返る、つまり医療給付費と負担を連動させて いるため、多くの広域連合が、保険料を値上げする事態になっているのです。
 診療報酬は別立てになり、医療の内容も「差別」されています。「終末期医療の制限」「高齢者担当医制」「早期退院のための退院調整加算」などをみて、 「高齢者の特性を尊重する診療」だと考える人はいません。「高齢者は無用の存在」という冷たい姿勢に、高齢者は怒っているのです。
 保険者が「広域連合」になっているため、住民の声が届かないことがはっきりしました。国と自治体の「公的責任」が見えにくくなったのです。将来、広域連 合が特例診療報酬を設けたりすれば、住所によって医療行為が変わるという、差別と荒廃が生じます。

第1段階…「老人保健法」の諸制度に単純に立ち戻る

 二〇〇八年六月の参議院本会議で可決された「廃止法案」にあるように、一刻も早く廃止し、「老 健法」に戻すことが必要です。難しいことではありません。七五歳以上の高齢者は、もとの社会保険・国民健康保険等に再加入すればよいのです。七五歳以上の 人が国保に再加入する際、国保財政が困難にならないよう支援が必要です。「老健法」にも問題点はありますが、高確法とは根本的に違います。少なくとも、目 的が「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図る」「国民保健の向上及び老人福祉の増進を図る」ことに戻ります(第一条)。その財源は、前の ように公費(五〇%)と全国の社保・国保の保険者(五〇%)が出し合い、政府の責任で確保すべきです。
 政府は「問題の解消」と言うなら「医療構造改革」と縁を切り、高齢者の健康や生活を優先する立場に立ってすぐに廃止すべきです。

第2段階…「老人保健制度」改革 政府の責任で財政措置を

 私たちがめざすのは、憲法二五条や老人福祉法の「基本的理念」と「国と地方自治体の責務」の精神にそって「老健法」を改革することです。
 具体的には、「老健法」の対象者(七五歳以上の高齢者と六五歳以上の障害者)の窓口負担を無料にします。七〇~七四歳の医療費は一割負担に戻します。 「現役並み所得者」の公費負担除外もやめ、次に、対象年齢を六五歳以上に拡大します。
 これらを実施するために、政府が責任をもって財政措置をとるよう求めます。同時に、国保財政への国庫負担も増額すべきです。

即時「廃止」に向け運動を「署名」や患者訪問を提起

 総会方針〈案〉では「権利としての社会保障」を高く掲げ、運動を強めようと提起しています。経 済が落ち込んでいるいま、思い切って財源を確保して、高齢期の安心を確保することは、経済を活性化させるのに役立ちます。北欧などに比べると、日本人は 「老後」が心配で、使うべきお金が使えない状態です。これが経済を萎縮させる一因です。
 財源は消費税に求めるのではなく、大企業や高額所得者への適正課税、軍事費や米軍関係費の削減で確保すべきです。一月一八日から通常国会が幕を開け、新 しい署名も始まりました。三月から、中断や気になる患者、中でも高齢者の中断患者の訪問活動を提起しました。生活実態を明らかにし、世論にも訴え、「廃 止」をめざし運動を強めましょう。

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(民医連新聞 第1469号 2010年2月1日)

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